
女子挺身隊の調べものが一段落したので、少し頭を休めようかと図書館から借り出しました。もし、日本が降伏せず8月15日以降も戦い続けたらという世界を描いたSF作品です。
パラレルワールドというのか、タイムトラベルものというのか、本土決戦として地方での局地的な戦闘を描きながら、歴史を正しい姿に戻そうとする勢力との活動を描く形になっています。
主人公は、少年兵と思われる河野康夫で、御国の為には死を辞さない覚悟です。しかし、連合軍の艦砲射撃や上陸した部隊に圧倒される状況にいます。軍隊の主力は長野方面に後退しており、散発的なゲリラ活動も難しくなり山へ追い詰められていきます。
このような描写は、松代の大本営や少年兵の事実に基づいているものと思います。康夫の意識は、教育されたとおり、敵を滅ぼし御国を守ることに終始します。そのためには内通する(と思われる)人を殺害することさえ厭いません。それほど、「正義感」で貫かれていたのでした。
この世界にも「戦後」はやってきましたが、それは、康夫の世界とは正反対でした。あの「正義感=聖戦」はどこへ行ったのでしょうか。それを唱え、多くの少年、青年を死に赴かせた大人たちはどうしたのでしょうか。そういう問いを発しているように思えました。∎
小松左京著『地には平和を』(角川文庫)2019年6月刊(改版初版).