青木村田沢温泉・薬師堂の子抱地蔵
温泉のある小さな村・青木村。田沢温泉の石畳を歩いて行くと、路傍に文字の道祖神が立っていました。青木村の道祖神は文字塔が多い印象です。
路地には「天津久米神」の石塔も。天津久米は、古事記の瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が天孫降臨されたときに護衛した神。この神を祀る神社は少ないようです。石塔も初めて見ました。
温泉街の道の先の高台に建つのが薬師堂です。
温泉には決まって薬師堂があります。薬師の石仏を祀る温泉も多くあります。その始まりの一つは、兵庫県の有馬温泉です(注)。かつて有馬温泉を経営していたのが温泉寺で、寺は開基の行基と再興の仁西も祀られています。寺が災難にあうたびに再興の勧進が行われ、このなかで行基の開湯伝承と仁西の再興伝承で、これが各地のお温泉に定着していたようです。
薬師堂の境内に子供を抱く地蔵が鎮座していました。三角おむすびのような顔で笑うなんとも人間臭い地蔵菩薩です。子供も同じ顔で、地蔵が持つ宝珠に手をのばす微笑ましい姿です。提灯を吊り下げるような立派な屋根もおしゃれです。
(注)西尾正仁著『薬師信仰-護国の仏から温泉の仏へ-』平成12年、岩田書院
(地図は国土地理院のホームページより)