「午後の曳航」。
三島由紀夫の小説だ。
橋本治だったかが絶賛していた。
この小説は日本語が美しい、と。
だから読んでみた。
実際どこら辺が美しいのか。
あまりピンと来なかった。
ただ、月光を浴びた人の肉体を
描写するような箇所があり、
実物を見るよりも美しいイメージ
を浮かべられそうだった。
小説には、物語を伝えるための
日本語表現と、ある情景を描写
するための日本語表現とがある
のかもしれない。
日頃、文章を読む時には、いかに
物語を追って読んでいることか。
改めて気が付いた。
そう言えば、情景の描写などは
冗長なものとして読み飛ばして
いるような気がする。
文学というものは、物語とともに、
情景の描写も味わって楽しむもの
なのだな。そして両方を読ませる
のが作家の力量なんだな。
そんなことを気付いた一冊でした。