里山の石神端書95 上市町大岩・日石寺の磨崖不動明王
日石寺の磨崖仏大岩不動は富山を代表する石仏です。何度も写真で見ましたから、その姿は目に焼き付いていまして、場所は洞窟の中と勝手に想像していました。
ところが驚いたことに磨崖仏は本堂の中にありました。磨崖仏だけ切り取った写真からは、本堂内ということにはまったく気づきませんでした。
大岩山日石寺は大岩不動として知られた立山や剱岳を行場とする行者の修行地で、富山を代表する山岳寺院です。不動明王磨崖仏は剱岳の本地仏ともされてきました。
その不動を中央に、向かって右から衿羯羅童子と阿弥陀如来左、左から制 迦童子と僧座像。奈良時代に不動・衿羯羅・制 迦が彫られ、平安時代に阿弥陀・僧が追刻されたと案内されている磨崖仏です。制 迦童子の顔がほとんどなくなっているのは、戦国の天正年間(1585ころ)に上杉勢との戦いによる火災での傷跡と、これも寺の案内です。
毘沙門天を篤く信仰した上杉謙信でしたが、この時代は養子の景勝のときで信仰心も薄れていたと思うしかありません。戦国期は武装した寺院の僧兵が、権力者と戦いあるいは利用された時代でもありました。
三重の塔に向かう石段脇に美しい観音石仏が並んでいました。
(地図は国土地理院ホームページより)