†Bobby† ※ネタバレ
ロバート・ケネディを讃える作品なので、ボビー。
ロバートと言えば、これまでに記憶に残っているのは
マクラレン委員会とか、マルセロ国外追放とかw
そう言うネタばかり印象付いている。
1968年、6月、暗殺されるロバート上院議員。
彼は選挙で、アンバサダーホテルへとやって来る。
映画は、ケネディが来る事になっているホテルのレストラン厨房で勤める
メキシコ人や、黒人、そしてその上司、更にホテルの元ドアマン、
ホテル専用の美容師、ホテルに唄いに来る歌手など、
様々な事情で、この日アンバサダーホテルに集まっている人々が
ピックアップされ、その夜ケネディが撃たれる瞬間へと向かって行く。
ケネディと言ったら、ジョン・F・ケネディの方がどうも印象に残っており
弟の方はあまり印象に無いかもしれない。
それでも、この映画を観ると、ああ、アメリカは勿体無い人を
失ってしまったなぁと言う気持ちになってしまう。
国民の多くから愛され、また希望にもなっていた、と言う点が
とても伝わってくる。
彼の実際のニュース映像やスピーチ等を登場させているだけで
特に伝記映画でも無いのにだ。凄く見せ方が上手いと言うか。
彼のファンでなくても、魅力的に映るケネディが本当にこの時代の
アメリカを救えそうな希望の様に見えてくる。
そして、この時代のアメリカの様子、相当病んでるなと言う印象。
さて、この映画もまた出演陣が豪華で、好きな人からピックアップすると
厨房マネージャーはクリスチャン・スレーター。作品の最初で彼は、
上司から、人種差別を批判され首にされてしまう。そんな事をする人だが
物凄く嫌な男と言う風に映らない。あたしが好きな役者だからだろうか?
普通にしている分には、愚かな行為が目立つとかでもない。
更に彼は、首にした上司の秘密を知る。それは、上司の浮気である。
その事を、同じホテル内で勤務する、美容師である彼の妻に告げ口するのだ。
姑息な事をする嫌な奴!なのに、不思議と悪い奴に見えて来ないのだから
本当に不思議w
その美容師役はシャロン・ストーン。他、ベトナム戦争行きを逃れるため
偽装結婚する兵士役にイライジャ・ウッドや、その妻となる役に
リンジー・ローハン、とにかく一度は聞いたことのある名前がずらり。
嬉しいのが、元ドアマンにアンソニー・ホプキンス。こちらのドアマンの
キャラクターが本当に素敵。嬉しそうに友達とチェスを楽しんでいたり
するのだが、とにかく可愛いらしい人。このキャラクター大好きだ。
妻に他界され、これまで仕事1本で、妻よりホテルを愛していると
言われたことまである彼は、彼の孤独を抱えている。
他には、あたし的に出落ちのwトランス・フォーマーの主人公役で
お馴染みのシャイア・ラブーフ。彼は議員の陣営で働く若い青年で友達と、
ホテルにいる売人からマリファナやLSD等を買い、
完全にきまってしまい、不思議な世界を行き来した挙句、
後から、ちゃんと選挙活動するべきだった・・・と後悔し始める役。
本当に可笑しいwトランス・フォーマーの時と同じチキンぶりが
ちらりと見えて、笑える。
また、ホテルに唄いにやって来る歌手にデミ・ムーア。
酒を飲みながら、精神的にかなり参ってる感じの歌手。
彼女のキャラクターもとても良い。個人的にかなり好き。
他にも、厨房で働く、素敵なキャラクターにローレンス・フィッシュバーン等
登場人物がこれだけ多くいても、どの顔も覚えていられる顔ぶれ。
特に良いのは、それぞれの人物が語る台詞。
鬱病を抱えた夫とその妻も、ホテルに滞在しているが、その夫婦の
会話とか、何だか心の中に残っている。
それは暗い、と言うより、希望があり、温かさがある。
デミ・ムーアが演じてる歌手のヴァージニアの台詞も凄くいい。
良い人になろうとしても、なれない。もうこれには素晴らしいとしか言えない。
人種差別やベトナム戦争や、キング牧師の暗殺と言った
あらゆる問題が、作品に絡み、登場人物たち、それぞれの人生が
その日一日の中で、ゆっくりと動いていく。
そして遂に、ケネディがホテルへとやって来る。
スピーチを終えたケネディは、厨房を抜け、退室していく途中、
囲まれた人々の握手に答えながら、その間に銃弾に倒れる。
ケネディだけでなく、何とトランスフォーマーのw例の青年や
その友人、更にはスレーター演じるマネージャー、イライジャ演じる
兵士の青年、また、鬱病の夫の妻、なども、巻き添えになり
撃たれて倒れてしまう。
おそらくもう死んでしまったのでは。
そうとしか思えないほど、ぐったりと青ざめている人達。
苦しそうに息をするスレーターは、首にした上司に見つけられ
彼からスーツの上着をかけてもらい、病院に運ばれるまでの時を過ごす。
衝撃的な事件に、そこにいた誰もがショックを隠しきれず
さきほど、陣営スタッフとしての働きをケネディ自身から讃えられた
一人の青年は、その悲しみに、出会ったばかりの女性の胸で泣き崩れる。
ホテルにいる誰もが悲しみに襲われている、
その中で、ひたすらに、ケネディのスピーチが続く。
担架に乗せられ運ばれていくケネディ。
大勢の人間が、ただ、どうしようもなく、ロビーや玄関に集まっている。
美容師の妻は、夫を見つけて、彼にしがみつくようにして泣いている。
この事態に、流れ続けるケネディの言葉が
あまりに見事にハマっていて凄い。
作品はそれでおしまいなのだが、実際、ケネディ以外の被害者達は
全員、命は助かっていると説明が加えられている。
それを観て心底ほっとする。失われた希望は戻らない。
それでも、ケネディに希望を持った人々が後々それを受け継いでくれる
のでは。そう思えるから余計にだ。
今回の映画を見て、改めてロバート・F・ケネディと言う人物を
知ろうと色々な物に触れた。
その中でも、特に凄いと思ったのが、
キング牧師の暗殺が行われ、黒人の暴動が全米各地で相次ぐ中、
演説の中止を警告する警察らに従わずに、インディアナ州の
黒人街で即興によるスピーチを行った時のこと。
暴動で各地に大勢の負傷者や死者が出たが、彼の命懸けの言葉に、
その地域だけは平静を保つ事が出来た。
こんな立派な事をやっていたのか、ケネディ!と瞬きしてしまう。
確かにこんな人物がいたら、人々の希望になると思うな。
他にも、人種差別を撤廃する為に精力的に活動しているようだ。
彼の暗殺だが、事実、アンバサダーホテルの調理場を通り抜ける際に
サーハンと言う男に撃たれている。だがサーハンの殺しには謎が多く
警察の捜査にも謎の点が多い。以下はウィキから。
『この時代の政治家の例にもれずロバートにも敵は多く、
妥協を許さない追及を受けたジミー・ホッファなどの敵対する大労働組合幹部、
大労働組合との関係が深く、しかも家族と因縁の深いマフィア、
KKK等の人種差別主義者、ベトナム戦争で利益を上げていた軍需企業、
軍部、CIAなどの関与が噂されているが、それを実証するものはなく真実は
藪の中となっている』
更に、マリリン・モンローとの関係など、彼は、実に(個人的に)興味深い
人達との因縁や関係を持っている。
ホッファは映画『ホッファ』もある。GELU:GAで紹介中。
このような面がありながら、彼の凄まじい正義感を感じる
エピソードに触れたりすると、何で殺してしまったんだろうかと思えてくる。
なかなか、こんな人物はいないと思う。だから本当勿体無い人を失った。
多くの人の希望が奪われたのだ。
暗殺とか、ちょっと今の日本では考えられない事態だし
ここまでやれる政治家も、こんな時代にしか現れないのかなとかも思う。
どちらにしろ、彼のエピソードも、彼を取り巻いたあらゆる人物たちも
魅力的過ぎていると感じた。
映画も、とても素晴らしい作品だ。大変気に入ったので また観る。