僕の大好きな芦川いづみの出演映画は、かなりの数をDVDや神保町シアター等で観てきた。DVD化されているにも関わらず、まだ観れていない作品もまだ幾つかあるのでこれから順次チェックしていくが、もう一つ、芦川いづみファンとしては外せない作品がある。それは、映画ではなく、芦川いづみが主演したテレビドラマ、『志都という女』という作品だ。
『志都という女』は、1967年11月13日から12月29日にかけてTBS系で放送された、日活とTBSが共同制作した名作メロドラマドラマ。月曜日から金曜日まで週5回、毎日30分という枠で放送された。ただひたすらに愛し、人の倖せにのみ生き、何ひとつ報いられることのなかった女・志都の物語。一人の若者が純愛に生きた志都という女性に出会い、彼女が死ぬまでの清く儚い愛の歴史を、高橋玄洋の原作を日活が映像化した。主演は芦川いづみ、川地民夫、織賀邦江、小松方正、深江章喜など。
長らく幻のドラマとなっていたが、50年以上の時を経て、2020年にHDリマスターで初のDVDセット化(全35話、ディスク5枚)されたのだ。芦川いづみファンとしてはこのDVDをぜひゲットしたいとかなり前から思っていたが、定価は22,000円もしてしまうし、中古でもネットで出回っている価格は18,000-20,000円くらいするので、なかなか手が出せずにいた。しかし、今回ついに半額くらいで入手することに成功し、ようやく念願の芦川いづみテレビドラマを手に入れることが出来て感無量である。
DVDは小さなブックレットも付いており、解説や、登場人物の紹介、各話のダイジェスト説明などもあって、芦川いづみグッズという意味でもかなり貴重だ。
1967年と言えばまだ僕も生まれる前で、しかも芦川いづみが引退してしまう1968年の1年前に主演したドラマだが、当時は高度成長期の真っただ中。そんな時代背景に、お茶の間の専業主婦にはメロドラマが大変好評で多くのメロドラマが制作されたが、この作品も例に漏れず、王道のメロドラマとして制作された。
ドラマの内容だが、大学受験に失敗した浪人生・中河勉(川地民夫)は5年前に五歳上の太田志都(芦川いづみ)という女性を知り、やがて勉は翳のある志都に思い憧れ、ひそかに結婚の約束まで交わすこととなるが・・・というもの。モノクロのメロドラマでもあり、タイトルからしてかなり地味な幸薄ドラマであることは容易に想像がついてしまう。
芦川いづみのキャリア晩年となる1965-68年頃の日活映画は、徐々に浅丘ルリ子、吉永小百合、和泉雅子などが主役として定着していった時代であり、芦川いづみも主演やヒロインから、やや2番手、3番手の役柄を演じるようになっていた。その意味では華やかな芦川いづみの絶頂・黄金時代(1957-1962年頃)から比べると、“幸薄系”としての需要が増したと思われる。晩年は大人の女性としての魅力や、顔立ちの美しさにも磨きがかかったことで更に拍車がかかったのだろう。その意味では、この『志都という女』はまさにハマり役であったと思う。
DVDは全35話(第19話は原版消失のため欠番)が5枚のディスクに収められており、全話を観るには17時間以上かかってしまう為、実はDVDを購入してからまだ観れていないのだが、これから少し時間をかけてじっくりと鑑賞していきたいと思う。メロドラマだけに、純愛、すれ違いなどかなり辛いシーンが多いことも予想されるし、涙を流す芦川いづみはいつも果てしなく美しいのだが、やっぱり観ていて辛いのも事実。しかし、彼女が主演しているドラマで、DVD化されているものは殆どない上、逆にこんなに“長時間”芦川いづみを観ていられるというのは最高に幸せな時間でもあり、“歴史的芦川いづみ遺産”として、当時の芦川いづみの美しさをぜひ堪能したいと思う。また観終わった際に感想をブログでご紹介したい。