この地に都会から越してきたのが、子供の新学期に合わせてちょうど今頃の季節。
ようやくスイセンの花が咲き始めた晴れた日に、裏の小川沿いの雑木林に足を踏み入れると、今まで見たことがない小さな白い花が咲いていた。一輪だけぽつりと咲いている花もあるが、いくつか寄り添って小さな群落となって咲いている花もあった。
家に帰ってから、花の名前を調べると、「キクザキイチゲ」という花であることがわかった。まるで菊のように見える一輪花であることから、「菊咲一華」と命名されたとのこと。また、その白い「花びら(花弁)」のように見えていたのは、実は「萼(がく)」なのだそうだ。
花は、朝の早い時間とか、曇った時にはうなだれながら半分くらい閉じていて、燦々と日光がそそぐときは、ひまわりのように嬉しそうに大きく花を広げている。
花は長くは咲かない。せいぜい1週間ほどだろうか。そして、5月の連休明けの頃に雑木林の木々の葉が広がり始め、林の中の日光が翳りはじめると、いつの間にか葉も姿を消してしまう。そして次の春がくるまで、じっと地下で命をつないでいる。
このキクザキイチゲのように、春先のほんのいっときにしか、姿を現さない花々は、「スプリング・エフェメラル(Spring ephemeral)」・・・「春のはかなきもの、春の妖精」と呼ばれている。寒い冬が終わり、ようやく春が始まって早々、雑木林の木々の葉が茂り、日光が遮られるようになる前の、ほんのいっときに地上に姿を現し、花を咲かせ、すぐにまた消えて、地中でじっと次の春を待つ・・・・。
「そろそろかな・・・?:と、早春の晴れた日に雑木林に足を踏み入れ、「春のかなきもの、春の妖精」を見つけたときが、私にとって『春の訪れを感じる瞬間』。
ちなみに、花言葉は、「静かな瞳、追憶」。
[キクザキイチゲ:2018.4.3 那須高原]
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