神奈川県清川村煤ケ谷・八幡神社の額束
金翅集落を見下ろす高台に建つ八幡神社の社殿横に、かつて鳥居に付いていた額束(がくつか)が置かれていました。
地面に置かれた額束を眺めていて、石にしては構造の複雑さに気づきました。普通額束は鳥居の中間、笠木と貫の間に挟むきょうに置かれますが、八幡神社の額束は人を見下ろすように傾きをつけて置くように作られています。額束をよく見ると一石が出来ていて、鳥居に取りつける部分に笠木にはめ込むような突起がついています。石鳥居ならではの固定される構造です。こういう造り方がいつごろから始まったのでしょうか。
鳥居の調査・研究の報告はありますが、額束を研究したものはあるのでしょうか。この傾きを付けた石造額束の報告もまだ見ていません。手元にある『鳥居』(注)に額束についての何も記載がありませんでした。そこに、この国最古の鳥居として山形蔵王の成沢の鳥居が紹介されていました。天仁二年(1109)平安時代末期の造立で、この鳥居には笠木と貫に挟まれるように額束がついています。笠木と貫に額束を固定する臍穴があるはずです。ただ見下ろすような構造にはなっていません。
(注)稲田智弘著『鳥居』2002年、光文社新書
(地図は国土地理院ホームページより)