テレ東の新春ドラマスペシャル時代劇として、先日『ホリデイ~江戸の休日~』を放送していたが、これがなかなか面白いドラマであった。コンセプトとしては、“江戸版”の『ローマの休日』という触れ込みで、それだけでちょっと興味を持ってしまったが、豪華な主演陣と、テレ東の制作する時代劇はいつも期待に応えてくれるという安心感もあって、その意味でも期待大であった。
ドラマの舞台は、家康に変わって秀忠が将軍となっていた徳川時代の物語で、若かりし日の三代将軍、家光がローマの休日ならぬ、“江戸の休日”として、江戸の町に出かけるという物語だ。『自分は世間を知らぬ池の中の鯉のようだ。将軍の器ではない』と悩み、このまま敷かれたレールに乗って将軍となってしまって良いのだろうかと、その胸の内を側近の大久保彦左衛門に話し、10日間だけ身分を伏せたまま、町の魚屋で修業をするという展開となる。そして、町娘のお仙と恋仲になるというラブストーリーだ。その意味では『ローマの休日』とは逆で、男性が町に出て恋をする形だ。
身分を伏せて活躍するというのは、まさに水戸黄門を始め、遠山の金さん、大岡越前など多くの日本の時代劇ではお約束の定番プロットだ。しかし、“江戸版ローマの休日”というだけで、何だかラブストーリーとしての期待にワクワクしてしまうから不思議なものである。
徳川家光を演じるのは望月歩。今人気急上昇中の若手俳優だ。そして相手役の町娘、お仙には朝ドラにも主演した葵わかな。この若手実力派の2人を固める脇役陣が何とも豪華で、時代劇には欠かせない大御所が揃いも揃った。まずは大久保彦左衛門役には里見浩太朗。徳川家康役には高橋英樹。更には魚屋の太助役に高嶋政伸、妻には戸田菜穂、柳生十兵衛役に上川隆也、春日局役に名取裕子、お江役に財前直見、他にも小林稔侍、中村梅雀、内藤剛志など実に豪華。特に、高橋英樹と里見浩太朗の2ショットシーンもあり、時代劇ファンとしては感慨深い。
実は、僕は何気に戸田菜穂のファンで、彼女が出ているドラマは結構見ているが、今回もかなり彼女を満喫出来た(笑)。
設定として現代に生きるごく普通の会社員の若者が、実家から“徳川家光が描いた絵”が出てきたという幼馴染の女子大生の付き添いで、『開運!なんでも鑑定団』に出演することになり、収録の当日、突然現れた鑑定人風の謎の老人から、『これは真筆』だと控室で声をかけられるところから物語が始まる。そして、その絵にまつわる恋の逸話を老人が語りだす。テレ東の人気番組も折り込み、またこの謎の老人役を里見浩太朗が演じることで、ちょっとしたファンタジー感も持たせている点で結構工夫した面白い設定である。
町に出た家光は、その間にも将軍の座を巡る覇権争いや町で暗躍する組織の存在など、多くの課題に直面しながら成長していく。そして、最後は将軍として自分が成すべきことを見つけ、その後の三代将軍家光として立派に役目を果たしていくという、何とも気持ちの良い余韻が残る、爽やかな物語だ。
今年はNHK大河ドラマが『どうする家康』ということもあり、特に徳川家康、そして徳川時代が注目される年になりそうだが、この『ホリデイ~江戸の休日~』も家光をテーマにした異色の徳川ドラマであった。時代劇としての面白さと、純粋なラブストーリーエンターテインメントという意味でも、かなり面白いドラマであったと思う。