21 ~3人の午後~
「インス、怒ってるんでしょう」
スジンの昼食が済んで、食器を片付けたところで戻ってきた僕に、突然吐き出すように声を絞り出して言った。
「確かに私はちゃんと話すって言ったわ。でも、なぜ、あなたは何も言わないの?私のこと知ってるんでしょう?どうして責めないのよ!」
「・・スジン、君の口からちゃんと説明が出来るまでって待っていたんだ。警察からの話だけじゃなく、スジンから本当のことを聞きたかった」
「・・・・」
「スジン・・・何から聞けばいい・・。初めて君たちの事を知った時は怒りに体が震えたよ。まさか君が・・裏切っていたなんて思わなかった。・・・いつからと聞くべきか?」
「・・・彼とは・・1年ぐらい前に仕事の関係で知り合ったのよ・・」
「・・・・」
「彼、あなたと違う魅力のある人で・・私・・惹かれていったのよ。だから・・・・」
だから?・・・それが理由?
「それで、彼を愛しているの?・・」
「・・こんな事、何を言ってもただの言い訳だけど、本気であの人を愛したわけじゃないわ。愛せる人じゃない。何故こんな事になったのか、わからないの。・・・本当よ」
「スジン、よく解らないよ。本気じゃなくて僕を裏切れたのは何故だ?」
「インス・・ごめんなさい・・・」
「僕の愛では物足りなかったのか?」
「そういうことじゃないわ!」
「・・・・」
「・・インス、本当にごめんなさい・・」
「・・・謝ってもどうにもならないことがあるよ」
スジンはぽろぽろと泣き始めた。
それからスジンは、言い訳とも懇願とも言いがたいことをずっと僕に聞かせていた。
僕の心はどこか遠くへ放り出されたまま、耳鳴りのようにスジンの声が響いてくるだけだ。
・・・スジン、今となっては、僕はこれ以上君を責めようとは思わないよ。責めることなんか僕には出来ないから。
僕が君と違うのは、本気で彼女を愛してしまったことだ。
今の君を見てると、傷ついているのがよくわかる。後悔していることも・・。
それでも、僕たちは・・・
「インス、愛しているのよ。信じて。愚かな女だって笑ってもいい。あなたを失いたくないの!」
君が叫んで、再び僕たちは向き合った。
僕の手を力いっぱいに掴んだスジンの体は震え上がり、全身で後悔していた。
こんな彼女を見るのは初めてだった。
彼女はいつもしっかり者で、頭も良くて、魅力的で・・・僕が心を許して、愛した人だ。目を閉じれば、あんなにも愛し合っていた日々が鮮明に蘇ってくる。
なのに・・・。
今、この手を僕が離したら彼女はどうなるんだろう・・・。
彼女の姿がゆらゆらと揺らめいて見えて、僕の目からは訳の解からない涙が出てきていた。
「スジン・・やめてくれ・・・」
・・・そんな君は見たくない。
僕はそう言うと、堪らなくなって彼女の手を離そうとしたが、スジンはさらに僕に抱きつくと泣き崩れていった。
僕は、彼女の体を突き放すことが出来なかった。
・・・キョンホssiの退院が決まったの。
ソヨンは直接インスに会って話したくて、2階にあるスジンの病室へと足を運んでいた。
・・・何て声を掛けたら?
・・・その前に気付いてくれたらいいけど、もしダメだったらメールをすればいいわ。
ソヨンはスジンに会うつもりもなく、というよりは会えないという気持ちが強かったのだが、近くに行けばインスにはきっと会えると思っていた。
2階の病棟は、3階のキョンホの部屋と一緒で4人部屋だった。
スジンの病室の入り口には4箇所名前が書けるようにスペースがあったが、書かれていたのは『イ・スジン』の名前だけで、実質、個室と一緒だった。
2階の廊下は昼食後だったせいか、ほとんど人が歩いておらず、ソヨンの足音だけが静粛の中を犯す侵入者のようだ。
ソヨンが病室の近くまでやってくると、ドアが少し開いているのがわかった。
インスの存在を確かめるように遠くから中をうかがってみる。
・・・居るの?
そのとき、ソヨンの耳に初めて聞くスジンの声がした。
「・・・インス・・・ごめんなさい・・・」
「・・・謝ってもどうにもならないことがあるよ」
インスssi、居るんだわ・・と思ったと同時に、彼らの会話がソヨンの体をそこに縛り付けて、侵入者に対する仕打ちが始まった。
--------------------------
今年に入って、今 2度目の風邪を引いてます。
2回とも咳がひどい風邪のようで・・喉が痛い。
巷はインフルエンザが流行っていて学年閉鎖もよくききます。
私のはただの風邪なのでちょっと安心かな

皆さんも、これからが風邪の本番シーズンなので、どうかご自愛をくださいね