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生まれてすみません

軽快な音楽が緊迫感を帳消しにしつつも、豪華キャストで観ごたえ十分な「君よ憤怒の河を渉れ」が予想以上に愉しめたことについて

2024-06-30 13:08:03 |  ∟映画/邦画



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【タイトル】君よ憤怒の河を渉れ
【ジャンル】サスペンス、アクション
【監督】佐藤純彌
【公開年】1976年
【制作国】日本
【上映時間】2時間31分
【鑑賞方法】動画配信(Prime Video/KADOKAWAチャンネル対象作品)
【鑑賞日】6月30日(日)
【ストーリー】東京地検検事の杜丘冬人は、ある日、新宿の雑踏の中で見知らぬ女性から「強盗殺人犯」と騒がれた。
その場で緊急逮捕された杜丘を、別な男も「カメラを盗まれた」と供述した。
杜丘にはまるで身におぼえのないことだったが、証拠が揃いすぎていた。
罠だ!完璧な罠だ!杜丘は家宅捜索の隙をみて逃亡した。
その日から、憤怒に燃えた逃亡の旅が始まった…。(以上、AmazonのDVD紹介記事から転載)

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【感想】以前より気になっていた、高倉健主演の昭和51年に公開された大映映画。
実は私、大映映画が大好き(シャレにあらず)。
ずいぶん前からPrime VideoのKADOKAWAチャンネルに登録している。


主演の高倉健は、東京地検検事の杜丘冬人を演じる。
その杜丘を昭和51年当時の新宿の大混雑を極める路上で、女(伊佐山ひろ子)が見つけ、たまたま居合わせた警官に捕まえるよう依頼する。
容疑は強盗強姦。

交番におとなしく連行され、さらに新宿署へ連れていかれる杜丘。
女の証言によれば杜丘が盗んだものは、指輪と現金20万円。
さらに身体も奪われたという。

この出だしから結構ムリがある。
検事がコソ泥に押し入った先で、女性まで犯すか?
まあ、健さん自身が検事には見えない(失礼!)ので、疑う気持ちも分からなくはないがやはり不自然。

上司(池部良)に同行して自宅の家宅捜査に立ち会う。
矢村警部(原田芳雄)らによって、盗まれた指輪は水槽から発見されるわ、1万円札はカーペットの下にきちっと並べられて見つかるわと、完全な仕込みと分かる状況。
そこで健さん、これはアカンと、風呂場の窓から逃走して自分の無実を晴らす旅に出発。

まあ、ここら辺まではある程度許せた。

伊佐山ひろ子が怪しいと睨んだ健さん、彼女の足取りを追って石川県へと向かう。
そこで、かなり緊迫した場面なのに、能天気な音楽が流れる。
この“能天気BGM”がチョイチョイ作中で使用され、緊張感を木っ端微塵に打ち砕く(私は楽しめたけど)。

北海道では熊に襲われるが、この熊が幼稚園児でも分かるくらい着ぐるみ感に溢れる。
でも、その時に出会った遠波真由美(中野良子)が妙に色っぽくて、ゆるキャラ系熊の安っぽさをチャラにする効果を発揮。
自分が若い頃には興味がなかった中野良子だが、この年齢になると彼女の艶っぽい雰囲気に惚れそうになる。

北海道でも警察に追われる健さん。
中野良子の父親役の大滝秀治が、自分のセスナを健さんにプレゼント。
これで逃げろとまさかの無茶振り&ありがた迷惑。
当然健さん、セスナなんて操縦したことない。

そこで大滝秀治は簡単な操縦方法のレクチャーを開始。
健さんも健さんで、数分間の指導で、俺イケんじゃね?って満更でもない顔つきなのが憎い。
イヤイヤイヤイヤ、いくらなんでも危険だろうと止める中野に向かって大滝は…

「男にはね、死に向かって飛ぶこともあるんだ」

と意味不明な説得を展開。

それで中野はなにも言えなくなる。
おいおいおい、必死に止めようぜ、良子さん。

これってさ、100パー墜落して死ぬ案件だよね。
健さんのことが好きなら簡単に送り出すな、中野良子よ。
そしてもっと危機感持とうぜ、高倉健!
ケセラセラのケンチャナヨってか!?


そのセスナを強制着陸させるべく、自衛隊機2機が緊急発進。
しかしこのジェット機、尻から黒煙がモクモクとパクたれ状態。
煙が上にたなびいている様は、健さんのセスナよりも先に墜落しそうな危険性を孕む。

そうこうして本州に戻ってきた健さん、検問をかいくぐり都内への潜入を試みる。
疲労からか、高熱を出して倒れ掛かる健さん。
彼を助けるのは、飲み屋のお姉さんの風の倍賞美津子。
彼女が若くてこれまたいい女。
そりゃ、猪木もイチコロだわ。

大滝秀治の計らいで、新宿で仕事をしていた中野良子へ健さんからのヘルプコール。
新宿駅前は制服・私服の警官だらけ。
この絶体絶命の大ピンチを中野の機転で健さんの救出に成功。

その方法が奇想天外。
自分のところの競走馬10頭前後を新宿の街に走らせる。
街はもちろんパニック状態、上を下への大騒ぎ。

その中の1頭にまたがる中野は、健さんをピックアップして闇の彼方へ消えていく。
活躍した馬たちを回収する際、人目を引くから自分らの居場所、丸わかりじゃね?
そんな無粋やこという奴は、馬に蹴られて死んじまえってか。

最後の大ボスとの対決が完全に人の道から外れていてアナーキー。
黒幕の長岡(西村晃)が韓国へ高飛びする直前、ギリで会社に踏み込む。
健さんと原田芳雄は西村に対し、他の連中のように飛び降りて自死するよう強要する。

ハイ、そうですか、といかないところが世の中の常。
結局、丸腰の西村に向かって健さんと原田は拳銃の弾を全部撃ち込む。
それについて原田は、駆けつけた部下に正当防衛を主張。

無茶苦茶にも程がある。

他にも田中邦衛、大和田伸也、下川辰平が出演している豪華キャスト。
昔の刑事ドラマの尺を伸ばして、濃厚な味付けにした感じの内容。
いろいろとツッコミどころはあるものの、2時間半の上映時間を長く感じさせないのは、キャストとスタッフの力量からか。

ちなみに監督は“新幹線大爆破”でもメガホンを取った、佐藤純彌。

さすがにDVD購入までには至らないが、昭和を彩った名優たちの演技を堪能したいのならオススメです。
最後に、原作では“憤怒”を「ふんぬ」と読ませるが、映画ではあえて「ふんど」とルビを振ってある。
逃亡しながら真犯人を追い求める健さんに、憤怒感はそれほど感じなかったけどね。

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中野良子の昭和的妖艶度:★★★★☆
原田芳雄はなにをやっても原田芳雄度:★★★★★
田中邦衛の病院での哀愁度:★★★★☆
西村晃の水戸黄門度:☆☆☆☆☆

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