今年の僕の芦川いづみ祭りは、新たにDVD化された『気まぐれ渡世』、『成熟する季節』、『知と愛の出発』と鑑賞してきて、更には神保町シアターで開催されていた『恋する女優 芦川いづみ映画祭』で、『東京の人』、『白い夏』を鑑賞してきたが、今回第6弾として『学生野郎と娘たち』のDVDを購入し、鑑賞した。
この映画はかなり前からDVD化されていた作品だが、まだ観ていなかったため、今回ようやく鑑賞。1960年に公開された作品。この頃は既にカラー作品が主流になっていたが、この作品はモノクロ映画。この映画は、芦川いづみがちょっと辛い目にあう映画として有名だったこともあって、観ることに躊躇があった映画だったが、今回ついに鑑賞することに。
『学生野郎と娘たち』は、鬼才・中平康監督作品。中平監督といえば、僕が一番好きな芦川いづみ作品となっている『あした晴れるか』も監督しているが、鬼才と言われるだけあって、かなり独特な勢いと感性を持った監督である。
この映画は、当時不況の中で、学生運動なども活発になっていた時代背景を捉えた映画となっており、とてもスピード感もあって、学生のエネルギーに満ちた作品だ。主役は芦川いづみというより、どちらかと言えば中原早苗とも言える作品で、他にも清水まゆみなど多くの女性が出演していることで、華やかな作品となっている。また男優も若い頃の長門裕之と岡田真澄も出演しているのも注目だ。
そして肝心な芦川いづみなのだが、冒頭に書いた通りかなり辛い役柄を演じている。学生ながらバーで働き、コールガールのように落ちていく姿が描かれているが、金持ちのボンボン学生に23回もホテルの部屋で殴られるシーンがあり、挙句の果てにレイプされて関係を強要されてしまう。そして、映画の最後は、この金持ちボンボンにも裏切られ、ついに銅像で彼を殴り殺してしまい、自分も睡眠薬を大量に摂取してガスが充満するホテルの部屋で自殺をしてしまう展開に。最後は棺桶に入った芦川いづみまで登場するという、ある意味レアな芦川いづみがいっぱい詰まった映画だ。映画の中で芦川いづみが自殺に追い込まれるのは、『完全な遊戯』、『硝子のジョニー/野獣のように見えて』と、この『学生野郎と娘たち』の3本もあるが、この作品での描写が一番辛い感じだろう。
しかし、この映画で何とも辛い役柄を演じる芦川いづみだが、やっぱりスクリーンに登場する彼女はインパクトがあるし、兎に角美しいので、ついつい見入ってしまう。ちょうど『あいつと私』でも見せたショートカットの髪型がとてもクールな大人の女性を表現していて魅力的。映画の中でいくつものファッションを披露しているのも楽しい。長い間観るのを躊躇してきた作品であったが、今回鑑賞してみて、総合的には芦川いづみを満喫出来る異色作品であった。
ちなみに、このDVDに特典として収録されているフォトギャラリーには、可愛い芦川いづみの映画オフショットもあって、思わぬ収穫となった。