下弦の月を少し過ぎた月を見ました。
ピラティスに行く途中です。(9時前)
8月号の歌
灰色の街になりたるマリウポリ新緑の国に映像を見る
駐屯地のメタセコイアの新緑は明るき影を戦車に落とす
カミツレの歌のページに栞紐はさまれてありαの字に
ウクライナの都市の名前を覚えゆく攻撃受けしニュースのなかに
唇の皮を剥く手が止まりたり画面に並ぶ遺体の袋
東山を染めるベージュは橅の花 中島さんが教へくれたり
(永田淳さん選)
9月号の歌
取り直しの判定受けて笑みゐたりブルーのまはし付けし翔猿
とほくから名前を呼ばれてゐるやうな あぢさゐ色の雲見ゆる道
ぺしやんこの葉のあひだから伸びてきてヒオウギ咲くが待ち遠しかり
胸と裾にひまはりの咲くワンピース立ち姿よし電車のなかに
青と黄のビーズに作りしストラップ買うてカンパとしてもらひたり
婦人科を終へて決めたり薔薇を見に植物園まで足延ばすこと
(小林信也さん選)
10月号の歌
一冊の歌集をのこし友逝けり茶色の和紙の和綴ぢ仕立ての
製本も和綴ぢも習ひ仕立てしとあとがきにあり夫君とともに
お名前は本名ですかと尋ねたり幾度か会ひしのちの初校に (坂楓さん)
はやばやとコスモスの咲く河川敷 小石のひとつひとつが熱い
「秘密基地植物園カフェ」三人でランチタイムに行きしは二回
「さみしいの」とよく言はれたりかはいらしい細く小さな身体でいつも
坂さんの歌には愛があふれてたカラスに注ぐ目もあたたかく
去年より陣地を拡げワルナスビ強き陽射しのなかに咲きをり
(小林幸子さん選)