サンデーたかひろ

絵描き・ながさわたかひろの制作実況 “from Machida, Tokyo”

5月:第1週『愛の菊地成孔』完成!

2019年05月05日 | 愛の肖像画(顔、顔、顔)

4月30日
 TOHOシネマズ新宿で『アベンジャーズ/エンドゲーム』IMAX3Dで鑑賞。

 

5月1日
 令和、始まる。

 『愛の菊地成孔』を描き終え、菊地さんの個人事務所〈ビュロー菊地〉の長沼さんに連絡すると「5月1日(水)18時に事務所へお越し下さい」とのこと。雨の新宿。絵が濡れぬよう、抱えて歩く。A3サイズのボードにアクリルガッシュ。描かれているのは、本の見返しを開き、今まさにサインしようとする菊地さんの姿だ。あのとき僕は震えていた。何か気の利いたことを言いたいのだが言葉にならなかった。この場から立ち去りたいとさえ思う。いつもそう。たかがサイン会なのに。もうそろそろ克服したい。こんな自分とサヨナラしたい。ならば、あえてもう一度あのサイン会に挑もう!あのとき、あの場所、あの空気感とちゃんと向き合おう。菊地さんの目線の先には僕がいる。押し黙り、萎縮した、冴えない自分を一瞥する菊地さんの図、at 〈BOOK LAB TOKYO〉。
 事務所に通され、待つこと1分かそこら。菊地さんが現れる。ここで頭が真っ白になった。挨拶はできたと思う。とにかく絵を出すんだ。あとは絵が語ってくれる…
 「ビックリ。もっとグリグリ描くのかと思ったよ」とは、前回、菊地さんのサイン会でお写真を撮らせていただいた際、拙著『に・褒められたくて』をお渡ししていたから。版画によるこのシリーズでは、画面の隅々まで自分の思いを執拗に展開させていたので、それに比べ、物足りなく感じたのかもしれない。「もっとキミの空想の世界に連れてってよ」とでもいうことだったか。その真意は怖くて聞けなかった。でも今年取り組んでいる「愛の肖像画」はそうではなく、せっかく憧れの人と対面しているのに言葉が出ない、ドギマギして手が震える、汗ビッチョリになってしまう、帰りしなそんな自分に嫌気がさすのは分かっているのだから、ここはどうにか頑張って一枚でも写真を撮らせていただき、そのシチュエーションにもう一度平常心で身を置くこと、つまり描くことでしっかり向き合うこと、そうやって平面上に再構築した“その場面”を見てもらうことができたら自分の思いが伝わるのではないか、そしてガッチリ握手しよう、あわよくば熱い抱擁だって…と夢想しつつ、というより、憧れの人を前に舞い上がって声を発することができなくなる自分、それでも思いを伝えたいと切望する自分に残された唯一の手段が絵画なのだとすれば、恥をかきながらでもそれを続けること、その行為をそのまま見てもらうことが、どうにかこうにか社会と接点を持ち、大げさに言うなら生きることを肯定する、そしてそれが第三者に共感をもって受けとめてもらえたなら、そのとき初めて美術と呼べるものになるんじゃないか…なんてことを菊地さんに説明することができるはずもなく、でも絵を見てもらえたら多少なりとも感じとってもらえるだろうという淡い期待を抱きつつ、あわよくばこの絵に、あの時〈『菊地成孔の粋な夜電波 シーズン9-12 安定期と母の死そして女子力篇』刊行記念サイン会&トーク〉でいただいた略式のサインではなく、大型書店に平積みされるサイン本の内、何冊かに一冊差し込まれるという、楷書で書かれた“あたり”サインをいただけたらな〜なんて、ニタニタ考えていたせいもあり、ササッと略式でサインされたときに「アッ!」と声が出てしまい、菊地さんが「どうしたの?」とこちらに目線をくれたとき、つい「“あたり”が欲しい…」と口をつき、「あたりって?」と聞かれ、アタフタしつつ説明すると「あーなるほどね、それを言ってたんだね、いいよ、もちろん」ともう一つ、右側に“あたり”サインを加えていただけたのでした。う、嬉しい…。というわけで、菊地さんのサインが二つ並んだ、令和初日に完成した『愛の菊地成孔』です!
 「映画看板みたいにも見えるね」と言われて「なるほどそうかも。嬉しいな〜」とか答えた自分だったのですが、いま振り返ってみると、それって褒め言葉じゃないなーと。しかし言い得てると思ったことも確かで、いや、だって銚子の映画館の隣で育ったという映画好きな菊地さんなのだから、何かノスタルジックな記憶に繋がるものであるとすれば、それはそれで悪い意味じゃないよと思えたり…うん、そうだよ。とにかく、まだまだ暗中模索期の「愛の肖像画」シリーズですが、このまましばらく続けていくと、何かカタチが見えてくる筈なので。それがまとまったとき、初めて菊地さんにその膝を打ってもらえるのかもしれないので。とにかく今は次へ向かわなきゃだ。菊地さん、ありがとうございます!

 

 

5月4日
 歌舞伎町・ROCK CAFE LOFT で、〜KERA ソロアルバム『LANDSCAPE』発売記念〜全曲解説付きアナログ盤試聴会2days。
 その1日目。広さ約10坪のフロアに着席で40人くらい、ギュウギュウなれど充実の二枚組みLP試聴会。1曲ないし2曲かけるとご本人の曲解説が入る3時間超!
 アルバム制作は4幕の芝居をつくっていく感じ。C面までで一度終わって、D面は長いCODAのようなものになったっておっしゃってた。終演後、ご本人からナゴムのトートバッグ入りのレコードが渡される。
 聴きながら、KERAさんをもう一度描きたいと思った。で、レコードを渡されたときにお願いして、お写真をパチリ。KERAさん、ちゃんと覚えていてくれてて「あの連載、続いてるの?」とは月刊だったころの『美術手帖』に連載していた〈に・褒められたくて〉のこと。第16回目(2011年11月号)がKERAさんだった。「今度は版画じゃなく肖像画として描いてくるので、また見て下さい!」と、やや一方的に約束ス。
 

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