先日、公開されたばかりの『トップガン マーヴェリック』を鑑賞してきた。言わずと知れたあの1986年の名作、『トップガン』の続編である。36年ぶりの続編に、世界中が注目している待望の作品だ。
正直、どこまでオリジナルの『トップガン』に迫ることが出来るのか心配ではあったが、観賞してみてその疑問は一瞬で吹き飛んだ。むしろ、今回の続編の方がより深い胸熱な青春ドラマになっていたし、当然ながら戦闘機のドッグファイトもあり得ないリアリティーで描かれており、全ての面でオリジナルを完全に凌駕していたと感じた。続編はなかなかオリジナルを超えることが難しいケースが多いが、今回はまさに例外に当たるだろう。
トムも現在59歳。還暦を目前にしているとは思えないカッコ良さ。そしてトム以外で今回オリジナルのキャストで再登場になったのはヴァル・キルマー。オリジナルではトムと真っ向からぶつかるライバル、“アイスマン“役として登場し、最後はお互いを認め合い友情が芽生えたが、その後アイスマンは海軍の中でかなり偉い地位まで登り詰めており、今回はトップガンの教官に再びトムをアイスマン自らが呼び戻すという設定で描かれるので、その後も二人が固い絆で結ばれていたことが確認出来たのは良かった。
映画の中でアイスマンは声が出なくなっている設定で、パソコン上でメッセージをやり取りしているが、アイスマンの家で再会した際に少しだけ小声で会話をする。しかし、僕は今回の続編公開まで知らなかったのだが、ヴァル・キルマーは実際に喉頭がんを患って、手術をした結果本当に声が出なくなってしまったらしい。その意味では、ヴァルを続編に引き戻す為には必要不可欠な設定と言えるだろう。36年を経た、実際のエピソードにも思わず感動してしまった。
ヒロインはオリジナルのケリー・マクギリスやメグ・ライアンに変わって、今回ジェニファー・コネリーが登場。ジェニファーも1980年代のアメリカ青春映画で活躍した人気女優で、2001年には『ビューティフルマインド』でアカデミー助演女優賞を受賞している。今年52歳なので、僕と同年代。映画ではトムの相手役として、とても魅力的な大人の女性を演じているのが印象的であった。僕も昔からジェニファー・コネリーは好きな女優だったので、今回の起用には感激である。
今回、トムは若手を教える教官として登場するが、海軍の中で出世する道を選ばず、ある意味その後も色々あって、結果的に一匹狼の凄腕パイロットとしてこれまで生きてきた姿にサラリーマンの悲哀を感じたが、自らその天才的な才能を若手に痛いほど見せ付け、そして統率していく姿にはシニアビジネスマンとしての一つのありあり姿を見た気がして、個人的にとても心を動かされた。
『トップガン マーヴェリック』は、オリジナルを上回る素晴らしい感動作であった。純粋にスケールの大きなハイスピードアクション映画として全ての年代が最高に楽しめるが、この裏の設定におじさんたちはみんなきっと胸が熱くなるに違いない。久々にトムの“本気”、そして”ハリウッドの本気”を見ることが出来た思いである。