今年のひとり芦川いづみ祭りは早くも第7弾。今回ご紹介するのは、1957年に公開された日活映画、『お転婆三人姉妹 踊る太陽』という作品だ。ミュージカル作品ということで、芦川いづみ出演全作品の中でもかなりの異色作だと言える。ミュージカル仕立てになっているのは、この作品と、引退前に参加した『君は恋人』くらいだと思うので、結構珍しい。
しかし、1957年当時は、この手の華やかな作品が結構ウケていたようで、こちらも日活が人気スターを総動員して、鳴り物入りで制作した作品であったことは想像に難くない。
正直最初はこの作品にあまり期待はしていなかったので、とりあえず芦川いづみが満喫出来ればという軽い気持ちで見始めたが、見終わった感想として、意外にも想像していたよりも収穫は多かった。
まずは主役と言える三姉妹を演じるのが、長女/ペギー葉山、次女/芦川いづみ、三女/浅丘ルリ子という豪華な女優陣の顔ぶれ。また3人の恋人役にはフランキー堺、岡田真澄、そして石原裕次郎と、これまで男優陣も豪華で、まさにお祭り的な映画であった。映画は79分で、意外と短めなので見やすい。構成として最初の1時間くらいで三姉妹の物語が展開され、最後の30分程度はミュージカル舞台が披露される。
三姉妹の物語は結構ベタだ。郊外の住宅地にあるこじんまりとした綺麗な家に住む仲良し三姉妹。姉の春子(ペギー葉山)は大学三年生でバンド歌手。しかも公の恋人(フランキー堺)がいる。次女の夏子(芦川いづみ)は日本一の美女を目指して美容体操に汗だくの毎日、そして三女の秋子(浅丘ルリ子)はガッチリ屋で貯金が趣味。そんな三姉妹は夫を亡くし苦労して自分たちを育ててきた母親を楽にするため、母の再婚相手を捜し始める・・・という展開。
物語自体は大して面白くないものの、三姉妹のやりとりなどは結構面白く、また芦川いづみの魅力としては、歌ういづみ(実際の歌は吹き替えらしいが)、踊るいづみ、変顔するいづみ、パジャマ姿のいづみ、そしてなんとタバコをふかすちょっとワルないづみ(笑)など、結構レアな映像が楽しめるのは芦川いづみのコアファンとしてはかなり嬉しい。前年の1956年に、石原裕次郎と初共演した『乳母車』が公開されたが、この頃はまさに少しずつ芦川いづみの人気が出始めた頃。とても初々しい彼女の魅力が堪能できる。浅丘ルリ子もまだブレイク前なのでかなり若い。裕次郎も岡田真澄もかなり若い。
ミュージカルへの流れは、長女がバンド歌手を務める関係で、ミュージカルの舞台に立つことになり、次女、三女も出演することになる。そしてみんな勢ぞろいでの一大ミュージカルが展開されていく。日活ダンシングチーム/月丘夢路、北原三枝、南田洋子、新珠三千代など、錚々たる女優陣が特別出演しているので、その意味でも後半のミュージカル部分は日活ファンとしては一見の価値あり。
今回初めて『お転婆三姉妹 踊る太陽』をDVDで鑑賞したが、想像していたよりも楽しめた作品であったし、芦川いづみの魅力という意味では、新たな魅力を確認することが出来たので貴重な体験となった。やっぱり芦川いづみ作品の追求は奥深い(笑)。