ひまわりのちいさなつぶやき

日々思うこと、感じたことをつれづれなるままに綴っていきます。

挽歌21首

2023-09-19 20:30:00 | 短歌

 

 

           一冊の歌集を遺し友逝けり茶色の和紙の和綴ぢ仕立ての

 

           製本も和綴ぢも習ひ仕立てしとあとがきにあり夫君とともに

 

           お名前は本名ですかと尋ねたり幾度か会ひしのちの初校に(坂楓さん)

 

           はやばやとコスモスの咲く河川敷 小石のひとつひとつが熱い

 

           「秘密基地植物園カフェ」三人でランチタイムに行きしは二回

 

           「さみしいの」とよく言はれたりかはいらしい細く小さな身体でいつも

 

           坂さんの歌には愛があふれてたカラスに注ぐ目もあたたかく

 

           去年より陣地を拡げワルナスビ強き陽射しのなかに咲きをり

 

           坂楓さんとともに学びし講座あり四条烏丸 地下の十字屋

 

           白くつてコードの付いた補聴器の坂さんいつも一番前に

 

           洛西の松尾園芸まで行きて花を愛でつつワッフル食べき

 

           緑風に胸を広げて深呼吸「いいところだね」と坂さん言へり

 

           「三人でカラオケ行こ」とふ約束の二か月のちにコロナが流行る

 

           「きれいだね」と坂さんの声 美生さんの車から見る琵琶湖がひかる

 

           聖堂に入ればふはり吹いてくる包み込まれるやうなそよ風

 

           六月の第一日曜晴れの日に納骨のミサ執り行はる

 

           一年がまたたく間に過ぎけふの日は坂楓さんのために祈る日

 

           ご夫君のとなりにお骨は納められ恥ぢらひながら笑まふ坂さん

 

           若き日のかはいい笑顔の遺影なり わたしたちにも向けられてゐし

 

           カラス来て納骨の儀を見守りぬ愛してもらひしお礼のごとく

 

           青空とみどりの風に包まれてマリア・テレジア神の御許に

 

                坂楓さん   1929年~2022年  

                       2022年3月に脳梗塞で倒れ、6月に召される

                       2023年6月4日 納骨のミサが執り行われた

 

                         昨年の6月と7月、そして今年の6月に10首ずつ詠み

                         「塔」に投稿した中から、21首を採ってもらいました。

 


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