過日、NHKの「クラシック音楽館」でクリストフ・エッシェンバッハの指揮するシューマンを聴いて、彼が若い頃バイエル教則本を録音していることを思い出しアマゾンで入手しました。なんと50年前の録音でした。その頃の記憶が朧気でも残っていたことに我ながら驚きます(笑)。
CDには44番から最後の106番が録音されています。さすがにはじめの方はシンプル過ぎると判断されたのでしょう。
半世紀前の録音にも拘わらず、音質はかなりよいと思います。
バイエルは子供向けの予備入門編なので、いずれもシンプルな短い曲ですが、エッシェンバッハは正面から取り組んで、隅々までとても丁寧に弾いています。子供用だからといって一切手抜きなしで、良質という感じを受けます。大人入門者にとっては聴き甲斐がありますね。
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いずれの曲も遅めなのですが、なかには74番などおやっと思うほど遅く感じられ曲もあります(ほぼ、グールド)。でも、この「遅さ」で弾くには相当のテクニックが必要なことが今の私には分かります。私は3連符が不揃いで音の大小も雑です。鍛錬しないとこうは弾けないと思います(反省)。
現在は速ければ速いほど好まれる傾向にありますが、この半世紀前のゆったりとした演奏を聴いてとても美しいものに感じました。これはバイエルの「子供の情景」ではないかとさえ思えるほどでした。∎
(追記)
エッシェンバッハのワンオペなので、連弾曲は生徒パートのみです(最初に空打ちが入ります)。もう一人ピアニストを用意すれば可能ですし、マイナスワン的な設定も可能だったのでしょうが、敢えて行わなかったのではないかと思います。虚心坦懐に単旋律を聴くのも勉強になるかも知れません。(とてもシュールに感じますが…)
また、全曲の解説が渡邊學而氏により書かれていますが、簡潔で当を得た説明は大人入門者にとても有益で有難いものです。
「バイエル・ピアノ教則本」(ピアノ・レッスン・シリーズ1);F. バイエル:バイエル・ピアノ教則本 第44番-第106番、W. A. モーツァルト:メヌエットヘ長調、R. シューマン:楽しき農夫.クリストフ・エッシェンバッハ、ピアノ.1974年録音、ユニバーサル ミュージック、UCCG-4572.