□本日落語二席。
◆柳家喬太郎「寝床」(WOWOWライブ『日本最大の落語フェス『博多天神落語まつり』2022其の参)。
FFGホール、令和3(2022)年11月5日(第16回「博多天神落語まつり」※柳の会)。
◆五代目古今亭志ん生「五銭の遊び」(日本文化チャンネル桜『落語動画』)。
※公演情報不明。
これは、今から十八年ほど前に買ったDVDBOOK『志ん生復活 ! 落語大全集』第七巻で聞いたことがある。今回聞いたものと同じ音源だろうか。今度確認してみよう。ちなみに、DVDBOOKのほうは、昭和38(1963)年3月26日(第四十三回東横落語会/東横ホール)。のものである。
これは、入船米蔵が作ったものに初代柳家小せんが手を入れて「白銅」という題で、小せんが得意にしていたネタらしい。「白銅」は5銭銀貨のこと。川戸貞吉『落語大百科』によると、五代目志ん生は、この噺を初代小せんから習ったが、志ん生が演る時分には、白銅の5銭銀貨がなくなっていたので、「五銭の遊び」という演題にかえたとのこと。
5銭ばかりの金しか持たない男が、吉原へ行って、うまいぐあいに登楼できたという噺である。女郎に声をかけられて、ふところがさびしいから登楼をしぶる男に、女がいくら持ってるかと尋ねると、男は五本の指を広げた(ここはしぐさでそうしたようだ)。それを、女は、男が50銭持っているものと勘違いして、もうそれでいいからあがっておくれと言った。それで、男は、首尾よく5銭で登楼できたのだと(後々一悶着になるが)。
「ふところがさびしい」と言うところで、「もう、ふところから幽霊が出るくらいさびしいんだ」という志ん生のクスグリがおかしい。こういうクスグリはさすが志ん生。
さて、50銭でもいいと言った感覚はどんなものだろうと考えてみた。朝日新聞社刊『続続 値段の風俗史』によると、「芸者の玉代」という項目がある。戦争が激化して、花柳界が営業停止になる前の昭和11(1936)年、芸妓の玉代は3円50銭とある。
しかし、これは、ちゃんとした歌舞音曲に長けた芸者を置く、かなり格が高い店での料金だ。ずっと格式の低い店だと、他の噺等、もろもろのことを考えると、三分の一あるいはそれ以下ではなかった。してみると、うんと安い店になると1円程度か。
「五銭の遊び」に出てくる格式の低い楼の女は、今日はお茶を挽いてどうにもしかたがないから、それでもいいと言って50銭(と思いこんで)で男をあげた。だとするなと、通常の半額にしたということになる。だいたいそんな感覚か。
ちなみに、『続続 値段の風俗史』では、ビールのジョッキ一杯の料金が、昭和12(1937)年では25銭だとある。してみると、ビールジョッキ二杯分で女は男を登楼させたのか。
◆柳家喬太郎「寝床」(WOWOWライブ『日本最大の落語フェス『博多天神落語まつり』2022其の参)。
FFGホール、令和3(2022)年11月5日(第16回「博多天神落語まつり」※柳の会)。
◆五代目古今亭志ん生「五銭の遊び」(日本文化チャンネル桜『落語動画』)。
※公演情報不明。
これは、今から十八年ほど前に買ったDVDBOOK『志ん生復活 ! 落語大全集』第七巻で聞いたことがある。今回聞いたものと同じ音源だろうか。今度確認してみよう。ちなみに、DVDBOOKのほうは、昭和38(1963)年3月26日(第四十三回東横落語会/東横ホール)。のものである。
これは、入船米蔵が作ったものに初代柳家小せんが手を入れて「白銅」という題で、小せんが得意にしていたネタらしい。「白銅」は5銭銀貨のこと。川戸貞吉『落語大百科』によると、五代目志ん生は、この噺を初代小せんから習ったが、志ん生が演る時分には、白銅の5銭銀貨がなくなっていたので、「五銭の遊び」という演題にかえたとのこと。
5銭ばかりの金しか持たない男が、吉原へ行って、うまいぐあいに登楼できたという噺である。女郎に声をかけられて、ふところがさびしいから登楼をしぶる男に、女がいくら持ってるかと尋ねると、男は五本の指を広げた(ここはしぐさでそうしたようだ)。それを、女は、男が50銭持っているものと勘違いして、もうそれでいいからあがっておくれと言った。それで、男は、首尾よく5銭で登楼できたのだと(後々一悶着になるが)。
「ふところがさびしい」と言うところで、「もう、ふところから幽霊が出るくらいさびしいんだ」という志ん生のクスグリがおかしい。こういうクスグリはさすが志ん生。
さて、50銭でもいいと言った感覚はどんなものだろうと考えてみた。朝日新聞社刊『続続 値段の風俗史』によると、「芸者の玉代」という項目がある。戦争が激化して、花柳界が営業停止になる前の昭和11(1936)年、芸妓の玉代は3円50銭とある。
しかし、これは、ちゃんとした歌舞音曲に長けた芸者を置く、かなり格が高い店での料金だ。ずっと格式の低い店だと、他の噺等、もろもろのことを考えると、三分の一あるいはそれ以下ではなかった。してみると、うんと安い店になると1円程度か。
「五銭の遊び」に出てくる格式の低い楼の女は、今日はお茶を挽いてどうにもしかたがないから、それでもいいと言って50銭(と思いこんで)で男をあげた。だとするなと、通常の半額にしたということになる。だいたいそんな感覚か。
ちなみに、『続続 値段の風俗史』では、ビールのジョッキ一杯の料金が、昭和12(1937)年では25銭だとある。してみると、ビールジョッキ二杯分で女は男を登楼させたのか。