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映画「象の背中」の感動

今週、出張で初のインド出張に出かけているが、インド行きの機内で「象の背中」という映画を見た。これは秋元康の原作を映画化したものだが、可愛い象のアニメで昨年高い人気を誇った同名のアニメも同じ原作である。今回見た映画版は、役所公司が主人公の会社員(部長)である藤山役に、そして妻役を映画主演20年ぶりとなる今井美樹が演じているが、その他主人公を取り巻く人物なども井川遥、高橋克実、増岡徹、岸辺一徳、手塚里美、伊武雅刀などの演技派俳優で固められており、映画に深みを出している。

ストーリーは、突然末期ガンで余命半年を宣告された48歳の会社員が、延命治療をせずに、残された時間でこれまでに出会った人々に再会しようとし、また死を受け止め、その最後を家族とどう向き合っていくかに焦点を当てた作品。病気で余命半年という設定は様々な映画や小説でこれまでにもあったと思うが、この作品は病気と闘う姿をドキュメンタリー的に描くというよりも、その残された時間をどう使っていくかに着目した観点で描かれており、死に対する向き合い方、それと家族に対する接し方などという点で色々と考えさせられる作品である。また、どことなく他人事では無い、いつか自分もそのような局面を迎えた時、自分ならどうするだろうか?などと考えさせられてしまう作品でもあった。恐らく、余命半年と宣告された場合、治療して少しでも長く生きたいと思う人もいるかも知れない。またあまりにも衝撃的な事実に、気が狂ってしまう人、或いはやけになって残り半年で遣り残したことをやり尽くそうとする勢いでめちゃめちゃな過ごし方をしてしまう人、落ち込んで生きる望みすら失ってしまう人など色々とあるだろう。人間はやはり弱いもので、実際にこのような状況に直面した時、何が正しい判断なのか、限りある時間をどう生きることが良いのか、なかなか難しい問題である。

この「象の背中」は余命半年をどう過ごすかに焦点が当たっているからでもあるが、病気との闘いの残酷な実情や、死に近くなった際の苦しさなどリアルな部分にはあまりフォーカスが当たっていない点で、全体的にかなり「キレイ」に描かれており、「実際にはこんなキレイなもんじゃないよ!」という多くの批判を浴びたと聞いたし、また主人公の藤山には井川遥演じる愛人の存在もあり、家族と向き合うこと以外に、愛人との最後をどう考えるかという点が「男の身勝手な解釈で、全く共感出来ない」というような批判も多く受けていたことも知った。恐らく多くの中年男性には大きな共感を呼んだ半面、特に女性からはこの愛人の要素が反感を招いたことは想像するに難しくない。この辺りの物語設定は秋元康らしいという気もしてしまう。
愛人の部分は別として、妻や子供たちと余命をどう過ごすか、家族に何を残していくかに関しては純粋に感動したし、自分にも照らし合わせてみて色々と考えさせられてしまった。また、当たり前ながら人生とは人によって時間の差こそあれ、無限の時間が与えられているわけでは無く、その限られた時間の中で出会える人、出来ることなどは限られており、また最後いつかは死んでいくわけで、その意味で常日頃からどのように人生を過ごしていくべきか、また人生における様々な人々との出会いなどの大切さなどを改めて考えさせられた。

ちなみに「象の背中」のアニメ版も可愛くてなかなか素晴らしい。映画と同じく秋元康の原作のエッセンスから作られた作品だが、こちらは感動的な歌詞の歌に乗って暖かいタッチで描かれた象の家族キャラクターが織り成す短い作品で、実にシンプルながらも深い感動が得られる作品である。ぜひYou Tubeなどで視聴してほしい。
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