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地上十階建ての赤煉瓦の外装のマンションの屋上に降り立って、彼は背後を振り返った。チヨダ区フジミのクダン議員宿舎から、そう離れてはいない――主である吸血鬼アルカードの代理でここまで来たわけだが、さて、どうしたものか。
せっかく久しぶりに本体から『分体』したわけだから、どこかそこらへんで適当に遊び歩いていきたい気もするが――
「――まあ、仕方が無いか」
声に出してそうつぶやいて . . . 本文を読む
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駐車場まで戻ってきたところで、足を止める――先を歩いていたテンプラが、何事かとこちらを振り返った。手にした綱《リード》を軽く引くと、ウドンとテンプラが足元に寄ってきて――ちょうどそのタイミングで駐車場から出てきた真っ赤なダイハツ・コペンが、彼らが戻ってきた道を走り去っていった。
青い空、白い雲、曲がりくねった海岸線の道路に真っ赤なオープンカー。いいセンスだ――惜しむらくはビー . . . 本文を読む