偏平足

里山の石神・石仏探訪

里山の石神端書233 三界萬霊塔(福島県いわき市遠野)

2023年10月31日 | 里山石神端書

福島県いわき市遠野町川堀・観音堂の三界萬霊塔

 いわき市の遠野は、いわき市の湯本と内陸部の石川町を結ぶ御斎所街道にある山間の街。御斎所は遠野町にある御斎所山からの命名だそうで、このブログの石仏177御斉所山で案内しました。


 御斎所街道から北に外れた山裾に建つ観音堂。境内入口にそびえるイロハ楓の巨木が目印です。農作業をしていた男性の話では、御堂本尊の観音は戦後2度盗難にあい、そのたびに造り直したそうで、いまは施錠されて本尊は拝観できません。

 境内隅に「三界萬霊塔」に立っています。上部に刻された種字は阿弥陀如来(キリーク)、勢至菩薩(サク)、観音菩薩(サ)の阿弥陀三尊。
 「三界」は欲界(淫欲、食欲のはなはだしい世界)・色界(欲界ほどではないが色を有する世界)・無色界(精神のみが存在する世界)、萬霊はこの世の生命あるものすべての霊で、これらの供養を勧めるための石塔です。仏道修行ができない庶民にとって、供養が仏道へ入る一つの方法。供養について、藤井正雄氏の「供養のもつ仏教的意味」(注)で、供養は「サンスクリット語のプーシャナーの訳で「供給資養」を意味する言葉である。すなわち、仏・法・僧の三宝をはじめ、父母・師・長老・死者の霊などに対して供物を供給してこれを資養する行為」と解説し、心を込めて供養することが大切と説いています。
(注)藤井正雄著「日本人の先祖供養観の展開」名著出版『仏教民俗学体系4』昭和63年


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