先日、アカデミー賞受賞の「アーティスト」を観てきました。久しぶりに本場もののハリウッド映画の楽しさを味わった感じです。ただし、映画そのものはフランスの作品ですが…。最近のワイヤー吊りやCG、3Dに辟易している方々には必見だと思います。
オールドファンは「ライムライト」や「サンセット大通り」などをチョット思い浮かべながらでしょうし、時にはジーン・ケリーやフレッド・アステアのタップも思い起こしたりのひと時にもなるのではないでしょうか。私としては、上から階段を降りてくる過去の時代の男優と下から階段を上がって来た新人女優との行き違う階段の場面が素晴らしく印象に残っています。あの階段のシーンは二人の立ち位置を象徴するに相応しい良いシーンだと思います。
それと、とかく重苦しく、やり切れない気持ちになりがちな場面に現れるワンちゃんのアギーの活躍はまさに一服の清涼剤で、観ていてホットさせられます。CM用に訓練されたワンちゃんとのことですがまさに名演技を見せてくれます。
ところで、この映画の本当の主役は私は「描きホクロ(beauty spot)」ではなかろうかと観ていて思いました。ジョン・ヴァレンタインが口元に描いてくれたホクロをペピー・ミラーが有名になってもずーと描き続けたあのホクロにはヴァレンタインへのミラーの心情がしっかりと表れているように思われました。いかにも無声映画らしい表現だなと思えました。
そのうえ、白黒で無声映画なので一つ一つの場面で私の想像力がフル回転させられて、そう言う意味でも大変楽しい映画でした。
何はともあれ映画ファンにはお薦めの一編です。