はりえんじゅの道

立ち止まっても歩いても・・何時までたっても見付からない・・・・

書体を変えてみた

2008-09-18 | Weblog
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      行乞記    種田山頭火

 
  このみちや
  いくたりゆきし
  われはけふゆく

  しづけさは
  死ぬるばかりの
  水がながれて


     九月九日 晴、八代町、萩原塘、吾妻屋(三五・中)

  私はまた旅に出た、愚かな旅人として放浪するより外に
  私の行き方はないのだ。七時の汽車で宇土へ、宿におい
  てあつた荷物を受取つて、九時の汽車で更に八代へ、
  宿をきめてから十一時より三時まで市街行乞、夜は餞別の
  ゲルトを飲みつくした。
  同宿四人、無駄話がとり/″\に面白かつた、殊に宇部の
  乞食爺さんの話、球磨の百万長者の慾深い話などは興味
  深いものであつた。

  
       九月十日 晴、二百廿日、行程三里、日奈久温泉、
       織屋(四〇・上)

  午前中八代町行乞、午後は重い足をひきずつて日奈久へ、
  いつぞや宇土で同宿したお遍路さん夫婦とまたいつしよ
  になつた。方々の友へ久振に――ほんたうに久振に――
  音信する、その中に、――
  ……私は所詮、乞食坊主以外の何物でもないことを再発
  見して、また旅へ出ました、……歩けるだけ歩きます、
  行けるところまで行きます。
  
  温泉はよい、ほんたうによい、こゝは山もよし海もよし、
  出来ることなら滞在したいのだが、――いや一生動き
  たくないのだが(それほど私は労(マヽ)れてゐるのだ)
  
      
 
  分け入っても 分け入っても 青い山   
   
  雨ふる ふるさとは はだしで歩く 
    
  ふりかへらない 道をいそぐ 
    
  すすきのひかり さえぎるものなし 
   
  岩かげ まさしく水が沸いている 
     
  ここで泊ろう つくつくぼうし             


      


                 
                                    種田山頭火 



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