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あらためて家を出ると、門を出たところにエンジンを回したままのジープ・ラングラーが止めてあった。アルカードのお気に入りの意匠なのか、黒い車体のフロントフェンダーに炎の様なパターンの真っ赤なカーボンシートが貼りつけられている。
左ハンドル車なので、アルカードは左側の席に座っている――助手席側に廻り込んでドアを開けると、意外なことに車内に流れているのはデーモン閣下の歌声だった。聖飢 . . . 本文を読む
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「行ってきまーす」 誰もいない廊下にそう声をかけると、リビングからいってらっしゃーいという間延びした返事が返ってきた。
たぶん返事をしたのは、義兄と一緒に昨晩家に泊まっていた陽輔だろう――実家住まいの陽輔はともかく戸籍上神城恭輔の住所はこの家なので、『一緒に泊まっている』という表現にはいささか語弊があるが。
陽輔自身は野球少年なので、もうじき家を出てひとりで自宅に帰るだろう― . . . 本文を読む