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藤子不二雄Ⓐの『まんが道』を読み直し!

僕は手塚治虫の大ファンであることは何度もブログで触れてきたが、手塚治虫に魅せられたのはやはり『鉄腕アトム』の漫画やアニメを観だしてからである。しかし、その後手塚治虫の初期作品に夢中になったのは、実は藤子不二雄の『まんが道』という漫画を読んでからだった。




藤子不二雄は、藤本弘と安孫子素雄による漫画家コンビのペンネームであったことは有名な話だが、晩年にコンビを発展的解消として、藤本弘は藤子F不二雄、安孫子素雄は、藤子不二雄Ⓐとしてそれぞれ名乗ることとなった。長年共に連れ添った夫婦のような関係の二人であったが、次第に絵のタッチや、描きたい漫画のジャンルがお互いに変わってきたこともあり、そろそろ違う道をそれぞれ目指そうという発展的な解消になったのであった。

藤本弘はご存知『ドラえもん』、『パーマン』、『おばけのQ太郎』などの大ヒット作品の原作者であり、主に子供向けで夢のある作品を描き続けることに生涯拘った。その結果、ドラえもんで途轍もない成功を収めることが出来たのだ。




一方、安孫子素雄が描いた作品の中で代表作は『忍者ハットリくん』、『笑うセールスマン』、『怪物くん』、『プロゴルファー猿』など。どれも大ヒットしているが、藤本弘とは少し趣向が異なる、若干ダークな作品なども描くようになっていった。




そんな藤子不二雄は、学生時代手塚治虫の初期名作『新宝島』を読んで衝撃を受け、漫画家を目指す大きな動機となって行く。そして当時は、藤子不二雄、赤塚不二夫、石ノ森正太郎など今では有名な漫画家の巨匠たちも含め、誰もが手塚治虫に憧れ、みんな必死でその背中を追い鰍ッた時代だった。そんな象徴が、池袋近くの椎名町にあった漫画界の聖地、“トキワ荘”であった。





先日『出没!アド街ック天国 椎名町』でも取り上げられていて嬉しくなったが、残念ながら取り壊されてしまったトキワ荘が、新たにミュージアムとして椎名町に再建されたのだ。あの歴史的価値のあったトキワ荘は何とかオリジナルを保存するべきであったが、せめてミュージアムとして忠実に再現されたのは感無量である。ちなみに、このミュージアムは今年春にオープンする予定であったが、コロナの影響で延期となっている。コロナが終息したら一番に訪れたい場所だ。



さて、そんな藤子不二雄の生い立ち・歴史、どのようにして大ヒットを生み出す漫画家になっていったのかをとても詳細に描いた自伝漫画が『まんが道』という作品だ。安孫子素雄が描いているので、自分を投影したキャラクターの目を通して、相棒の藤本弘との漫画人生をかなりリアルに再現している。当時、僕は初めて『まんが道』を読んだのは小学5年生くらいだったと思うが、手塚治虫と横山光輝の作品に魅了され、自分も漫画家を目指したいと真剣に考えるようになっていた頃で、そんな絶妙なタイミングでこの『まんが道』に出会って読み始め、どっぷりとハマってしまったのだ。



手塚治虫に憧れ、漫画家を目指す藤子不二雄の物語に、自分の姿も完全に投影してしまい、物凄く共感してしまったのだと思う。その証拠に、藤子不二雄が当時手塚治虫に何度もファンレターを送っているのだが、読んで貰いやすいように自分の漫画なども同封していたというエピソードも漫画の中に登場する。僕も真似をして、手塚先生への思いをたくさん手紙に盛り込み、自分の漫画を同封した。そしてなんとファンレターへの返事をサイン入りハガキで当時貰って大興奮したのを今でも鮮明に覚えている。この手塚治虫からの直筆サイン入りハガキは今でも僕の家宝として大切に保管している。




『まんが道』の単行本は幾つもの種類は存在するが、僕が当時に読んでいたのは少年画報社ヒットコミックの全19巻。それをまた今40年ぶりに読み返している。今まだ全19巻のうちの2巻目を読み終わったくらいのところなので先はまだ長い。




小学館からも、GAMANGA BOOKSシリーズが全10巻でも発売されているが、こちらの方も新たに5巻までを入手し、今読み比べているところだ。少年画報版には収録されていない“あすなろ編”という、二人の高岡での高校時代を描いたエピソードがGAMANGA BOOKS版の1巻に収録されているので、とても新鮮に読むことが出来た。



手塚治虫の『新宝島』や『ロストワールド』、『来るべき世界』などを初めて読んだ時の衝撃、手塚先生を初めて訪ねて上京した時のエピソード、当時の漫画雑誌に漫画を応募して当選したり、落選したりしながら漫画家になるべく上京し、トキワ荘に住むようになるなど、藤子不二雄の漫画にかける情熱、手塚治虫への憧れ、様々な試練などが実に豊な描写で活き活きと描かれており、今読み返しても決して色褪せていなかった(単行本自体は相当色褪せていたが(笑))。そして、これは漫画家を目指す誰もにとって、何か大切なことを教えてくれた作品でもあった。40年ぶりに『まんが道』を読んで、漫画家になりたいと思っていた当時の自分が懐かしく思い出されたのと同時に、久しぶりに自分の“創作活動“に大きな刺激となった。



ところで、藤子不二雄が制作した手塚治虫の傑作『来るべき世界』へのオマージュで、1953年に出版された『ユートピア最後の世界大戦』という幻の作品がある。これは今ではほぼ入手困難で、300万円くらい値が付く作品!あの漫画家松本零士がオリジナルを所持しているというのも有名な話だ。そんな幻の名作が2011年に小学館クリエイティブシリーズから復刻版として出版された。この復刻版を持っているのだが、この作品の完成秘話も『まんが道』の中で語られており、今改めて『まんが道』読んだ後に読み直すと、また味わい深いものがあって実に面白い。

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