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文学新人賞の今年の風潮

2007年06月16日 | 小説レビュー
今年の、文藝賞受賞作「公園」に続き、文学界新人賞受賞「オブザベースボール」もすごく斬新だった。

「オブザベースボール」は、一部評論家から「この手の作品は三崎亜紀だけで充分だ」と否定されてたけど、

今年の「小説宝石新人賞」受賞作品 「草葉の陰で見つけたもの」大田十折(20)※今月号の小説宝石に掲載。

も、設定が斬新だった。

読んでみたんだけど、まず主人公は冒頭で「織田信長らしきおっさん」に首を切られる。そして、「晒し首」として生き続ける。主人公は晒し首なのだ。晒し首だけど、なぜか生きていて、目だけは動かせる。晒し首目線で終始主人公が語る小説なのだ。

しかもそれだけじゃない。

主人公の晒し首の前に毎晩やってきて喋りかけてくれる少女がいる。何をやっているかというと、「接客の練習」らしい。

「晒し首」という1アイデアと「晒し首の前で接客の練習」という2アイデアの組み合わせは、やはり新しいと思った。

「オブザベースボール」も聞いたとき、「空から人がふってくる」という1アイデアだけなら、いつか誰かが思いついてたと思うけど、「それを助けるためのベースボールチームがいる」という2アイデア目が斬新だった。まさかそこに野球という発想はない。

しかも、「草葉の陰~」は、
審査員の角田さんや奥田さんも言ったけど、地の文が終始主人公の語り口で描かれ、それがまるで落語を聞いているような感覚なので、すぐに入り込めて、すぐに読みきったという。言われるとおり、僕もすぐに読めた。

作風としても個性的で、正直、一般小説なのか純文なのか、区別するのは難しい。

裏を読み取れるふかさもあるし、そのまま読んでも面白い。


「小説宝石」に掲載された三崎亜紀の「鼓笛隊」も異質だった。

ハリケーンや突風、地震、台風といった天災があるように「鼓笛隊」という天災がある世界のお話で、一度「鼓笛隊」に巻き込まれれば・・・というファンタジックなんだけど現実的な話。


今年、賞を取ってる感じをみると、プロットだけで魅力を感じる、アイデアが優れてるというか、変に一般と純文を区別していないような、そのラインが曖昧になってきてる気がする。

角田さん曰く、
「草葉の陰は、まずタイトルがよくないし、ものすごく乱暴で無茶苦茶な話であると思います。小説として優れてるかといったら全くそんなこともないと思います。でもこれが一番魅力的でした」

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