先日、新宿のミニシアター、シネマカリテで上映されている、ドキュメンタリー映画『ヒッチコック/トリュフォー』を観賞した。これは僕の大好きな映画監督、アルフレッド・ヒッチコックのドキュメンタリー映画。
1962年にヒッチコックは、フランスの映画監督、評論家で、Nouvelle Vagueの旗手であったフランソワ・トリュフォーから50時間にも及ぶインタビューを受けるが、これが4年後の1966年に『ヒッチコック/トリュフォー』と言う一冊の本として出版される。ヒッチコックトリュフォーは大のヒッチコックファンで、このインタビューを企画したわけだが、このインタビューをきっかけに、世代も違う、映画のスタイルやジャンルも異なる二人の間に奇妙な友情と交流が生まれた。この『ヒッチコック/トリュフォー』と言う本は、その後映画ファンの間では有名な定本となり、ヒッチコックファンの間ではバイブルとなった。
映画では、この本に焦点を当て、インタビューで録音された音声などもふんだんに使っている。また、マーティン・スコセッシやデビッド・フィンチャーなど、ヒッチコックの映画に色濃く影響を受けた人気映画監督らのインタビュー映像や、ヒッチコック作品からの映像も上手く混ぜながら、ヒッチコック映画の秘密に迫る内容のドキュメンタリーになっている。なかなか良く出来た内容だ。
僕は元々この『ヒッチコック/トリュフォー』と言う本を日本語版、英語版の両方を持っており、大学時代にヒッチコックを卒論のテーマで取り上げた時もかなり読み直したが、ヒッチコックを語る上では外せない貴重な文献だ。ヒッチコックは、ハリウッドでも『サスペンスの神様』として早くから有名で、1940年代にはイングリッド・バーグマンを、そして1950年代にはあの(僕も大好きな!)グレース・ケリーを輩出し、『サイコ』や『鳥』では、サスペンスホラーやパニック映画の原点とも言える傑作映画を世に送り出すハリウッドきっての大監督になっていた。しかし、それはあくまでもエンターテイメントとして高く評価されていたに過ぎず、アカデミー賞との縁は薄かったのだ。しかし、このトリュフォーとのインタビュー本がアメリカ、フランスで出版されると、ヒッチコック映画の"件p性"が再評価される結果となった。多くの有名画家や有名音楽家が、死後にその価値が再評価されるようなケースが多いが、ヒッチコックの場合は、何とか(晩年ではあったが)生前に再評価されたのはとても幸せなことであった。
映画の中では、ヒッチコック作品の映像も数多くフィーチャーされており、特に『めまい』と『サイコ』には時間を割いている。どちらも大好きな作品だが、『サイコ』はそれまでの常識を覆す衝撃的な作品であったし、『めまい』は理想の女性を追い求める男の話で、ヒッチコックの私的な欲求が色濃く反映された映画。後にリバイバル上映された際に再評価が高まった作品である。
久しぶりにまたヒッチコック映画をじっくりと観てみたくなった。
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