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手塚治虫を解説した素晴らしい洋書、『The Art of Osamu Tezuka』

最近また手塚治虫研究にハマっており、久々に巨大な手塚治虫マイブームを迎えているが、そんな中、手塚治虫を取り上げている洋書に出会った。タイトルは『The Art of Osamu Tezuka』という本で、かなりサイズも大きく、全272ページ、総カラーで、ビニールカバー付きのハードカバー仕様といった豪華本。副題には『The God of Manga(漫画の神様)』とある。今までこの本の存在を知らなかったのだが、2009年に米国で発売されたものらしい。



この本の著者は、ヘレン・マッカーシーという女性。この方も知らなかったのだが、調べてみると実は日本の漫画をManga、日本のアニメをAnimeとして海外に紹介した先駆者的な功績のある方で、手塚治虫の展示会を海外で主催したり、宮崎駿に関する本を執筆している有名な方らしいのだ。まさに日本の大事なカルチャーを独学で理解し、世界に広めたという意味ではかなりマニアックな方である。




巻頭には、Akiraの作者としても有名な大友克洋がコメントを寄せているが、“手塚治虫が日本漫画の元祖では無い。それ以前にも、同時期にもたくさんの漫画家がいた。しかし手塚作品は漫画表現を映画的にする事によってストーリーの娯楽化、多様性を確立し、ある時代の日本漫画の基礎を作ったと言える”と定義している。また、“世界のコミックを見ても、これだけ短期間に、これだけのジャンルとして成長した例を他に見ない。それは手塚治虫の絵によるところが大きい”とも記されている。手塚治虫の作品を読んでいて、僕もまさにこの言葉を実感してしまう。



この豪華本は、オールカラーであるばかりでなく、写真や図版も高いクオリティーで豊富に掲載されており、表紙や中のレイアウトやデザインの構成もかなり秀逸。眺めているだけでワクワクしてしまう美しさだ。手塚治虫が漫画家として描いてきた膨大な作品群をかなり細かく取り上げており、これをその時代を体感している筈も無い外国人であるヘレン・マッカーシーが巧みに解説しているところが何とも凄い。日本で纏められた分析本よりも、よっぽど詳細に紹介されているのだ。





本書は手塚治虫の生い立ちを年代で追う構成となっていてとてもわかりやすく、9つの章で構成されている。第一章: 若き日の手塚治虫、第二章: キャラクター紹介/スターシステム、第三章: ロケットマン(初期作品紹介)、第四章: 少年少女の為の冒険ファンタジー、第五章: 素晴らしい新世界-1960年代、第六章: 苦悩のとき-1970年代、第七章: 晩年の活躍-1980年代、第八章: 失くしたもの-未完の作品、第九章: 手塚治虫という遺産、となっている。



網羅性もありながら、それぞれの作品に関しても愛のある詳しい解説がされており、改めてヘレンさんの見事な監修力には驚かされる。




本にはドキュメンタリーDVDも付属されており、本のハードカバーに埋め込まれていながら、裏表紙から見えるようになっているデザインもかなり素晴らしい。



それにしても、かなり圧唐ウれる濃厚な内容の手塚治虫本だが、このような素晴らしい作品を外国人が手鰍ッたこと自体が大きな驚きであり、また日本の漫画やアニメへのリスペクトをもって、主に欧米人に対して解説してくれている本を日本人として手にすることが出来たというのもまた感慨深い。まさに手塚治虫本の決定版に巡り合った思いである。どうやら日本語に訳したものも『手塚治虫の件p』というタイトルで出版されているようだが、やはりこのオリジナルの洋書版を英語で見るのが味わい深い。
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