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芦川いづみ祭り2024!第11弾『散弾銃(ショットガン)の男』

今年の芦川いづみ祭りを締めくくるのは、1961年に公開された日活映画、『散弾銃(ショットガン)の男』である。この作品はずっと気になっていたが、DVD化されていなかったのでこれまで観れずにいた。しかし、なんとも嬉しいことに今年の12月4日に待望の初DVD化が実現したのである。本作を監督した鈴木清順監督作品が幾つか日活からDVD化され、そのシリーズの1本としてリリースされたのである。

発売前からDVDを予約して購入していたのだが、今月はなかなか忙しくて観賞出来ずにいた。しかし、ついに今週末に時間が出来たので、じっくりと観賞することが出来た。1961年と言えば、まさに芦川いづみがその美しさのピークを迎えていた頃であり、この作品でも最高に美しい芦川いづみを楽しむことが出来る作品だ。

映画のあらすじだが、日本のとある山、鷲霊山は、土地の者は誰も登ろうとしない魔の山であった。ある日、一人の男・渡良次(二谷英明)が、散弾銃を肩に鷲霊山に登って行く。彼はいいなづけを殺され、その犯人を探してここまでやって来たのだった。突然、数人の男たちが良次を襲うが、彼はひとりで撃退してしまう。

森の中の西岡製材所の社長・西岡は、良次を見込んで用心棒に採用する。その夜、良次は町に出て、西岡の情婦・春江(南田洋子)がマダムをしているバーに入る。そこで良次は、バーの用心棒・ジープの政(小高雄二)が持っている真珠のネックレスを見て驚く。それは彼の許婚者の持物だった。良次と政は喧嘩になるが、町の私設保安官・奥村が止めに入る。奥村は愛妻を二ヵ月前に何者かに殺され、犯人捜査のため保安官になったのだった。良次と奥村は、互いの境遇を共感しあう。

ある日、奥村が暴漢に襲われて負傷し、彼は良次も一味だと誤解するが、奥村の妹・節子(芦川いづみ)だけは良次を信じていた。奥村の後任保安官に良次が選任されるが、西岡は、邪魔になった良次を追い出すため、政と対決させる。決闘場の山かげの盆地には、西岡が秘密に栽培しているケシ畠があった。西岡一味は生阿片を密売していたのだ。良次と政の銃が火を噴く寸前、西岡の子分たちが襲いかかり、秘密を知った彼らを皆殺しにしようとする。だが、良次の早撃ちは、子分どもを撃退した。窮地を逃れた良次は、西岡に監禁されていた節子を救い出す。そこにかけつけた警官隊の中に政がいた。政は麻薬取締官だったのだ。こうして山に平穏が訪れ、去って行く良次のあとを、節子が全力疾走で追いかけるのだった。

この映画はなかなか“変”な映画だ。山の中の製材所で巻き起こる物語だが、他の日活映画とは違い、実在する街中で展開される物語というよりも、どこか架空の山で展開されるような話で、しかもちょっと西部劇アクションのようでもあり、無国籍な雰囲気も漂う妙な感覚の映画となっている。初めて観た感想としては、正直あまり感情移入出来ず、芦川いづみ出演作品の中でもストーリーとしてお世辞にもあまり面白い映画とは言えないが、公開された当時は結構斬新な作品であったことは容易に想像できる。主演の二谷英明を売り出す映画としてかなり気合が入っていたのだろう。

物語の舞台となる山の中にはバーもあって、このバーで派手な喧嘩が繰り広げられたり、ダンスや歌が展開され、いかにも西部劇的だ。ロケは岐阜や丹沢などの山中で撮影されたようだが、森林の中に滝があったりと、自然豊かな場所でも物語が展開される。そしてクライマックスの決闘は海のシーンが出てきたりするが、実際の場所はどこなのかと思ってしまうほど展開が謎である。

ちょっと変てこな設定はさておき、主演は二谷英明はなかなか二枚目でカッコいい。そして二番手には芦川いづみと小高雄二。二谷英明と小高雄二は日活作品の常連であったし、芦川いづみとの共演作も多い。二谷英明は石原裕次郎、小林旭、赤木圭一郎などに続き、日活の“ダイヤモンドライン“の一角を形成し、“ダンプガイ”の愛称で当時人気を博したが、妻も女優の白川由美(2016年死去)、そして娘の二谷友里恵は、郷ひろみと結婚したことでも有名だった。1971年に日活を退社し、その後は『特捜最前線』などの刑事ドラマなどで脇を固める渋い俳優として人気を博したが、2003年に脳梗塞で倒れ、その後2012年に81歳で惜しくも亡くなってしまった。またこの映画には長門裕之と結婚した南田洋子もバーのマダムとして登場し、なかなかセクシーな役どころを演じている。

芦川いづみはこの作品で準主役だけあって、冒頭からラストシーンまで映画全体を通して比較的長く出演しており、様々な表情を見せてくれるのが嬉しい。しかもこの映画はカラー作品なので、カラーで美しい芦川いづみをたっぷり堪能出来る作品となっているが、彼女の存在感がしっかりとスクリーンに焼き付かれた作品だ。

『散弾銃の男』を観た感想を総括すると、映画としてはさほど面白くないし、今見ると結構ヘンテコで陳腐なB級西部劇のような映画ではあるが、当時の映画にかけるエネルギーと、絶頂期の美しい芦川いづみをフルカラーで楽しめるという意味では貴重な映画遺産である。また少し時間をおいてからDVDをじっくり観賞したい。

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