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【タイトル】ちびねこ亭の思い出ごはん 三毛猫と昨日のカレー
【著者】高橋由太
【出版社】光文社
【版型】文庫
【読了日】2024年6月28日(金)
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【感想】前回に続き、今回も高橋由太さんの“ちびねこ亭の思い出ごはん”シリーズ。
サブタイトルは“三毛猫と昨日のカレー”。
読み始めたら、次の話が気になって仕方ない。
例えば…
・福地櫂と二木琴子2人の関係性の進展具合
・母親が始めた店を引き継ぐと決めた櫂のその後
・琴子の進路の行方(大学・劇団・ちびねこ亭でのアルバイトどれを選ぶのか)
・看板猫の“ちび”はいつまでちびなのかw
などなど。
ちなみに、このシリーズは前回と今回の作品を含め、8巻まで刊行されている。
さらに今後も続編が出版されるので、非常に楽しみだ。
一応、そのタイトル名を記しておく。
1. 黒猫と初恋サンドイッチ
2.三毛猫と昨日のカレー
3.キジトラ猫と菜の花づくし
4.ちょびひげ猫とコロッケパン
5.たび猫とあの日の唐揚げ
6.からす猫とホットチョコレート
7.チューリップ畑の猫と落花生みそ
8.かぎしっぽ猫とあじさい揚げ
「1」から「6」まではすでに揃えている(おい、すっかりハマってるだろ!?)。
ところが、私の生活圏内にある書店には、それ以降の作品が見当たらない。
そこで、「7」と「8」はAmazonで注文することにした(明後日には届く♡)。
高橋由太さんの作品は、他のシリーズもある。
読みたい本が目白押しでとてもうれしい。
敢えて問題点があるとすれば収納面だけだ…。
さて、本作のご紹介&感想。
■ 黒猫と味噌漬けの豆腐
二十歳にして、亡くなった母親と同じ“余命5年”と申告された早川凪。
生きる意味を見失い、自暴自棄になっている。
あるとき、公園で中森俊弥と知り合い、次第にお互いに惹かれるようになる。
俊弥とのデートを重ね、凪の気持ちも明るくなってきたが、自分が病気で5年しか生きられないことは伝えられないまま。
その後、凪は俊弥からプロポーズされる。
しかも彼は凪の病名を知り、治るのが困難であることを承知の上でのプロポーズだった。
ところが、それに対する凪の応えは
「帰ってください」
「あなたとは結婚しません」
「最初から好きじゃなかったから」
相手を思い、悲しませたくないからこそ、敢えて別れを告げた。
傷心のまま、ちびねこ亭で亡くなった母と再会を果たした凪。
母親は、凪に優しくも厳しい助言をする…。
この作品がこの巻では一番心に迫った。
我が子に対し、生まれてきたことへ感謝し、希望や夢をあきらめないよう導く母親の言葉が、子を持つ親として胸に突き刺さる。
どの作品にもいえることだが、生きている者、死んでいる者、いずれも愛が溢れている。
その愛があるゆえに、切なく悲しく温かい。
最後に凪が、自分を信じ、愛を信じ、未来を信じる姿に涙が溢れて仕方ない。
■ ハチワレ猫と豚バラの唐揚げ
前職で受けたパワハラがきっかけで、部屋に引きこもったまま40歳になろうとしている宮田啓太。
母親と二人暮らしの彼は、自分の不甲斐なさから優しく接してくれる母につらく当たる。
それでも息子の未来を信じ、決して希望を捨てなかった母。
ある時、その母が脳梗塞で亡くなる。
今まで部屋に引きこもっていた啓太は、生きる術を知らない。
ホームレスになることをも覚悟していた。
葬儀後、母が勤めていた介護施設の職員から、一緒に働かないかと声を掛けられる。
最初は当然、使い物にならず、施設の主任である江尻詩織から厳しい指導を受ける羽目に。
一生懸命やっていると自負する啓太は、認めてくれない主任に納得できず、今すぐ辞めてやるつもりでいた。
一年後、ちびねこ亭で亡くなった母と再会した啓太。
結局彼は、介護施設を辞めることなく続けていた、しかもアルバイトから正社員に昇格して。
母親に対し、啓太は
“母さん、産んでくれてありがとう。いろいろあったけど、20年も引きこもっていたけど、
親不孝ばかりしたけど、この世に生まれてきてよかった。とっても幸せです”
と告白する。
そして、それ以外にも大切な報告があった…。
先ほど、“この作品がこの巻では一番心に迫った”といったが、このお話も相当に迫りまくった。
ハッピーエンド感最高で大円団を迎える。
この展開、もうね、泣くよね。
泣けば、泣くとき、泣きました。
意味不明な泣くの三段活用ときたもんだ。
ハナだって、すすれば、すするとき、すすりましたよ。
ハナをすするの三段活用も登場だい。
麺をすすると欧米ではマナー違反になるようだが、こちとら東京人だ、そばもハナも遠慮なくすすらせてもらうぜ!
バーロー、おととい来やがれってんだ、こんチクショーめっ!(大丈夫か、俺!?)
■ ソラ猫とイワシ蒲焼き丼
70歳の山田光代は、夫や飼い猫に加え、昔からファンだった音楽家の川久保健一までも亡くし、孤独な日々を過ごしていた。
楽しみは介護施設で週に1、2回開かれる茶話会くらい。
そこで知り合った蕪木から(この人“ハチワレ猫と豚バラの唐揚げ”にも登場)ちびねこ亭のことを聞かされていた。
“死んだ人間と会うことができる食堂がある”
そこへ行ってみたいと話す光代に、茶話会の友人たちは猛反対。
それはきっと詐欺だ、騙されているんだと反対されるも光代は、ちびねこ亭を目指す。
彼女が会ってみたいのは亡くなった両親でも夫でも飼い猫でもない。
川久保健一であった。
誰もいない家に帰りたくない、死にたいと川久保に訴える光代。
しかし川久保からは、あなたはまだ、あの世には逝けませんと告げられる。
この世でやることが残っていると。
やることなんて何もないと反発する光代に、川久保は“私の歌のよさを伝えてあげてください”と返す。
からかわれていると思い、怒りが込み上げてくる光代。
そこへ、光代を救うべく、茶話会の仲間たちがちびねこ亭へ押しかけてくる…。
これから10数年が経ち、私が光代と同じ立場になったら(家内や息子たちが死んでるの前提)孤独に耐えられず死にたいと思うのだろうか。
少なくても今よりは張り合いのない生活だろう。
正直、想像もつかない。
川久保は光代に、自分の歌のよさを友だちに伝えるよう導く。
決して独りぼっちではないことを川久保は教えてくれたのだ。
果たして自分は70代になって、友だちといえる人がいるのだろうか。
私の場合、友だちは、映画と本だけであるような気が、しちゃったりなんかして(広川太一郎かよ?)。
■ 三毛猫と昨日のカレー
琴子が所属する劇団の主宰者であり、琴子の亡兄・結人の友人でもあった熊谷。
琴子にちびねこ亭の存在を教えてくれたのも熊谷。
さらに、彼女の役者としての素質を見抜いたのも熊谷だった。
その熊谷にも辛く悲しい過去があった。
交通事故で幼い息子を亡くし、それが原因で妻とも別れた。
熊谷は元妻と一緒にちびねこ亭を訪れ、亡くなった息子の翔真に会いたいからと、琴子に予約を頼む。
予約当日、熊谷が思い出ごはんを口にすると、いつものように深い霧が立ち込めた。
そこから現れたのは亡くなった翔真。
再会を喜び、わずかな時間を息子と共にする熊谷。
別れ際、翔真からあるお願いをされる。
それによって熊谷はまた舞台に立つ決意をかためる。
そして、元妻のすみれも新たなる人生のスタート地点に立つ…。
亡くなった子供が現れて、親と再会する設定は、私をイチコロでノックアウトする。
もう反則級のダメージを与える。
幼くして亡くなってしまい、それでも残った親を気遣う姿を読むとたまらなく切ない。
第1巻の2話目“黒猫と初恋サンドイッチ”に登場する中里文香にしても同様。
橋本泰司と亡くなった文香との恋の告白シーンなんて、涙なくしては読めない。
はい、もう本当に悲しい悲しい、切ない切ない場面ですねぇ(淀川長治先生風)。
ところで、すみれが地元の病院の中庭で出会った“小学生くらいの女の子”って、その中里文香ですよね?(←誰に訊いている?)
以上、いたずらに長々と書いてしまい申し訳ありません。
とにかく私にとって、人前では非常に読みにくい涙腺崩壊必至の作品であることは間違いなし。
そして、いつまでも記憶に残るであろう作品であることも間違いなしなのです。
* * * * * * * * * * * *
次巻以降の期待度:★★★★★
イワシの蒲焼き丼を食べてみたい度:★★★★☆
結婚して子供もいるから余計に入り込めるのかも度:★★★★☆
三毛猫ホームズ度:☆☆☆☆☆
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