まずは、カニエ・ウェストのサードアルバム「Graduation」だ。クマをモチーフにした大学3部作(「College Dropout」、「Late Registration」、「Graduation」)はこれで完結。「Graduation」でまず驚いたのがその斬新なジャケットデザイン。日本の有名な現代美術家/アーティストである村上隆が手鰍ッたものである。村上隆と言えば、2003年の春・夏のルイヴィトンモノグラムマルチカラーコレクションとのコラボが有名だが、今回は村上氏が描くクマのイラストが彼独特の色使いとなっていて面白い。

このサードアルバムのシングルで、結構カッコいい曲に仕上がっている「Stronger」のPVでは日本ロケを敢行しており、村上氏の起用といい、かなり「クールジャパン」を意識しているように思われる。結論としてアルバム全体としてはアメリカだけで300万枚以上を売上げ、グラミー賞の「Best Rap Album」を受賞し、大ヒットシングル「Gold Digger」を含んだ前作アルバムの「Late Registration」ほどのインパクトと完成度は無いかもしれないが、幾つかの秀作がある。上述のシングル「Stronger」はサビの部分が一瞬Bon Joviの「Living on a Prayer」の「ウワウワ、ウウウー」にも似た低音でのディストーションサウンドが実に面白い。2曲目の「Champion」は明るい曲調でなかなかの出来だ。思わずにんまりしてしまったのは、(ちょっとわかりにくいが)5曲目の「Good Life」という曲にマイケル・ジャクソンの最高傑作「スリラー」に収録された「PYT (Pretty Young Thing)」のサンプリングが埋め込まれている点だ。そして日本版のアルバムにはボーナストラックとして入っている「Bittersweet Poetry」は、ジョン・メイヤーもフィーチャーされ、メロディアスな曲調はバラードの傑作と言える。この曲は前作の「Late Registration」の頃に完成していたが、アルバムには収録されなかったので、今回日本版に収録されているのは実に嬉しい。カニエはR&Bというよりも基本的に思いっきりラッパーなのだが、そのRapの中にもメロディアスでャbプ性が高い曲が多い点でとても聴きやすく、幅広い人気を誇っている要因だろう。
そして、もう1枚楽しみにしていたアルバムが以前のブログでも紹介したBlack Eyed Peas(BEP)の中心人物で現在は売れっ子プロデューサーでもあるウィル・アイ・アムの満を持したソロアルバム「songs about girls」である。バンドの紅一点であったファーギーのソロアルバムをプロデュースや、ジャスティン・ティンバーレイク、Pussy Cat Dollsなどのプロデュースで有名だが、ついに私的なソロアルバムの登場である。このアルバムは1曲1曲の完成度が実に高いと言った印象を受ける。スウィング調が心地良いオープニング曲の「Over」、ノリノリの先行シングルでBEPの「My Hump」にも通じるような「I got it from my mama」はかなりの出来栄え。「One more chance」、Snoop Dogをフィーチャーした「The Donque Song」、ウィルらしからぬ(?)爽やかなリズム感が印象的な「impatient」、まさにタイトル通りにかなりファンキーな仕上がりになっている「make it funky」、ややレゲエ調な「Fly Girl」、ロック調な「Spending Money」など、バラエティーに富んでいて、どれも傑作揃いで楽しめる構成となっている。今度、マイケル・ジャクソンの新作をプロデュースすると言われているウィルだが、これは実に楽しみである。思えばマイケルは常にその時代を代表する大物プロデューサーを起用してきたし(クインシー・ジョーンズ、テディー・ライリー、ジャム&ルイス、ダラス・オースティン等)、今最も旬なプロデューサーと言う意味では、やはりウィルかティンバランドだろうから、こちらも期待したい。
