群馬県沼田市利根町穴原・武尊神社の庚申塔
老神温泉から利根にぬける道にある穴原集落。そのはずれの武尊神社の境内に立つ庚申塔は上から「種字ア庚申供養塔」とあり、台座に「元文五庚申年(1740)」銘があります。
干支の庚申の年に庚申塔を造立する傾向はあります。しかし庚申の年は60年に一回ですから、一生に1回か2回しか巡ってきませんし、庚申講では庚申の年に関係なく庚申塔を立ててきました。庚申塔を立てる理由を大阪市の四天王寺庚申堂所蔵の「庚申縁起」からみてみましょう。
造立する目安として縁起には「一座と申は三年に十八度なり、両三年目には供養いたずべし、供養といつぱ道のほとりに塚をきつき四方正面の卒塔婆をたて」とあります。庚申の日は年6回、これを3年続けて18回の一座、一座がすんだら供養塔を造立することを勧めています。座は祭神や祭祀組織の数え方で、山などは神が鎮座しているので座とする数え方もあります。
庚申の行事は、自分の悪事を天帝に知られたくないための行いでもありますが、卒塔婆を立て「往来の旅人にいたるまで是を施し、外聞たしなみ懶怠なくまち奉れば七難即滅七福即生といふ事有」と庚申の功徳を説いています。
庚申塔がいくつも立っている光景はよく見ます。その造立背景の一つが庚申縁起にある供養塔の勧めなのでしょう。
庚申塔といえば猿です。その猿が武尊神社にあります。一つは社殿正面の虹梁の上で屋根を押さえる猿。もう一つは社殿脇の虹梁に彫られた斧で木を切る猿です。反対側の虹梁には餅を搗く兎です。
(地図は国土地理院ホームページより)