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ジャニーズ、特に嵐(相葉さん)をこよなく愛するチャミのブログ。みんな違ってみんなイイ。

舞台「ベッジ・パードン」感想

2011年06月21日 | 舞台
改めまして、金曜日に観に行った舞台「ベッジ・パードン」の感想です。

※ねたばれ満載ですので、これから観に行かれる方はご注意を。また、思いつくまま書いているので、内容に前後がありますのでご了承ください。


今年は三谷幸喜・生誕50周年ということで、新作舞台&ドラマを7本上演、放送するうちの3作目となるのが今回の『ベッジ・パードン』です。
(1作目の「ろくでなし啄木」は観に行きました。)

<ストーリー>
文豪・夏目漱石が、明治政府からの命を受け、文部省第1回給費留学生として、英国・ロンドンへと旅立ったのは、明治33年(1900年)のこと。出発直前まで、熊本第五高等学校(現・熊本大学)で教鞭をとっていた漱石(本 名:金之助)は、この時すでに33歳。

身重の妻・鏡子と幼子を残しての2年間の単身留学は、大きなカルチャーギャップと生来の神経症的な性質もあいまって苛酷極まりないものであった・・・・・・という定説だが、彼がロンドンで綴った文章には、度々<ベッジ・パードン>なる女性が登場する。下宿の使用人だっという実在の女性ベッジ。
慣れない異国で孤独を感じる漱石は、同じく差別を受けながらもひたむきで明るいベッジに心惹かれていく・・・。

三谷さんらしく、全体的にはコメディタッチで笑いをふんだんにちりばめた会話劇なのですが、後半は一変して悲恋物の人間ドラマを描いており、今までの三谷作品とは少しカラーが違う作品となっています。

物語は金之助が下宿先に到着するところから始まります。
下宿先のアパートは元教師の妻と夫という典型的な英国人とおぼしき夫婦が経営し、もうひとりの日本人留学生・惣太郎(大泉洋)や、身の回りの世話をしてくれる小間使いアニー(深津絵里)、口のクサイ家主の飼い犬が住んでいます。

もともと英語教師ではあったものの、イギリス英語に慣れない金之助は、人種差別や言葉の壁も相まって、なかなか英国の暮らしを楽しむことができずにいます。

演じる野村萬斎さんは、新作の現代劇に出演するのは初めてなんだそう。
口ひげを生やし、フロックコートに身を包むその姿は、若々しくスマートな紳士と言った感じですごく素敵。

内向的な性格だったり、理屈っぽいしゃべり方が自分が描いている漱石のイメージにぴったりでした。
フィールドは違えど、狂言師として第一線で活躍される萬斎さん、声の強弱の付け方、芝居の間、佇まいなど、すごく上手な方なんだな~と改めて思いました。

中盤から妻がいる身でありながら、ベッジを愛してしまうという、普通に考えたら不届き野郎な金之助ですが、誠実でまっすぐで、切なげな表情を浮かべる萬斎さんを見てしまうと、なんて可愛い人なんだ!しょうがないな~って思うから不思議。


同じ下宿先の日本人、親の事業のロンドン支局で働く惣太郎は快活で、英語も達者。お調子者だけどなにかと漱石を気にかけ、楽しませようとします。

演じるのは大泉洋。
最近では三谷作品「わが家の歴史」のつるちゃん役の好演が印象深いです。
なんと、自身の劇団以外の舞台に客演するのはこれが初めてなんだそう。

以前から舞台の大泉洋を見てみたい!と思っていたので、ようやく念願が叶いました。
舞台上の洋さんは、TVで観るよりかっこい!背が高くてスタイルがいいから舞台映えするんですね~。
お調子者のキャラクターだけに、よくしゃべること。大泉洋節炸裂で、彼の言動一つ一つが面白くて前半は笑いっぱなしでした。

そんな惣太郎、実は日本語だと秋田弁が抜けないのが恥ずかしくてコンプレックスをぬぐうために英語を勉強したという経歴の持ち主。
だから金之助と日本語で会話する時は秋田弁になっちゃうのだけど、面白すぎて大爆笑!

惣太郎、実はただの明るいいい人じゃなくて、あとで金之助に恨みを持ってて、裏切ることになるのですが、その理由が「金之助にはセンスオブユーモアがあるから」っていうんだから笑ってしまいます。(くだらない理由ってこと)
完全に三谷さん、アテ書きしたなって思います。ほんと、大泉洋は最後まで大泉洋でよかったです。


小間使いのアニーは、下町出身で訛りがひどく無教養だけど、働き者で明るい素直な女性。
夢の話を語るのがとても上手。
演じる深津絵里さんが、とにかく可愛い!!!
色が白くて、顔が小さくて、コロコロ変わる無邪気な表情、舌足らずな台詞の言い回し、全てが可愛くって、キャラクターに合ってて、文句なしでした。

「ものは知らないけど、バカではない」こういうキャラクターを体現するのって難しいと思うんですよね、深津さん、すごいです。

なぜか彼女の前では、気負わず英語を話せる漱石は、いつも“I beg your pardon?(失礼ですが、なんとおっしゃいました?)”と聞き返してくる彼女に、その発音が「ベッジ・パードン?」と聞こえることから”ベッジ”というあだ名をつけます。

そして金之助とベッジはコンプレックスを持つ同士、心を通わせて行くんですが、金之助には妻がいるのでどんどん切ない展開になっていきます。
後半、金之助に夢の話は聞きたくないと言われ、涙ながらに自分のこれまでの辛い人生と、自分から夢の話を取ったらなにもない、と切々と語るシーンは悲しくて胸がつぶれそうでした。

妻子がいる金之助のことを想い、自ら身を引き、どうしようもないけど憎めない可愛い弟のために身を売る覚悟をして出て行くベッジ・・・。
その後惣太郎から体調を崩し、病院のベッドで金之助から教わった日本語の歌を歌いながら亡くなったということを聞かされます。

そして、ベッジと別れたことを後悔し部屋に引きこもる金之助のもとに、再びベッジが表れ、金之助を優しく励まし「今度はあなたの夢を聞かせて」と語ります。
そして、そのことを受けて、金之助は処女作、「吾輩は猫である」を書くことを決めた・・・というところで幕が閉じます。

ラストは少し暗いし、決して後味はよくはないのだけど、人間の嫌な部分をきちんと描いたことで、このイギリスの生活があったからこそその後の漱石の輝かしい作家人生を作った、という流れがすごく腑に落ちるというか、しっくりはまっててすごく胸に響きました。

ラストシーンの金之助が机に肘を突き、顔を傾げる姿は写真で観る漱石そっくりのポーズだったっていうところも、三谷さんらしいニクイ演出だと思いました。


紹介するのが後になってしまいましたが、このお芝居で重要な役割を果たしてるのが浅野和之さん。
キャストは5人なので、足りない配役は全て、浅野さんが1人で演じるというすごいことをやってのけておられます。

その数は11役。男性、女性、老人、刑事、泥棒、大学教授、そして犬まで!!あと、ビクトリア女王にも笑っちゃった!(いきなりぼーっと出てくるんだもん!)
もちろん早替わりもするので、さっき刑事になってたと思ったら、すぐさま泥棒になってたりして、その素早い早替わりと奮闘ぶりに客席騒然、拍手喝采でした。犬のミスタージャックが可愛かったな~。

で、面白いのが、イギリスの生活にストレスを感じた金之助が「イギリス人がみんな同じ顔に見える・・・」ってつぶやくのだけど、イギリス人を全部浅野さんが演じているのだから当たり前なんですよね(笑)

キャストの中で一番お年の浅野さんにこんなムチャブリに近い芝居させるなんて、三谷さん、さすがです。
浅野さんが影の主役と言ってもおかしくはない!と思います。


最後に、アニーの弟役の浦井健治くん。
お姉さんに甘えるだけ甘えて、悪さばかりしている困ったグリムズビー。
髪の毛ボーボー、鬚を生やし、恰好もボロボロ、こんな役をミュージカル界の貴公子浦井君が何故演じる!?信じられない!

って思ってたんです。だけど、最近の浦井君ってストレートプレイにも挑戦してるみたいで、演技もすごく自然で上手でした。

そしてやはりミュージカルスター、歌を歌うシーンでは美しい歌声を披露してくれました。出来ればもうちょっと聞きたかったな。

この弟が金之助を巻きこんで引き起こす銀行強盗のシーンは、三谷作品らしいドタバタ劇となっていて、お腹をかかえて笑う位、すっごく面白かったです。

2年間の漱石の留学時代。日本に充てた手紙にたびたび出てくるベッジという女性に焦点を充て、ありそうでなさそうな悲恋物語を三谷さんらしいユーモアを交えながら描いた舞台「ベッジ・パードン」、笑って泣いて、怒って、悩んで、観ながらいろんなことを考えさせられたお芝居でした。

上演時間は約3時間半と、ストレートプレイとしては長かったと思うのだけど、三谷さんの素晴しい脚本と、5人の実力派キャストの演技に惹きこまれてしまい、長いなんて全く感じませんでした。

最近舞台を観て、すぐさまもう一度観たい!って思える作品ってあまりないのだけど、「ベッジ・パードン」に関してはチケットさえ取れれば是非もう一度観たいな~。

三谷さん、今年舞台はあともう一本「90ミニッツ」という作品が控えているようです。こちらも、是非観に行きたいと思います!

あと今年公開の映画「ステキな金縛り」も楽しみです!


「ベッジ・パードン」
世田谷パブリックシアター 2011年6月6日(月)~7月31日(日

作・演出:三谷幸喜
キャスト:野村萬斎 深津絵里 大泉洋 浦井健治 浅野和之

(配役)
夏目金之助・・・野村萬斎
アニー・ペリン(ベッジ)・・・深津絵里
畑中惣太郎・・・大泉洋
グリムズビー(アニーの弟)・・・浦井健治
ハロルド・ブレッド/サラ・ブレッド/ケイト・スパロウ/ウィリアム・グレイグ
ハモンド牧師/セントクレア夫人/ビクトリア女王/ブラッドストリート警部
弾丸ロス/ミスター・ジャック(犬)/モラン大佐
・・・浅野和之

2 コメント

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一番好きな作品 (SwingingFujisan)
2011-07-21 21:08:26
昨日、見てきました!!
チャミ様のご注意通り、これまでご感想の拝読は封印してきました。
笑って笑って、泣きました。
三谷幸喜生誕50周年新作の中では一番好きな作品になりました。
ありがとうございました。
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よかったです! (チャミ)
2011-07-30 09:45:49
>SwingingFujisan様

コメントに気づかず、お返事遅くなってしまいすみません!
この作品は絶対ネタバレしないで行った方が面白いと思ったので、観劇楽しまれたようでよかったです!

私が観に行ったのはもう2ヶ月も前ですが、今思い出してもいい舞台だったな~って記憶がよみがえってきます。
私も最近観た三谷作品の中では一番好きな作品になりました!
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