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聴刻堂日乗

枯れることのない才能

NHK MUSIC SPECIAL を観た。
坂本龍一のピアノソロ。

坂本氏は癌のステージ4だと言う。
体力が落ちてコンサートは無理。
1曲ずつ収録して編集した映像だ。

演奏はモノクロの映像。
ピアノを弾く指が痩せて痛々しい。
記録として残すための映像のよう。

YMOの時から聴いていた。
坂本氏とほぼ同時代を生きてきた。
自分はきっと泣くだろうと思った。

The Last Emperor
Merry Christmas Mr.Lawrence
思い出深い曲が演奏される。

「凄い才能やのに惜しいね」
一緒に観ていた伴侶が言った。
生命に貴賤は無いとは言え同感。

入院中は雨の音を聴いたと言う。
そしてスケッチをしたのだと言う。
絵ではなく音楽のスケッチ。

そうしたスケッチが溜まっている。
それらを完成させアルバムを出す。
坂本氏の才能は未だ溢れ続けてる。

どちらが不幸なのだろう?
生きながら才能が枯渇するのと。
才能は溢れつつも肉体が終るのと。

不謹慎にもそんなことを考えた。
才能なんて持ち合わせないけれど。
自分なら後者を選びたいと思う。

番組が終わるまで涙は出なかった。
才能が枯れることのない姿。
そこに悲哀や不幸の影はなかった。

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