竹林亭白房

鉄瓶「替り目」★落語

□本日落語五席。
◆笑福亭鉄瓶「替り目」(ABCラジオ『日曜らくごなみはや亭』)。
神戸新開地喜楽館、令和5(2023)年9月6日(マルエスpresents「神戸新開地・喜楽館AWARD2023」予選第二日)。
一時期は、「替り目」というと、ほとんど落げまで演らない、つまり「替り目」が出てこない「替り目」を演るのがふつうになっていたようだが、今は逆にきっちり落げまで演る「替り目」がスタンダードになりつつあるような気がする。
もしかして、落げまで演らない「替り目」が主流になったのは、五代目古今亭志ん生の影響が大きかったのだろうか。

鉄瓶の「替り目」は七年前に聞いたことがある。口演情報は、平成28(2016)年11月10日の第368回「NHK上方落語の会」(NHK大阪ホール)である。このとき、鉄瓶は、一時期の主流だった酔った亭主が言う「嗚呼、おまえ、まだそこにおったんかい!」で切る型かと思いきや、さらにさきまで続けた。しかし、所謂「替り目」の落げまで演るでなく、女房がよろける展開を語り、「私も今の言葉で酔ってもうたわ」という一言で落げた。そのときは、なんだか中途半端な切りかただなと思ったものだ。

でも、今回はきっちり「替り目」で落げるかたちを演じてすっきりした。実のところ、この噺を「おまえ、まだ……」と切るのは、たんに時間的な問題ではないような気がしてきた。志ん生以来、そこで終えるのがわかりやすいという先入観が、代々の演者に生じていたせいではないのか。
今日聞いた鉄瓶の「替り目」もほぼ二十分程度である。別にこの噺は、落げまで演ったからといって、さほど長講というネタではない。演りようによっては、コンパクトに収まる落語なのである。今後も、この型が常態化すればよい。

ちなみに、今日聞いた公演音源では、鉄瓶が「おまえ、まだ……」と言い終えた瞬間、何人かの客が拍手していた。たぶん「替り目」はそこで終るものだと思いこんでいる半可通の客だったのではないだろうか。落語会には、しばしばフライング拍手をする客がいる。これは注意したいものである。人の噺は最後まで聞くこと、か。

◆笑福亭たま「あこがれの人間国宝」(ABCラジオ『日曜らくごなみはや亭』)。
神戸新開地喜楽館、令和5(2023)年9月11日(マルエスpresents「神戸新開地・喜楽館AWARD2023」予選第三日)。

◆三代目柳家権太楼「青菜」(衛星劇場『衛星落語招待席』)。
紀尾井小ホール、令和5(2023)年5月26日(紀尾井らくご「柳家権太楼独演会」)。

◆七代目笑福亭松喬「饅頭怖い」(ラジオ関西『内海英華のラジ関寄席』)。
神戸新開地喜楽館、令和5(2023)年8月27日収録(昼席公演)※10月14日OA。

◆『笑点』大喜利:春風亭昇太(司会)/三遊亭小遊三・春風亭一之輔・林家たい平・林家木久扇・三遊亭好楽・桂宮治(日本テレビ『笑点』第2882回)。
後楽園ホール、令和5(2023)年10月15日OA。
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