天上天下唯我独尊

夢に生き、夢のように生きる人の世を
憐れと思へば、罪幸もなし・・・

四行詩集 ~無花果の実り~

2008-01-23 00:07:21 | 「無花果の実り」

          「幸いなことよ

       悪者のはかりごとに乗らず

         罪人の道を行かず

    嘲る者の座に着かなかった、その人。 



   まことに、その人は主の訓えを喜びとし

      昼も夜もその諭しを口ずさむ。


    その人は泉の傍に植わった木のよう

        時が来ると実が成り

         その葉は枯れない。

       その人は何をしても栄える。



        悪者は、それとは違い

        風に吹き飛ばされる籾殻のよう

  それゆえ、彼らは審きの中に立ちおおせず

              正しき者の集いに入れない。


 まことに、主は正しい者の歩みを知っておられる。

      しかし、主に背く道の者は滅び尽くされる」




1.酸を失い易い葡萄の汁も、
     醗酵させて瓶詰めすれば何十年も保存できる。

  時機を逸し易い政道の知恵も
     比喩にして書物にすれば何千年も保たれる。

  葡萄酒は適度に飲めば歯茎を引き締め
     血の巡りを良くし、顔と目を輝かせる。

  優れた政術書は参議を引き締め
     民を交流を促進し、君主と大臣を輝かせる。


2.本当に葡萄酒を愛する者は古いものを探すが
     庶民は軽い新酒ばかり持て囃す。

  本当に知恵を愛する者は故事や古人を探すが
     つまらん連中は皆新しいことばかり言いたがる。

  新しくても美味しく飲めるような葡萄酒は、安物に決っている。

  高等な知恵は数百年経ってはじめてその正しさを証明する。

「凡そ人を論ずるに、古に遠ざかる者には高士無し。既に古を知らずして、而も其の功を侮る者には智士無し(管子/第16章法法)」


3.葡萄が成熟する前に収穫して醗酵すると
     えらく酸っぱい葡萄酒になる。

  議論が成熟する前に採決して発効すると
     歯の浮くような法律になる。

  誰でも、熟成した葡萄酒を飲んでから
     新しい葡萄酒を飲もうとはしない。

  誰でも、古い政術をちゃんと学べば
     新しい政治理論を作るなんて馬鹿らしくなる。

「太后、群臣に謂ひて曰く、凡そ事を議するには、まさに古典に拠りて整言すべじ。あに唯故事に遵ふのみなるを得んや、と(資治通鑑/134巻)」


4.葡萄酒は外気に晒して置くと、酸化して駄目になってしまう。

  戦略でも政略でも、それが世間に漏れると
     通用しなくなるばかりか、逆効果を生む。

  酒を造ったならば、速やかに栓をして
     冷たく暗い場所に安置するのではないか。

  どれだけ策を練り上げても
     世間に公表してしまうなら、一つも役に立たない。

「鄭人、刑書を鋳る。叔向、子産に書を送らしめて曰く、昔、先王、事を議して以て制し、刑辟を作らざりき。民、刑辟有るを知らば、すなわち上を忌まず。並びに争心興りて、之を為し、治むべからず。乱獄益々多く、賄賂並び行はれん。吾之を聞く、国のまさに滅びんとするや、必ず制多し、と。其れ之を云うか、と(春秋左氏伝/昭公6年)」


5.葡萄酒を愛する者は
     赤だけではなく、白だけでもなく、両方とも飲む。

  政術を学ぶ者は
     儒教だけではなく、法家だけでもなく、両方とも読む。

  熟成が進むと、赤は色が薄くなり、
     白は色が濃くなって、最後はどちらも黄金色になる。

  儒教も法家も、その思想を丁寧に発展させれば
     どちらも同じ結論に至る。


6.悪い木は良い実を結ぶことができない。

  良い木は悪い実を結ぶことができない。

  謬論ばかり放つ劣悪な言語では
     一つもまともに考えることができない。

  正論を連ねる優れた言語は
     謬論が花咲くようになると、言葉を枯らす。

  実を結ばない木は、みな切り倒されて、火に投げ込まれる。

「神がどのように譬えを用いられたのか気づかないのか。良い言葉は良い木のように、その根は堅く、その枝は天にも届く。それは、主のお許しにより、一年中、実を実らせている。神はみなに反省させようとして、いろいろな譬えを用い給う。また、悪い言葉を譬えれば、悪い木のように、根元から切り倒されて、安定することがない(コーラン14:24)」

7.葡萄酒をガブ飲みしてはならない
     酔っ払うと味が分からなくなる。

  思想書を鵜呑みにしてはならない
     信奉すると是非が分別できなくなる。

  葡萄酒を選定する者は、決して飲み込まず
     舌で舐っただけで吐き出す。

  書物を丸呑みにして
            頬を真っ赤にした者の言うことなどは、全く聞くに値しない。

「彼らもまた
 葡萄酒を飲んでよろめき
 濃い酒の故に迷う。
 祭司も預言者も濃い酒を飲んでよろめき
 葡萄酒に飲まれてしまう。

  濃い酒の故に迷い
 幻を見るとき、よろめき
 裁きを下すとき、躓く。

  どの食卓にも吐いた物が溢れ
 到る所に汚物がある(イザヤ書28:7)」


8.どれだけ不味い異物でも
            噛まずに飲み込んでしまうのが子供だ。

  理屈の通らない話でも
     そのまま信じ込んでしまうのが民衆だ。

  子供には分別ができないから
     親が見守っていてやる必要があるのだ。

  国民にはまともな良識があるというなら
     どうして政治や法律が必要なのか。


9.酒の中には良い物もあるからといって
     全てを許すと悪い物も出回ることになる。

  酒の中には悪い物もあるからといって
     全てを禁じると皆の楽しみを奪うことになる。

  面倒でも、売人や密造者が抗議しても
     飲食物は全て検査しなければなるまい。

  国民や言論家が何と騒いでも
     言論物・表現物は全て検閲されねばならない。

「小人の弁なるもの有り、士君子の弁なるもの有り、聖人の弁なるもの有り。先慮せず、早謀せず、之を発して当り、文を成して類し、居錯遷徒し、変に応じて窮まらざるは、是れ聖人の弁なるもの也。之を先慮し、之を早謀し、斯須の言にして聴くに足り、文にして而も実を収め、博にして而も正しきに親しむは、是れ士君子の弁なるもの也。其の言を聴けば則ち辞弁にして統なく、其の身を用ふれば則ち多詐にして功無く、上は以て明王に順ふに足らず、下は以て百姓を和斉するに足らず、然り而して口舌は之れ、唯に於いて則ち節有り、以て奇偉の族を成すに足る、夫れ是を之れ姦人の雄と云い、聖王起こらば先ず誅する所也。然る後盗賊之れに次ぐ。盗賊は変ずること得るも、之姦人は変ずること得ざれば也(荀子/第5章)」


10.汚物が撒き散らされているような所は
     とても人間の住む街とは言えない。

  醜聞が散布されているような国は
     とても文明を知る国とは言えない。

  人でも国でも、生きている限り、日々汚れを排出する。

  蝿が飛び回るのを煩く思うなら、汚物を適切に処理せよ。

「蝮の末たち。お前たち悪い者に、どうして良いことが言えよう。心に満ちていることを口が話すのです。良い人は、良い蔵から良い者を取り出し、悪い人は、悪い蔵から悪い物を取り出すものです。私は、あなたがたにこう言おう。人は、其の口にするあらゆる無駄な言葉について、裁きの日には言い開きをしなければなりません。あなたが正しいとされるのは、あなたの言葉によるのであり、罪に定められるのも、あなたの言葉によるのです(マタイ伝12:36)」    


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