横山光輝が1960年に描いた短編読み切り漫画に『未来をのぞいた男』という作品がある。わずか16ページという短編なのだが、この作品は、小学館クリエイティブの『宇宙警備隊 限定版BOX』の中に収録されているので読んだことはあったのだが、今回1960年の『少年サンデー』に読み切りとして掲載されたオリジナルを切り抜きで入手することが出来た。とてもマイナーな横山光輝作品なので、結構レアで貴重でもある。
この『未来をのぞいた男』は、まずは表紙の美しいカラーイラストが秀逸で、横山光輝作品としてのワクワク感を見事に表現している。タイトルなどのレターリングも横山光輝らしいが、昔僕もかなり影響を受けたものだ。
ストーリーは、銀行ギャングの村雨竜作は、警官に追われ、とある家に飛び込む。そこにはメフィスト博士と名乗る科学者がいた。なぜか村雨のことを良く知る博士は、村雨が1週間後に死ぬことを予言する。それは博士がタイムマシーンを発明し、未来を見たからだという。半信半疑の村雨に、博士は、村雨が丸月刑事に射殺される姿を見せた。村雨は自分の未来を変えるため、先に丸月刑事を殺そうと企むが、果たして村雨の運命は・・・、というSF作品だ。
横山光輝作品の中では特に有名ではなく、かなり小粒な作品だが、だからこそかなりレアで貴重だと言える。横山光輝作品ではお馴染みのキャラクターである村雨が登場し、メフィスト博士もこれまで良く横山作品に登場するような博士だ。タイムマシーンをテーマにしているという意味では1959年-1962年に連載漫画としてファンには人気の『五郎の冒険』と同時期に描かれている作品なので、番外編的な面白さもある。16ページと短い作品の中にもしっかりと横山光輝らしいストーリーテリングの上手さが凝縮されているのはさすがである。
復刻版などで横山光輝の短編・読み切り作品などはかなり読んでいるが、こういう形でオリジナルの雑誌掲載版を入手するのも面白いし、何よりも当時掲載された時の息吹みたいなものを感じられるのが嬉しい。