
東京へ出かける用事があった。
認定補聴器技能士の資格取得のためのスクーリングと試験で二日間TOC有明(国際展示場付近)に缶詰でお勉強
新幹線の時間がぎりぎりなので万一間に合わないことを考えて翌朝帰ることに。
(ちょびっとだけ計画的犯行だったりして)
頑張った自分へのご褒美として(笑)江戸前寿司を食べに行った。
せっかく行くなら築地でしょう!
そしてせっかく行くなら一番人気店へ!
TRIP ADVISORトラベラーズチョイスで2014年の世界のベストレストランで日本一のレストランに選ばれたお店
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000275.000001853.html
築地市場の「寿司大」へ行ってきた。
徳島や九州へオーシャン第九フェリーで渡る時には、この築地市場を抜けて勝鬨(かちどき)橋を渡って行くのだが
自転車で通る度にいつも、並んでるこの店のことが以前から気になっていた。
ああいつか並んで食べてみたいなお寿司。ずっとそう思っていた念願の店である。
市場は5時からオープンなので早起きして歩いて行った。
到着は4時半だった。店の前には16人(一回に座れるカウンターが16席)並んでいて、第一陣には間に合わなかった。
築地6号入口の角から曲がったところに並んだ。勘定してみたら自分はちょうど暖簾から30番目。
まあ5時半には入れそうだ・・・と思ったのは大間違いだったことをこのあと知るが。
いったい一番の人は何時から並んでるんだろう・・・。東京とは言え夜明け前は寒くて、このために持っていったモンベルのダウンを着込んで正解だった。
5時ちょうどに16人が入店。ほどなくして店前のブロックゾーンへ移動するように言われた。
暖簾越しにお客さんの笑顔と板前さんの笑顔が見える。ニコニコしてるなあみんな。
だいたい食堂って普通30分か40分でお客さん入れ替わるものだって思ってたからまあ、5時半か40分には入れるかなと思っていたが
自分の番が呼ばれた時には6時半だった。
つまりみんな1時間から1時間半は店内に滞在してることになる。
なんだよー後ろに何十人も、いやもしかしたら100人以上並んでるかもなのにとっとと食ってとっとと出ろよー!ってその時は思ってた。
並んでる時に後ろを見に行ったらこんなだったもの!
でもこの並んでる時に感動したのは店から出てきた接客係の女性だった。
ターレー(ターレット電気自動車)の邪魔にならないように整然と並ばせたり、紙コップにお茶を入れて寒いのにありがとうと振舞ったり。
言葉使いが丁寧で外国人にもわかりやすく、しかもきっぱりとした口調で仕切っていた。
はい、あなたは何人?おまかせでいい?それともおこのみにする?と座らせる順番と注文を聞いて回っていた。
外国人には苦手なものある?とか寿司ネタの説明をしたりだとか。
並ぶのが好きな人はいないと思うが、不思議と行列が苦じゃなかった。たまたま隣の方は常連さんだったのでお話をいろいろ教えてくださって
他にもおいしい店たくさんあるんだけど、寿司大が一番だね、ロンリープラネット見て外国人こんなに来るようになったんだね、とか
11月で移転だけど今度のとこはどうなっちまうんだろうね、とかとかモロモロ。
寿司大の隣は珈琲店だったが、入店する人は市場の関係者が多くゴム長と前掛け姿の率が圧倒的に高くて面白かった。
向かいの店は履物屋さんで、ゴム長やゴム手袋、前掛けや帽子など市場ならではのものが並んでいたが、
そこに混じって漢字入のTシャツ(鮪、鰹、築地、寿司)が天井からぶら下がっていて
ダンボールにマジックで書かれたDO'T TOUCHの赤文字がやけに目立っていた。
常連さんが言うように、寿司大に並んでる人の半分(もっとかも)は外国人だった。中国人だけではなく、多国籍でいろんな国の言葉が飛び交っていた。
横入りしそうな外国人に「あっちに並ぶんだよ」と教えてあげたかったがうまく言葉が出なくて、前の列の東南アジア系の方が伝えてくれた。
そのとき!前方から、陽気なイタリア系男性がニコニコ近づいてきた!
半分食いかけのいちごのパックを差し出して、これあげる!食べなよ!甘いぜ!とか(たぶんそんな言葉だった)妙にテンションが高い。うーやべえぞこりゃ!
ノーサンキューって断ったが、その後も並んでる人みんなに声を掛けてたから、きっと、いちごあげるから順番を変えてくれって言ってるんだろうなあ。
その姿がなんともおかしくてみんなケラケラ笑ってた。いちご(しかも食いかけの)じゃ何時間も並んでる行列の順番変われねえよー!
寿司大に限らず隣のとんかつ屋にも、何軒か先の寿司屋にも行列が出来始めてきて、よくテレビで見る築地の光景が目の前にあった。
ああ俺、築地にいるんだなあ、並んでてアホだなあと客観的に自分を見てひとりほくそ笑んでいた。
「さあどうぞー!お待たせしました~!」
例の気が利く接客係りの女性に呼ばれていよいよ暖簾をくぐった!
と同時に満面の笑顔で!
「いらっしゃい!おはようございます!さあどうぞ!寒いのにありがとうございます!」
大将始め3人の板さんが威勢良く声をかけてくれた。
まるで馴染みの店へ来た時みたいだ。
例の女性にダウンを脱いで楽にしてゆっくりしてってねって声を掛けられカウンターの席に座った。
16人びっちりのカウンターは広くはないが隣の人との空間は丁度良く保たられてて嫌な感じは皆無だった。
寧ろ今まで一緒に並んでた仲間意識というか一体感のような程良い窮屈さが店内を支配していて心地よかった。
板前3人に対して16人の客、というのはひとりで5人ずつ相手にするというシステムらしかった。
大将は入り口付近にいてコーナーがあるので6人と差し向かっていた。
自分が座ったのは真ん中あたりで中央の一番若い板前さんの前だった。
担当の5人のお客さん全員と同じように話をしていて、常連さんには常連さんへの話題、外人さんには外人さんへの、そしてオイラには
どこからですか?と振られて福島だと答えると、あっ極楽湯行きますよ~との返事。
(極楽湯=全国規模のチェーン店で福島駅西口にあるスーパー銭湯)
なんでも奥さんが二本松出身らしく福島市へもよくいらっしゃるとのことだった。
何気ない会話の中にもユーモアとセンスがあって客商売はこうじゃないとなあって感心した。
なんかほんとうに居心地がよくて最初の一貫が出る前からもう幸せな気分になっていた。
築地の有名店だからきっと頑固な寿司職人が無言で寿司を出すんだろうと思ってたら大間違いだった。
不思議なのは・・・・
それまで何時間も並んでいたこと、のれんのあちら側に何十人もの人がいて中を覗き込んでること、なんか全部忘れてしまってたことだ。
のれん一枚
だけど
別世界だった。
終始笑顔で落ち着いた雰囲気。大将は指示は出しても店員に対して文句を言ったり偉そうな態度を示すことは一度もなく仕事もすっかり任せている。
和気藹々と店を切り盛りしていた。閉店後はきっとダメ出しやその日の反省など厳しい顔になるのだろうが、客の前で一切そういうのを見せないというのも素晴らしかった。
活きのいい板前さんが三人三様。どの席に着いてもハズレはないだろう。
三つほど隣の席にかなり顔を紅潮させた女性(たぶん第一陣で入店しその時点ですでに2時間は経過してて4合か5合は飲んでた?)が酔っ払って大将に絡んでたのだが、
迷惑がるふうもなく楽しそうにうまく冗談に変えて店内を和ませるようなトークをしていてさすが百戦錬磨。
その間も手を止めることなく、自分担当のほかの5人のお客さんとも話し続けていた。
ああ寿司屋ってこういうものなんだ、楽しいなあって初めて知りまたまた感動。
あれ?そーいえば
寿司の話全然してないぞ
えっとお待たせ!
突き出しは
たこの漬け?
しめ鯖
先に言っておきますが、醤油とかわさびとか自分で付けなくても、寿司にもう味付けがされててそのままパクリが一番うまかった。
シャリの温度、ネタの温度、塩加減山葵加減もそれぞれのネタに合わせてある感じで、そのネタの一番うまい状態で出してるんだと思う。
イカとかまだ生きてたもんなあ
この白子がまた絶品でした。すこし温めてあって口の中でとろ~~り。
臭みなんかまったくなくて甘かった。
はい、やっとお寿司出ますよ
一品ずつ産地やネタの説明もしてくれて親切
ビールは一杯だけであとは熱燗を何本かつけてもらった。
どのネタも新鮮なのは当たり前で、とにかくうまかった。
まぐろの漬けなんか、今まで食った中で最高だったなあ。
そんなに長居したつもりはなかったけれど店を出て時計を見たら1時間半も滞在してたことになる。
世の中にはこんなに並ばなくてももっと旨い寿司を食わせる店もあるかもしれない。
もっといいネタをふんだんに使って高級な寿司を楽しめる店もあると思う。
回転寿司だってコスパで考えたらなかなかやる店だってあるだろう。
しかし、これほど幸せな気持ちにさせてもらえる店はそうそうないと思う。
金じゃ買えないもの。変えられないもの。あるなやっぱり。
日本一に選ばれたのも納得のお店だった。
すっかり明け切った築地は青空が眩しかった。すごい人出でどの店の前にも行列が。
孫へ寿司のTシャツを買ったりテイクアウトの卵焼き食べたりしながら築地を出た。
後ろ髪を引かれる思いだったが東京駅から日常が待ってる福島へ帰った。
これ、食べログ?じゃないですが☆☆☆☆☆ですはい(笑)
ごちそうさまでした。
東京行ったらまた並ぼうかな。並んでしまうかもだな。
豊洲に移転して新しい店になっても、この幸せな店はきっと愛され続けることだろう。
内容とはぜーんぜん関係ないんですが帰りの新幹線の車窓見てたら
頭の中に流れてきた歌
幸せそうな人たち / 加川良
若い頃は ただそれだけで 全ての事がゆるされて
あやまちさえも美しく わがままであれば あるほどいい
幸せそうな人たちが 12月の灯りの下にいる
生まれた時から僕たちは 滅びていく道の上にいる
若い頃の ままであれと 少女のように少年のように
夢とうつつを並べ替えて えやみを覆い頬紅を塗る
幸せそうな人たちは 泣いて笑い花を咲かす
生まれた時から僕たちは 滅びていく道に花を飾る
青い春は石をはがし 赤い夏に石を投げた
白い秋は石を切り出し 黒い冬に石を敷く
幸せそうな人たちは 季節なべて唄い踊る
生まれた時から僕たちは滅びてゆく道を歩いてる
生まれたときから僕たちは 滅びていく道の上にいる
加川良さんが歌ってた大塚康弘さん作詞のこの歌。50過ぎてからだなあこの歌詞の意味がなんとなくわかるようになったのって。
青い春は石をはがし
赤い夏に石を投げた
白い秋は石を切り出し
黒い冬に石を敷く
でも石ってなんだろ
幸せになりますね。
しあわせしょくどう、みたいな感じでした