神奈川県山北町大蔵野・長光寺の唯念名号塔
大蔵野は山の斜面にあり、段々畑と坂道からなる集落です。そのため曹洞宗長光寺の境内も狭く、墓地は少し離れた山の斜面を削って造られました。何もないと思った境内奥に名号塔と庚申塔がありました。
名号塔の名号は仏・菩薩の名。とくに南無阿弥陀仏の六字名号を刻んだものを名号塔とすることが多い。長光寺の名号塔には丸みのある豪快な文字で「南無阿弥陀仏」、下に「唯念」の花押。これは丹沢の西の山中、静岡県小山町の奥の沢を拠点に駿河・伊豆・相模一帯で念仏布教をした唯念(1826~80)の唯念名号塔です。
庚申塔は笠が失われているが、これは笠付角柱型といわれる庚申塔。正面と左右脇に猿が刻まれているものです。正面には「過去心不可得」銘。仏書によると、金剛経のなかの三世心不可得の一つのようです。残る二つは「現在心不可得 未来心不可得」です。金剛経は特に禅宗で読誦されている経典で、この偈頌がある庚申塔が禅宗の寺の境内にあるのは、曹洞宗であるこの寺の僧侶の指導があったためと思われます。
(地図は国土地理院ホームページより)