先日神保町の古本屋でたまたま気になる洋書のアートブックを見つけて、表紙を眺めていたら、どこかで以前見たことのあるようなイラストが。1970年代の南カリフォルニアでトレンドとなっていた、ハイソサエティー界隈によるパーティーライフ系のイラストが描かれており、どこか懐かしい、何ともオシャレトロな感覚がたまらないアート作品集だ。これまでCMやポスターアートでも見たような気もする。
気になってその場で検索してみたのだが、なんとSHAG(シャグ)の愛称で知られている、Josh Agleというアーティスト・イラストレーターで、やぱり南カリフォルニア出身。SHAGというのは、名前のJosh Agleからshとagを取って組み合わせた遊び心のあるアーティスト名だが、スラングとしてSHAGは”セックス”という意味もあり、特に70年代のサイケでヒッピーな時代に良く登場するトレンドワードだ(映画『オースティン・パワーズ』にも頻繁に登場)なので、これまた何とも面白いネーミングである。
このオシャレトロなイラスト集に思わず惹かれてしまい、この洋書を衝動買いしてしまったが、2005年に出版されたもので、今ではなかなか手に入りにくいものらしい。全148ページで、ソフトカバーだが、2005年出版の割にはとても新品のようでキレイな状態だ。本のタイトルは、『SHAG, LTD. Fine Art Limited Editions』というもので、これもなかなかセンスがいい。SHAGのシリアルグラフのプリント作品を多く収録した内容になっており、なかなか刺激的で見応えのある作品集だ。
カリフォルニアスタイルの部屋(主に広いリビングルーム)や、高台に建つ高級住宅街のプールサイドなどでホームパーティを繰り広げる男女が描かれているものが多く、また裸のセクシーな女性も多く登場。しかし、そのタッチが洗練されたデフォルメになっているせいか、変なやらしさはなく、とことんオシャレトロなテイストで、デザインや構図的にはとても参考になる。特に僕はプールサイドが描かれている作品が気に入ってしまった。家の設計や、部屋の中に描かれているインテリアも、70年代に流行ったレトロなテイストでとてもオシャレ。
また僕が昔好きだったモンキーのイラストで有名なアーティスト/ブランド、Paul Frankとコラボした作品や、マイルス・デイヴィスの『Kind of Blue』をテーマにした作品もあり、これもクールなトーンでなかなかオシャレ。
ディズニーをテーマにしたプロジェクトも多く手掛けており、その作品には古き良き70年代のディズニーランドを垣間見ているような楽しさがある。
また、お酒ブランドのプロモーションに起用された作品も多く、レトロなイラストタッチとの相性も抜群だ。
これまで日本を含め、世界中で展示会などを実施しているようで、アメリカのパーム・スプリングスには”SHAG STORE”というショップもあるらしく、そこでもシリアルグラフのプリント作品を販売しているようだ。
“SHAG”は今まで知らなかったイラストレーターだが、その作品は色々なところで見たことがあるものだったことで、どこか懐かしさを覚えた。しかしそれと同時に、そのレトロ感が今の時代には逆に新鮮でオシャレな感覚もあり、久々に刺激的なイラスト集を手に入れることが出来た。こういう新たな出会いがあるのも、神保町の面白いところである。