この映画は1/3くらいの撮影を済ませていたものの、赤木圭一郎の死でお蔵入りになっていた。しかしファンの強い要望に応えるべく、6年後の1967年に未完成フィルムと関係者のインタビューなどを編集し、『赤木圭一郎は生きている 激流に生きる男』として、ついに公開されたという作品なのだ。主演者が亡くなった後に映画を完成されたという例では、ブルース・リーの『死亡遊戯』が有名だが、『激流に生きる男』ではダブルなどを使わず、ドキュメンタリー風に残された撮影済みシーンやインタビューを交えて赤木圭一郎を振り返るような構成になっている。
全体として46分と短く、インタビューでは芦川いづみなどの出演者が、残されたフィルムを観賞した後に赤木圭一郎を振り返っているが、これは恐らく1967年の公開前に撮影されたものだと思われる。
そして未完成のシーンだが、着物姿の美しい芦川いづみが堪能出来るのが何とも嬉しい。撮影時である1961年の芦川いづみと言えば、裕次郎との共演で大ヒットした『あいつと私』も公開された年で、まさに彼女の美しさもピークであった頃だ。
この映画のストーリーはこうだ。
ブラジル丸に乗船する為、一人横浜に来た槙竜太郎(赤木圭一郎)は、乗船までの10日間、泊るあてがなく、偶然知り合ったさかえ(芦川いづみ)は、南米にいる姉夫婦の留守を守ってナイトクラブ、サファイアのマダムを務めていた。竜太郎はサファイアが乗っ取り専門の暴力団・黒岩興業に追われていることを知り、住み込みでバーテンとして使ってくれと申し出る。それを聞いたマネージャーの佐野は渋々承知するが・・・・。
横浜を舞台にしており、山下公園にタクシーが乗り込んだり(当時は山下公園内に車が入っても良かったのだろうか?)、まだ何も無い素朴な丘だった港の見える丘公園などを確認することが出来るが、60年近く前の横浜を見ることが出来るのもかなり面白い。
僕は裕次郎派なので、日本人離れしたバタ臭いルックスの赤木圭一郎は正直あまり好きでは無かったのだが、この映画の赤木圭一郎は確かにかなりカッコいい。トランペットを吹く姿もかなり印象的である。また、芦川いづみが演じるさかえに惚れているものの、最後は黙って船に乗って去ってしまうラストも男前である。きっと完成していたら、赤木圭一郎、そして芦川いづみ作品としても、『霧笛が俺を呼んでいる』と並んで、二人の代表作になったことだろう。とても惜しまれる。
未完とは言え、このような形で映画化されたというのは日本映画界でも珍しく、貴重な映像資産となった。
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