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【タイトル】向日葵の咲かない夏
【著者】道尾秀介
【出版社】新潮社
【版型】文庫
【読了日】2024年7月14日(日)
【ストーリー】夏休みを迎える終業式の日。
先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。
きい、きい。妙な音が聞こえる。
S君は首を吊って死んでいた。
だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。
一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。
「僕は殺されたんだ」と訴えながら。
僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。
あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。
(以上、新潮社のホームページから転載)
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【感想】かなり期待度高めで読み始める。
終業式・夏休み・少年・友だち・自殺…。
“自殺”を除けばウキウキする要素が詰め込まれたミステリー。
いや、ミステリーであれば自殺すらも大切なファクターになる。
今は、7月半ばである。
同じような時期設定のこの作品を読むのにも適していると思った。
単純な私、ウキウキのワクワクで読み始める。
終業式の日、学校を休んだS君のために、自宅へ宿題などを届けたミチオ。
誰もいないS君の家の和室で、本人が首を吊って死んでいるのを発見。
ミチオは慌てて学校へ戻り、担任に報告する。
ところが、担任が警官を伴ってS君の家に向かうも、死体がなくなっている…。
この導入部分からストーリーに引き込まれる。
しかも、その一週間後に亡くなったS君があるものに姿を変えてミチオの前に現れた。
そのS君、自分は自殺ではなく、殺されたのだと告げる。
ミチオは妹のミカとS君の3人で、S君を殺害し、その遺体を隠した犯人を探しはじめる。
私はこんな子供たちが活躍して、事件の真相に迫り、犯人を追い詰めるストーリーが好きだ。
そこに、全体的に漂う薄気味の悪さ・微妙な違和感が加わり独特の雰囲気を醸す。
最後まで夢中で読んだ。
先が気になって寸暇を惜しんで読んだ。
後半、真犯人が判明するまでの流れは、まさに正統派ミステリー。
論理的に分かりやすく、ムリがなく、併せて予想外の展開もある。
そして、終盤になるとミチオの家庭事情が詳らかにされる。
妹ミカ、そのミカを偏愛する母親、寡黙な父親に関して、あることが明らかになる。
さらにミチオの過去についても…。
最後のシーンまで読み終わり
えっ、これで終わりなの?マジで?
そう思ったのは私だけではないだろう。
なんとなくモヤモヤした思いで本を閉じた。
その後、気になる箇所を読み返し、自分なりに答えを出した。
でも、他の人の見解も気になり、ネットで検索した。
うんうん、やっぱりそういうことだよね…
みんなと同じような答えを導き出した自分に安堵した。
トンチンカンな結論に至らなかったことにホッとした。
最後に“あとは、自分で想像してね”と著者に放り出されたような感覚を味わった。
それはきっと著者が意図したことなのだろう。
そんな読後感もまた一興だと思った。
うーん、結局ボヤーンとした感想に終始したね、今回(も)。
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●●になったS君の最期の儚い度:★★★★★
ミカちゃんの正体の意外度:★★★★☆
ミチオの母親への同情度:★★☆☆☆
ミチオの推理力の超小学生度:★★★★★
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【タイトル】告白
【著者】湊かなえ
【出版社】双葉社
【版型】文庫
【読了日】2024年7月5日(金)
【ストーリー】「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」
我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。
語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。
(以上、双葉社のホームページから転載)
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【感想】今さら感が否めない、今さらながらの湊かなえ、今さらながらの告白。
第一章“聖職者”で教師の森口悠子の告白に衝撃を受けながらも、今後の展開への期待感は大いに高まる。
第二章“殉教者”では、クラス委員の北原美月が森口へ宛てた手紙の形式で書かれる。
森口が退職したあとのB組の混乱ぶりが紹介される。
後任のウェルテル先生の空気読めない感と空回り感が、痛々しくも憎めない。
第三章“慈愛者”は加害者の一人、下村直樹の母親の日記という形で話は進む。
母親の息子に対する一方的かつ激しい思い込みが、息子と自分を追い込んでいく様が描かれる。
慈愛者は盲目者でもあったのだ。
第四章“求道者”では、下村直樹が施設内の壁に映り出される自分の過去を、第三者として見つめながら紹介していく。
現在、自分が置かれている立場は悪い夢だと思っており、早く覚めることを願っている。
直樹クンは、完全にイっちゃっていた。
第五章“信奉者”はもう一人の加害者、渡辺修哉が自分のサイトにアップした記事というスタイルで描かれる。
母親に捨てられた修哉は、その母に会いたい、認められたいという身勝手な理由で、森口の娘を殺めるまでの経緯が綴られる。
修哉の母親もイカれていて、息子に同情する気持ちも若干あったり、なかったり…。
そして第六章“伝道者”で、修哉への森口からの電話という形式で結ばれる。
ワタクシ、牛乳への仕込みは、犯人の二人を精神的に追い込むための狂言だったと思っていた。
教師であるから、いくら娘を殺した生徒とはいえ、命を奪うような暴挙に出ないと思っていた。
ところが、実際にはそんな生やさしいものではなかった。
森口悠子も実は、相当に狂っていた。
渡辺や下村となんら変わらず常軌を逸していた。
娘への報復が、他者を巻き込むことへの罪悪感を打ち消している。
この物語は、誰一人幸せにならず、誰も救われない。
さすがは“イヤミスの女王”と呼ばれる湊かなえの作品である。
女王の面目躍如だ。
しかし、私の読後感は決してイヤな気持ちではなかった。
張り巡らされた伏線を回収する過程は、かなり楽しめた。
最後の驚愕の展開は、やや大雑把に感じたが身も蓋もないオチで悪くなかった。
私自身、初めての湊かなえだったが、他の作品も読みたくなった。
もっとドロドロしてグチャグチャでもいい。
読んでいて
俺の心まで病みそう…
と危機感を覚えるくらいの作品と出会いたい。
もっともっとイヤが気持ちで本を閉じたい。
そう願っている時点で、私はすでに病んでいるのかもしれないね。テヘヘ(←テヘヘじゃないわ!)。
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読後感じたイヤミス度:★★☆☆☆
愛美ちゃんへの憐れ度:★★★★★
渡辺への復讐の荒唐無稽度:★★★★★
予想の上をいった完成度:★★★★☆
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【タイトル】カラフル
【著者】森絵都
【出版社】文藝春秋
【版型】文庫
【読了日】2024年7月1日(月)
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【感想】最近YouTubeで、本好きの人がお勧めする書籍紹介の動画を見ている。
ミステリー・ホラー・純文学・時代小説・海外の翻訳物などジャンルはこだわらず、購入する際の参考にしている。
その中で、どなたが紹介していたかは失念したが、なんとなく心に残った作品があった。
その本を先日、書店で見つけ、手にとってパラパラしてみたら(←パラパラを踊ったわけじゃない)
これ、おもしろいんじゃね!?
とピンときたわけです(←ピンときたといっても泉ピン子が来たわけじゃない)。
ありますよね、手に取った瞬間、ビビビっとくる本が。
私の場合それを“ビビビ婚”ならぬ“ビビビ本”と呼び、即買いすることにしています。
今、文字にして思ったけど“ビビビ本”と“ビニ本”って似てますよね(笑)←笑うな!
裏表紙のあらすじには
生前の罪により輪廻のサイクルから外されたぼくの魂が天使業界の抽選にあたり、再挑戦のチャンスを得た。
自殺を図った少年、真の体にホームステイし、自分の罪を思い出さなければならないのだ…
老若男女に読み継がれる不朽の名作。
とあった。
輪廻や天使に興味はないが“老若男女に読み継がれる不朽の名作”って文言には大いに惹かれる。
年齢・性別を問わず、読み継がれている、不朽の名作!なのである。
つまらないハズがない。
むしろ、読了してまったく心に残らなかったら、それは私の感性がバグっているのだ。
私の心の奥底にドス黒い闇が潜んでいるに違いない。
もしかするとヒトですらないのかもしれない可能性もある(じゃあサルか?)。
ということで、全幅の信頼をおいて読み始めた(自分には信頼おいてないけど)。
主人公の真(まこと)が暮らす小林家は、真を含め、両親と兄の4人家族。
事前の情報では、家族はかなりクセが強そうである。
父は利己的で、母は不倫をしていて、兄は無神経な意地悪男。
真は身長が低く、顔つきも暗く、無口で友だちのいない少年だった。
その体に“ぼく”の魂が一時的に憑依(作中では“ホームステイ”と表現)した。
外見は真でも中身は他人の“ぼく”なのだから当然、今までと言動が違ってくる。
自殺を図った真のことは、教師が承知してるだけで、クラスメートは知らない。
風邪をこじらせて休んでいたくらいにしか思っていない同級生たち。
しばらく見なかっただけなのに、真の態度や物言いが明らかに変わっていて、周囲は動揺する。
“ぼく”バージョンの真は、今までの真の生活ぶりなど知らないので、自分のやりたい放題。
不倫をしていた母親には突っかかるし、父親とは目も合わせない。
片思いの相手桑原ひろかは、中年男性と援助交際をしているが、ホテルに入る手前で掻っ攫う。
真の貯金で2万8千円のスニーカーを買うものの、不良メンバーに襲われその靴を奪われてしまう。
そんな、非生産的な日々を過ごしていれば、課題である“ぼく”の前世の罪を思い出すなど絶望的…。
しかし、期限は決まっている。
それまでにクリアしなければ魂は消滅する。
さあ、どうする、真よ、いや“ぼく”よ!?
当初、問題のある家庭だと思わせておき、実は真の両親・兄ともに真のことを愛していて、後半は非常にハートフルな展開。
ガイド役のプラプラも口は悪いがいいヤツで、肝心なところで登場して真に助言を与える。
中盤からの家族・友人とのやり取りは、お互いが真剣であるが故、仮住まいの“ぼく”は懊悩する。
真よ、どうして死に急いだ、もう少し生きていたら誤解だと分かったのにと…。
タイトルの「カラフル」に絡めて作中でこんなセリフがある。
この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはいつも迷っている。
どれがほんとの色だかわからなくて。
どれが自分の色だかわからなくて。
私が気に入った箇所だ。
誰もが自分の色を持っている。
暗い色もあれば、明るい色もある。
暗い色が明るい色に翳りを落とすこともある。
逆に明るい色が暗い色を照らすこともある。
それらをひっくるめて自分の色なのだ。
ネタバレになるのであまり詳細には触れないでおく。
非常に読みやすい小説なので、興味のある人は手にとって欲しい。
“不朽の名作”との表記に納得するだろう。
ラスト、別れの際のプラプラのセリフ
「あばよ、小林真。しぶとく生きろ」
に思わずジーンとした。
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当初の小林真への好感度:★☆☆☆☆
家族愛への感動度:★★★★☆
早乙女クンのいいヤツ度:★★★★★
佐野唱子のいじらしい度:★★★★☆
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【タイトル】ちびねこ亭の思い出ごはん 三毛猫と昨日のカレー
【著者】高橋由太
【出版社】光文社
【版型】文庫
【読了日】2024年6月28日(金)
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【感想】前回に続き、今回も高橋由太さんの“ちびねこ亭の思い出ごはん”シリーズ。
サブタイトルは“三毛猫と昨日のカレー”。
読み始めたら、次の話が気になって仕方ない。
例えば…
・福地櫂と二木琴子2人の関係性の進展具合
・母親が始めた店を引き継ぐと決めた櫂のその後
・琴子の進路の行方(大学・劇団・ちびねこ亭でのアルバイトどれを選ぶのか)
・看板猫の“ちび”はいつまでちびなのかw
などなど。
ちなみに、このシリーズは前回と今回の作品を含め、8巻まで刊行されている。
さらに今後も続編が出版されるので、非常に楽しみだ。
一応、そのタイトル名を記しておく。
1. 黒猫と初恋サンドイッチ
2.三毛猫と昨日のカレー
3.キジトラ猫と菜の花づくし
4.ちょびひげ猫とコロッケパン
5.たび猫とあの日の唐揚げ
6.からす猫とホットチョコレート
7.チューリップ畑の猫と落花生みそ
8.かぎしっぽ猫とあじさい揚げ
「1」から「6」まではすでに揃えている(おい、すっかりハマってるだろ!?)。
ところが、私の生活圏内にある書店には、それ以降の作品が見当たらない。
そこで、「7」と「8」はAmazonで注文することにした(明後日には届く♡)。
高橋由太さんの作品は、他のシリーズもある。
読みたい本が目白押しでとてもうれしい。
敢えて問題点があるとすれば収納面だけだ…。
さて、本作のご紹介&感想。
■ 黒猫と味噌漬けの豆腐
二十歳にして、亡くなった母親と同じ“余命5年”と申告された早川凪。
生きる意味を見失い、自暴自棄になっている。
あるとき、公園で中森俊弥と知り合い、次第にお互いに惹かれるようになる。
俊弥とのデートを重ね、凪の気持ちも明るくなってきたが、自分が病気で5年しか生きられないことは伝えられないまま。
その後、凪は俊弥からプロポーズされる。
しかも彼は凪の病名を知り、治るのが困難であることを承知の上でのプロポーズだった。
ところが、それに対する凪の応えは
「帰ってください」
「あなたとは結婚しません」
「最初から好きじゃなかったから」
相手を思い、悲しませたくないからこそ、敢えて別れを告げた。
傷心のまま、ちびねこ亭で亡くなった母と再会を果たした凪。
母親は、凪に優しくも厳しい助言をする…。
この作品がこの巻では一番心に迫った。
我が子に対し、生まれてきたことへ感謝し、希望や夢をあきらめないよう導く母親の言葉が、子を持つ親として胸に突き刺さる。
どの作品にもいえることだが、生きている者、死んでいる者、いずれも愛が溢れている。
その愛があるゆえに、切なく悲しく温かい。
最後に凪が、自分を信じ、愛を信じ、未来を信じる姿に涙が溢れて仕方ない。
■ ハチワレ猫と豚バラの唐揚げ
前職で受けたパワハラがきっかけで、部屋に引きこもったまま40歳になろうとしている宮田啓太。
母親と二人暮らしの彼は、自分の不甲斐なさから優しく接してくれる母につらく当たる。
それでも息子の未来を信じ、決して希望を捨てなかった母。
ある時、その母が脳梗塞で亡くなる。
今まで部屋に引きこもっていた啓太は、生きる術を知らない。
ホームレスになることをも覚悟していた。
葬儀後、母が勤めていた介護施設の職員から、一緒に働かないかと声を掛けられる。
最初は当然、使い物にならず、施設の主任である江尻詩織から厳しい指導を受ける羽目に。
一生懸命やっていると自負する啓太は、認めてくれない主任に納得できず、今すぐ辞めてやるつもりでいた。
一年後、ちびねこ亭で亡くなった母と再会した啓太。
結局彼は、介護施設を辞めることなく続けていた、しかもアルバイトから正社員に昇格して。
母親に対し、啓太は
“母さん、産んでくれてありがとう。いろいろあったけど、20年も引きこもっていたけど、
親不孝ばかりしたけど、この世に生まれてきてよかった。とっても幸せです”
と告白する。
そして、それ以外にも大切な報告があった…。
先ほど、“この作品がこの巻では一番心に迫った”といったが、このお話も相当に迫りまくった。
ハッピーエンド感最高で大円団を迎える。
この展開、もうね、泣くよね。
泣けば、泣くとき、泣きました。
意味不明な泣くの三段活用ときたもんだ。
ハナだって、すすれば、すするとき、すすりましたよ。
ハナをすするの三段活用も登場だい。
麺をすすると欧米ではマナー違反になるようだが、こちとら東京人だ、そばもハナも遠慮なくすすらせてもらうぜ!
バーロー、おととい来やがれってんだ、こんチクショーめっ!(大丈夫か、俺!?)
■ ソラ猫とイワシ蒲焼き丼
70歳の山田光代は、夫や飼い猫に加え、昔からファンだった音楽家の川久保健一までも亡くし、孤独な日々を過ごしていた。
楽しみは介護施設で週に1、2回開かれる茶話会くらい。
そこで知り合った蕪木から(この人“ハチワレ猫と豚バラの唐揚げ”にも登場)ちびねこ亭のことを聞かされていた。
“死んだ人間と会うことができる食堂がある”
そこへ行ってみたいと話す光代に、茶話会の友人たちは猛反対。
それはきっと詐欺だ、騙されているんだと反対されるも光代は、ちびねこ亭を目指す。
彼女が会ってみたいのは亡くなった両親でも夫でも飼い猫でもない。
川久保健一であった。
誰もいない家に帰りたくない、死にたいと川久保に訴える光代。
しかし川久保からは、あなたはまだ、あの世には逝けませんと告げられる。
この世でやることが残っていると。
やることなんて何もないと反発する光代に、川久保は“私の歌のよさを伝えてあげてください”と返す。
からかわれていると思い、怒りが込み上げてくる光代。
そこへ、光代を救うべく、茶話会の仲間たちがちびねこ亭へ押しかけてくる…。
これから10数年が経ち、私が光代と同じ立場になったら(家内や息子たちが死んでるの前提)孤独に耐えられず死にたいと思うのだろうか。
少なくても今よりは張り合いのない生活だろう。
正直、想像もつかない。
川久保は光代に、自分の歌のよさを友だちに伝えるよう導く。
決して独りぼっちではないことを川久保は教えてくれたのだ。
果たして自分は70代になって、友だちといえる人がいるのだろうか。
私の場合、友だちは、映画と本だけであるような気が、しちゃったりなんかして(広川太一郎かよ?)。
■ 三毛猫と昨日のカレー
琴子が所属する劇団の主宰者であり、琴子の亡兄・結人の友人でもあった熊谷。
琴子にちびねこ亭の存在を教えてくれたのも熊谷。
さらに、彼女の役者としての素質を見抜いたのも熊谷だった。
その熊谷にも辛く悲しい過去があった。
交通事故で幼い息子を亡くし、それが原因で妻とも別れた。
熊谷は元妻と一緒にちびねこ亭を訪れ、亡くなった息子の翔真に会いたいからと、琴子に予約を頼む。
予約当日、熊谷が思い出ごはんを口にすると、いつものように深い霧が立ち込めた。
そこから現れたのは亡くなった翔真。
再会を喜び、わずかな時間を息子と共にする熊谷。
別れ際、翔真からあるお願いをされる。
それによって熊谷はまた舞台に立つ決意をかためる。
そして、元妻のすみれも新たなる人生のスタート地点に立つ…。
亡くなった子供が現れて、親と再会する設定は、私をイチコロでノックアウトする。
もう反則級のダメージを与える。
幼くして亡くなってしまい、それでも残った親を気遣う姿を読むとたまらなく切ない。
第1巻の2話目“黒猫と初恋サンドイッチ”に登場する中里文香にしても同様。
橋本泰司と亡くなった文香との恋の告白シーンなんて、涙なくしては読めない。
はい、もう本当に悲しい悲しい、切ない切ない場面ですねぇ(淀川長治先生風)。
ところで、すみれが地元の病院の中庭で出会った“小学生くらいの女の子”って、その中里文香ですよね?(←誰に訊いている?)
以上、いたずらに長々と書いてしまい申し訳ありません。
とにかく私にとって、人前では非常に読みにくい涙腺崩壊必至の作品であることは間違いなし。
そして、いつまでも記憶に残るであろう作品であることも間違いなしなのです。
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次巻以降の期待度:★★★★★
イワシの蒲焼き丼を食べてみたい度:★★★★☆
結婚して子供もいるから余計に入り込めるのかも度:★★★★☆
三毛猫ホームズ度:☆☆☆☆☆
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【タイトル】ちびねこ亭の思い出ごはん 黒猫と初恋サンドイッチ
【著者】高橋由太
【出版社】光文社
【版型】文庫
【読了日】2024年6月24日(月)
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【感想】書籍紹介の動画を見ていて巡り会うことになったこのシリーズ。
どうやら泣ける話で綴られる連作短編集らしい。
加齢のせいか最近、涙腺のパッキンの劣化が著しい私にとって、地雷を踏むような一冊って気がする。
でも、本や映画に触れて泣けるって素晴らしいと思う。
無感動な人より断然、感情が動かされるわけだからお得である。
感動や感謝の機会が多い人ほど豊かな人生ではないだろうか?(←誰に訊いている?)
そんなわけで(どんなわけだ?)早速購入。
表紙が女子女子していて58歳のオッサンには小っ恥ずかしい。
でも、エロ本を買うわけじゃないしイイよね?(←だから誰に訊いている?)
帯には
⚠️人前で読むのは危険です。と書かれ、さらに
泣けて、泣けて、あたたかい
とも明記されている。
人前で読むのは危険ってことは、要するに
「ねえ、見て見て、ほのか!目の前に立ってるおっさん、本読みながら泣いてるよー!キモくない!?」
「うわっ、超マジキモいんだけどーっ!!」
と電車内で女子高生にキモがられる可能性があるってことか(あり得るな…)。
そこで私は、帰宅中の電車内では読まず、家に着いてから読むことにした…。
目次を見ると4作収められていた。
どのタイトルにも猫の種類と料理名が記されている。
「猫好きなワタシにピッタリな小説かも♡」とワクワクが止まらない(うん、キモい)。
最初の“茶ぶち猫とアイナメの煮付け”では、主人公“ちびねこ亭”店主の福地櫂と以後、準主役として登場する二木琴子との出会い、そして彼女の悲しい過去がメインテーマ。
ちびねこ亭では、亡くなった人との思い出に残るメニュー“思い出ごはん”を作ってくれる。
ちびねこ亭に予約を入れる際、客は思い出の料理名を店主に伝える。
そして当日、お店で出されたその料理を口にすると、もう一度会って顔を見たい、話をしたい、伝えたいことを聞いてもらいたい故人と再会できるのだ。
しかし、会える時間は料理が冷めて、湯気が消えるまでの短時間。
琴子は、自分を庇って車に轢かれて死んだ兄に会うため店に訪れた。
子供の頃から勉強や運動ができ、父母の自慢の息子だった兄。
私が死ねばよかったと悔やむ琴子。
そこへ、兄の得意料理だったアイナメの煮付けが運ばれ
琴子が口にすると…
以降のことはネタバレになるので省略するが、切なくも温かい話だった。
そして私は、どうにか涙を流さずに読み終えることができた。
自分の涙腺の蛇口も捨てたものではない。
ところが、次の作品“黒猫と初恋サンドイッチ”で呆気なく蛇口がぶっ壊れ
さらに“サバ白猫と落花生ごはん”の夫婦愛でダダ漏れし
最後の“ちび猫と定食屋のまかない飯”の親子愛に鼻水まで垂れだした(汚ねえなぁ)。
250ページ、あっという間に読み終えた。
実に温かく優しくほんわかとした気持ちになれる一冊だった。
ややもすれば湿っぽくなりがちなテーマに、ほのぼのとしたアクセントを与えてくれるのが、看板猫の“ちび”。
人間の言葉を理解しているかのような「みゃあ」や「みゃん」の鳴き声が、時にはおかしく、時には心地よく心に響く。
猫好きの心を鷲掴みにするちび。
素敵な作品と出会えたと思う。
こういう出会いがあるから読書はやめられない。
と、まあ、こんなことになりそうな気がしていたので
次巻“三毛猫と昨日のカレー”も一緒に買ってある。
次回の読書感想も“ちびねこ亭の思い出ごはん”に決定!
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涙腺決壊度:★★★☆☆
千葉の内房へ旅したい度:★★★★★
ちびねこ飼いたい度:★★★★★
このシリーズコンプリートしちゃうかも度:★★★★☆
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【タイトル】スマホ脳
【著者】アンデシュ・ハンセン/著 ・久山葉子/訳
【出版社】新潮社
【版型】新書
【読了日】2024年6月22日(土)
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【感想】朝晩の通勤時や移動時、電車に乗っていると8割方の乗客はスマホを手にしていることに気づく。
私は昔からその光景になんとなく違和感を覚えていた。
もちろん私も電車内でスマホを操作するが、大体はヤフーニュースをチラッと見て、あとは寝るか読書のいずれか。
本書、第1章の冒頭で、見開き2ページに1万個の点が描かれている。
その点1個が、20万年前に私たちの種が東アフリカに出現して以来の“一世代”を表しているという。
要するに点を全部合わせると人類の歴史になるそうだ。
この1万個の点のうち9,500個分の人たちは、狩猟採集民として生きてきた。
ちなみに車や電気、水道、テレビのある世界に生きたのは“点8個分”
コンピューターや携帯電話、飛行機が存在する世界に生きたのは“点3個分”
スマホ・フェイスブック・インターネットが当たり前の世界しか経験していないのは“点1個分”
筆者は解く、狩猟採集民であった頃の人間の脳と現代人の脳の働きは変わっていないと。
つまり私たちの脳は、スマホを通じて得る大量の情報をしっかりと処理できるようにできていない。
それに関連して、SNSの“いいね”や“グッド”の数値の多寡にストレスを受け、他者との比較による睡眠障害や鬱になる人が増えているそうだ(特に若年層)。
著者はスウェーデンの精神科医で、さまざまな視点からスマホやタブレット、パソコンによる現代人への悪影響の可能性を紹介している。
読んでいて実に興味深く、そして納得する点が多い。
スマホやタブレットはもちろん“悪”ではない。
でも、使い方や使用時間は見直すことを提言している。
その見解に賛否もあるだろう。
私自身は、PC・スマホ・電子書籍等の画面で読んだ文章は今イチ頭に入らない。
プリントアウトして紙ベースで読まないと頭にインプットされにくい(←それ、昭和生まれだからだろ)。
一時はKindleで本を購入して読んでいたが、それらを今は書籍で買いなおしている。
そんなアナログな私に本書は、非常に興味深い内容だった。
これから数100年後、数1,000年後はどれくらいテクノロジーが発達しているのか。
人類はどのように進化しているのか。
今よりもみんなが精神的な平安を得ていることを願うばかりだ。
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私のスマホ依存度:★☆☆☆☆
スマホ自体よりもSNSがダメなんじゃね?度:★★★★☆
とりあえず子供には控えさせようぜ度:★★★★★
この記事がよかったらグッドボタンよろしくね度:★★★★★
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【タイトル】夢をかなえるゾウ0(ゼロ)
【著者】水野敬也
【出版社】文響社
【版型】四六
【読了日】2024年6月16日(日)
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【感想】今さら説明不要な“夢をかなえるゾウ”シリーズ第5作目。
私自身は、自己啓発が目的ではなく、ガネーシャの傍若無人で破天荒なのに憎めないキャラが好きで愛読している感じ。
そして読後、ガネーシャが出した課題やありがたいお言葉(?)を反芻してなんとなく今後に活かそうとか、思ったり思わなかったり(どっちやねん!?)。
今回登場する悩める若者には、夢がない。
本人も「夢って必要ですか?」とガネーシャへ逆に聞き返すくらい夢に無関心。
その青年に対し、ガネーシャが夢を与え、夢をかなえさせ、挙句「宇宙一の偉人に育てる」とまで請け負う。
ガネーシャからの課題を素直にこなしていく主人公。
徐々に成長していく過程はいつもの通り。
ただ、過去の主人公と違い、ガネーシャに対して低姿勢で従順。
ガネーシャ、いつになく上機嫌♡
毎回登場する個性的なサブキャラたちが本シリーズの魅力のひとつ。
今回はガネーシャのペットのバクとガネーシャの父親のシヴァ(←最高神ね)。
バクは夢ソムリエで、シヴァの容姿は大黒様。
どちらもストーリーの進行上、欠かせない存在(ような気がする)。
笑えて、納得して、応援して、最後はしんみり&ホロり。
でも、最後の最後でガネーシャが主人公の部屋に置き忘れてきた物のイラストを見て、私は大爆笑!
完全に虚をつかれた!!
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共感度:★★★☆☆
ガネーシャ破茶滅茶度:★★★★☆
釈迦への憐憫度:★★★★★
次回作も読みたい度:★★★★★