このシリーズは早くも第11弾まで来てしまったが、今年も随分とたくさんの芦川いづみ作品を観賞することが出来たものだ。
今回観賞したのは、1960年に公開された日活カラー映画、『やくざの詩』。主演は小林旭。当時石原裕次郎に次いで小林旭の人気もかなり高く、マイトガイの愛称でファンに親しまれた。監督は舛田利雄。前回紹介した『男と男の生きる街』も舛田監督作品であったが、拳銃アクションを撮らせたら当時右に出るものはいないいくらいの人気監督であった(後年、あの『宇宙戦艦ヤマト』の監督としても有名)。
小林旭と芦川いづみの共演作は、『美しい庵主さん』、『完全な遊戯』(共に1958年)、『東京の孤独』(1959年)、『不敵なあいつ』(1966年)の4作品があるが、その中の貴重な1本。彼が得意としたやくざ・ギャングもので、当時は“ムードアクション”と呼ばれていたジャンル。拳銃を片手に哀愁漂う過去を持つ主人公が奮闘するパターンの作品だ。そして1960年は小林旭、芦川いづみ共に人気が絶頂期にあった頃の作品としても注目に値する。
物語は、亡き恋人の復讐を誓って、義手の拳銃鬼を追い求める青年医師の数奇な運命を描く、拳銃と哀愁の異色アクション作品。芦川いづみが小林旭の相手役として準主役的な位置付けで共演した作品だが、前回紹介した『男と男の生きる街』同様、南田洋子も出演し、また『青い街の狼』でも共演した二谷英明の2人もかなりいい味を出している。
物語自体はまずまずと言ったところだが、この映画の魅力は横浜を舞台にしていること。『青い街の狼』でも横浜を舞台にしていたので、当時から横浜で撮影することが多かったようだが、港街としての設定がムードアクション映画にはとても適していたのだろう。『やくざの詩』では、60年以上も前の1960年当時の山下公園なども確認することが出来るのもかなり貴重だ。実はこの映画では山下公園の氷川丸が確認出来ないが、調べたところ、この映画が公開された翌年である1961年から山下公園に係留されているらしく、その意味でも貴重な映像だ(当然ながら、ランドマークタワーや観覧車などもまだ存在しない(笑))。
芦川いづみに関しては、まずまず出演シーンも多く、ショートヘアでボーイッシュな髪型が眩しい。先程の山下公園でのシーンや終盤の手術シーンで助手を務めたり、また手術後のラストシーンも希望に満ちた形で小林旭、芦川いづみの2ショットで映画は終わる為、印象深い登場の仕方で起用されているのは実に嬉しい。しかし、やっぱり芦川いづみ主演作トップ10に喰い込むほどの作品と言うには少し難しいかもしれない。でも芦川いづみファンとしては、彼女が少しでも出ているところが確認出来るだけでも嬉しいものである。