†るろうに剣心†

2013年03月26日 | ■MOVIE

 

※ネタバレ

この話はもともとは漫画なのだそう。
何気なく観た映画だったけど、期待してなかったからかw
割と面白かった。とは言え漫画までは見ない。

岡田以蔵を思い出した。と言うか、そうかなと思った。
違うかった(笑)。
NHKの「竜馬伝」で、以蔵をやっていた俳優が
人斬り抜刀斎と言う主役を演じていたせいか。
それとも、映画の監督が 竜馬伝の監督だからか。
竜馬伝で商売人になった岩崎の役者は、この映画で
金こそ全ての商売人で悪人として描かれている。
後藤象ニ郎だった役者は、喧嘩屋と言う役で。

竜馬伝のIFみたいに見ると可笑しいが(笑)、
そういうわけでもなく。

確かに漫画っぽい感じだった。
侍が剣で感じさせる、重厚感が物足りない。
でも、アクションでカバーしている感じ。
以蔵でなくてw 抜刀斎こと、剣心と言う男は、
動きが素早くて、今のはいったい?と言うようなアクションを
軽々とやってのける。
まるで 時代劇の中のマトリックスみたいな動きw

何の話かって、とても分かりやすい話で、時代劇って感じ。
むっちゃ強い主役が、出てくる大勢を倒してしまうって言う。
そのアクションが派手。敵も個性豊かに派手なアクションをする。
と言うような。

主人公の人斬り抜刀斎は
討幕派として人斬りで暗躍し、名を上げる。
そして時代は変わり明治。本人は人斬りをしていたのも
すべては 世の中が良くなるためで、
とてつもなく強いのだが、人殺しはもう嫌だと思っている。
なので、現在は人斬りはせずに 流浪しているらしい。

彼が過去に人を斬ってきた剣を、戦場に放置してくるのだが。
その剣を手に入れてしまった男がいる。

男はその剣を手に、あくどい商売人の武田観柳と言う
男の用心棒として働いている。しかも自らが人斬り抜刀斎と
名乗り、なりすましの殺人をやりまくる。

観柳の雇っている、そのほかの用心棒らと観柳こそ
退治することになる敵。

さて剣心は、一人また一人と知り合いが増えていき
現れる敵においては人を斬らずして次々とぶっ倒していく。
さすが無敵の主人公で(笑)、斬らなくても何とかなる。

全く何も分からないで見ていたら 山県有朋が出てきて
これ歴史の話?みたいな。

いちいち、圧倒的に強い主人公が良い。
普段は何を考えているか分からないが やけに柔らかい
感じの男で、ゆるいと言うより、ただ落ち着き払ったソフト(笑)。
侍だからかな。天然っぽいような感じ等微塵も無く
むしろインテリっぽい質感がする。

闘っているアクションは良いし、いつでも無敵に強いのも好き。
でも、ドキドキするものは無い(笑)。顔は可愛いのに残念だ。

観柳側にいる、変な面と黒の長髪をいつも付けている男がいい。
一人だけ無駄に静かで、この人物は大好きだ。
しかし残念ながら仮面を外したら、興味が無くなる。
と言うのも、仮面が無いと割と普通の悪役のようで(笑)。
仮面の下は金髪野郎で、(八重の桜の殿様の人かな?) 
早い動きで闘って頑張っていた。が、剣心に倒される。
仮面つけたままじっとしていたら 良いのに(笑)。

人斬り抜刀斎の成りすましの方の男だが、
こいつこそ、その名前に相応しい感じがした(笑)。
やたらと斬ってるし。しかも、どうかしていて超人的で、
変な術を使ったりもする。可笑しい、この人。
いちいち笑ってしまう。で、更に言えば、こいつは
剣心に倒されるのが最初から分かりきっている(笑)。
この辺がまた時代劇な感じとも。

この男に術をかけられた薫と言う女性は、
どうやら剣心が惚れているのか、薫が剣心に惚れているのか
と言う微妙な関係の人なのだが、その恋愛事情は
はっきり言って どっちでも良かった。
ただ、ラストで、術をかけられた薫が自力で術を解くところ。
これはいただけない。
この時、薫は自分を助けに来た剣心が、成りすまし野郎を
殺そうとしているのを止めるシーンがある。
この映画の 一番残念な点はそこかな。
「剣心やめて」 までは、まだいいが、その後、
喋りすぎなくらい、喋りまくる。
緊迫した空気を ぶち壊した挙句に、やたらに 台詞をぶちまけている。
あれは何なんだか(笑)。相当くどい。
まして息の苦しそうな感じで話すのが 拍車をかける。

普段は薫も そのほかの人物も、特に気になる事は
無いのだけど、ここだけは とてもだるい。

さて、途中まで、よく分からない人だった恵と言う女性は
質感が良くて、とてもいい味を出していた。
観柳にナイフを突き立てて、あたしも後を追ってやるなんて
言いながら、ぶっ殺そうとしている様が また素敵。

後は、佐之助。いや表情とか本当に良かった。
この話の中で唯一リアルな感じがする。
悔しそうな時とか、なんともいえない時とか。
人物の性格や、喧嘩屋ってものなどには 何も惹かれないのに
この人の演技には いちいち惹かれてしまう。

映画と言うよりドラマっぽい感じだったが
思っているより面白かった。
むちゃ強い主役が、派手なアクションで敵を圧倒する、
時代劇のような こう言う話、割と好きだ。


†ニーチェの馬†

2013年03月12日 | ■MOVIE

「A torinói ló」 ※ネタバレ

映画のタイトルは、ニーチェの逸話からきているもの。
逸話と言うのは、鞭で打たれる馬を見たニーチェが
駆け寄り、馬を守ろうとして 馬の首を抱きしめながら
泣き崩れ、そのまま発狂してしまった、って言う内容。

あたしには全くワケがわからないのだが、
監督は、その後、馬が どうなったのか疑問に思い、
この、世界が破滅へ向かう映画を撮ったらしいと
紹介されていた。

ニーチェの言葉に好きな言葉が沢山ある。
哲学がなんたるかは、ちょっと分からない。
紹介も何も知らなかったので、ニーチェの出てくる
伝記的な映画かな?と思って観た。
ところが全然違ってた。勿論ニーチェは出てこない(笑)
でも、これを観たのは幸運だった。

だって何度も流れる音楽が良かったから。

この作品は、あたしがこれまで見たことの無い独特さで、
あの感じを、どういえばいいか分からない。
特に重苦しいとは思わないし、軽いわけでも全然無くて、
一言で言えば、不思議。

殆ど台詞の無い、白黒映画で、内容はと言うと。
ただ、娘と父が、馬と暮らしている日々の生活が
淡々と続く。

外は、物凄い強風が吹き荒れていて、その風の音が
とにかく、ずっとする。ほとんど最初から最後まで。
その間に流れる同じBGM。この曲がいい。
後は、台詞もほぼ無いから、日常の音くらい。

ドアを開けた途端に、観ているこちらが目を塞ぎたくなる
ほどの、強風の凄まじい音や、砂埃の舞う様子。
毎日家の外が、こんな風だったら イライラしそうだ。

映画の中では、これでもかってくらい、じっと長い間、
そこにあるものを映したりする。
洗濯物だったり、窓から外を見る女性の顔だったり。

画面はゆっくりと、少しづつ、進んでいく。
観始めた時から急に、ひきずりこまれて
気が付いたら、入り込んでしまっていた。

内容には奇妙な点がどっさりとある。
あたしには理解できない点が。

ストーリーは6日間の親子の生活を追っていくのだが、
日常の様子と、その間に起きる変化が そこには描かれている。

親子は毎日、朝には酒を少量飲み、
御飯に、ジャガイモを茹でたのを、一個づつ食べる。
貧しさはともかく、娘が、食べることに意欲が無いように見える。

日々、決まったように同じことを繰り返す中で、
食欲と言った基本的な欲求から、感情や疑問までも、
殆ど表には出ず、言葉にも出ない。
馬に対しては、娘の心配や、父親の感情などが見えるが
二人で家に居るときは 殆ど無音。
会話するのも、業務的な内容が殆ど。
それ以外は、作業をしているか、窓の外をただ見ている。

無駄な動きをしない、有得ないほどシンプルに、
いつも通りに過ごすだけ。

父は片手が不自由なので服を着せるのを娘が手伝う。
この一連の動作も、ジャガイモを茹でる動作も、
食べるのも、朝、お酒を飲むのも、窓の外を見るときも、
どこにも、何かが立ち入る隙がないほどに いつも通り。

窓の外を見る目は二人とも暗い。

父の商売道具でもある馬は、何も口にしなくなってしまっている。
水も、食べ物も。娘は心配し、食べるよう言い聞かせるけども。

観ているこちらからすると、親子二人の生活には
昨日があったのか、分からない。
周りの変化とその影響が無い限り、
全部、同じ一日にしか見えなかった。

気が付くと そこまで闇が迫っていたのか?って言う感覚。

馬小屋にいる馬が、扉の閉まった真っ暗な中で
じっとしている映像がある。
何故か分からないが、とてつもなく残酷な映像に見える。
水さえ飲まなくなってしまったのは、暗闇のせいではと
思ってしまうほど、その闇が恐ろしい。

親子の家のランプは、油がさしてあるに関わらず
幾ら火を灯そうとしても、つかなくなってしまった。
家の中は闇に支配され、その中で、食事が始まる。
娘はジャガイモに手もつけないで じっとしている。
父親が、食べろと促すも、反応もしない。

娘のこの時の様子は、先に言った馬の様子と似ている。

二人のような生活をしたことがないので
いったいどう解釈すればよいか分からない。

毎日の食事は、ジャガイモ一個づつと決まっていて
明日は魚に、明後日は肉に、とはならない。
なる方が良いのかもしれないが 考えても意味が無い。
ひたすら毎日、これからもずっと、ジャガイモを食べる事になる。
それと同じように、生活も、おそらく、これからもずっと同じ。

そして外は強風、馬は弱り、井戸の水は
一夜にして枯れてしまい、ここを出ても行く当てがなく、
結局戻ってくるしかなかった。
その後の、暗闇、茹でることも出来ない生のジャガイモ。
食べるしかない、生きるためには。

いつもジャガイモを食べるのも
生活の動作の一つと化しているが、
では、それ以上に何を望めるかも分からない。

感情的になったり、無駄なことを沢山やると
ジャガイモでは、身体がもたないかもしれない。
いや食事がジャガイモだけだから体力が無いのかも?
いま、少し生活を振り返ることがあったら、
明日から同じことをしていけるのだろうか。

食べるしかない。生きるためには。

生きるって、こういうこと?

確かに強風や闇に襲われて、
世界は終わりに向かっているのかもしれないのだが・・・。

この親子が貧しいからと言って、映画の中では 
二人は常に素で、自分たちの日常の中で、
当たり前のことを当たり前のようにやり、生活している。
だから、貧しい親子と言う設定にありがちな
同情や涙を誘うちょっと奇妙な感じは、全く無い。

あたしが言って説得力は全く無いが、それでも
思っている事を言うと、この世の一番の悪は
貧困だと思っている。
あまりに貧しければ、心は蝕まれる。
何も貧しければ確実に悪人になるとかではない。
でも清く美しい心を貫けることなんて 普通有得ないことだと思う。
だから、そうした稀な場合の話が、ピックアップされるのでは。

豊かな人が経験せずにすむような、
悩みを抱えてしまう事は間違いない。
例えば家族がいて、そこに何も食べ物が無ければ
空腹になり腹が立つだろう。
怒りで子供に手をあげたり、夫婦なら喧嘩になったり。
病気になっても お金が無かったら。何をするにも、お金がいる。
けれども仕事が無いなら。
誰も助けてくれたりなんかしない。

貧困から発生する負の遺産は、どれほど大きいか分からない。

映画の意図するところは まるで違うところにあるかも
しれない。ただ、あたしには、それが何かを理解できない。
ただ、あたしが思うのは、巨大な闇は、死そのもの。
豊かでありながら、満足出来ずに、富を独占するものの
心の闇も、どうすることもできないでいる貧しい人の苦しみも
みんなのみこまれていく。

あたしは娘が、ジャガイモに手をつけないのを見て
この人の人生はここで終わるんだなと思った。

後で、ネットで監督のインタビューがあるのを見つけて
読んだら、「人生は労働であり、生き残るため、
自分を守るための労働である。生きるということは
闘っているということ」と答えている文があった。

その辺りが全くあたしには分からなかった。
二人が闘っていることには見えず
むしろ、生きていることに意味など持っていないように見えた。
何故、生きているかも分からないけど、疲れた。
そんな風に。

自分の心境などによって、見るその時々で感想が
変わりそうな、なんとも わけがわからない映画だけれど
無意味に「人生はこうだよ」「この映画の意味はこうだよ」
みたいなものを強く押し付けられない。
そこが すごく気持ちが良い。
人の生活や命や人生に対する、正しい一つの答えなんか
無いと思っているから。

結局、難しく考えだすと罠にはまりそうだ(笑)
ただでさえ、あたしには難しいことは分からないのに。

ところで これを観ていて何故だかおくりびとを思い出した。
あれは観た後で、生きてることが凄いって肌から細胞から
感じられる映画だった。この映画を観てそうなったわけではないが。
晩御飯にジャガイモだけではなくて 
色々なおかずがあるから有難いと思った。
所詮、あたしみたいな人間はこの程度だ。

それにしても不思議な映画。
観終わった後で心に残すものが、嫌なものではない。
なんだったの?また観てみようって感じの。
観る度に感じるものが色々とありそうで良い。


2011年 ハンガリー・フランス・スイス・ドイツ
監督 タル・ベーラ
出演 ボーク・エリカ /Ohlsdorfer's daughter
デルジ・ヤーノシュ /Ohlsdorfer


†エクスペンダブルズ2†

2013年03月12日 | ■MOVIE

「The Expendables 2」 ※ネタバレ

スタローンが大の苦手だったからか。
シュワルツネッガーやブルース・ウィルスに、と
ともかく 予告で観たキャスト陣に、
好みではない映画だと片付けていたのに。

今回、たまたま機会があって これを観た。
もちろん1は未見だけど、問題無かった。

スタローンの苦手な感触は、だいぶマシになっていて
今回観た時は、大丈夫だった。

この作品、始まりの感じが 
やけに 特攻野郎Aチームっぽい(笑)。
なんかトラックに文字が描いてあるところとかも、ぽい(笑)。

感想から言うと、そこまで面白かったわけではなく
そこまで くだらないわけでもなかった。
話は分かりやすく、「悪」は徹底して「悪」。

これまで、宇宙人や謎の組織や大勢の悪者などを
一人でも 驚くほど倒してきた男が、集団になっている。
この全員で、これまで倒した合計は どうなってしまうだろう。
何せ過去に地球を一人で救ってきたタイプの人達が
どっさりと揃ってるのだから、敵のほうが可哀想かもしれない。

もちろん、派手な戦いがどっさりとある。
どこに敵がいても、確実に撃たれて消されていくし
何故か 武器を捨て拳でやりあうシーンも。

最初の方から、ああ こいつ死ぬかもって思う
男性がいる。彼はやはり敵に捕まえられて殺されるのだけど
予測はしていたとは言え、この時の敵が本当ムカムカする。

くすっと笑えるのが、エゴは恐竜並みだとか言う台詞。

さて、一つだけ好きと思った点が。
ステイサムが(作品ではクリスマスと呼ばれている)、
聖職者みたいな格好をして、手に香を焚いた入れ物を
持っている姿。そんな格好で敵を出迎えているのは
素敵なキャラクターだ。彼は上等なナイフの腕を持っているが
何故か暴れておく(笑)。闘っている姿はかっこいいのだけど
一体なんで最初から一撃で倒さないのかは分からない(笑)。

ラストでも、スタローンが、武器を捨て
敵のボスと素手でやりあい始める。
が、終盤ではナイフや鎖を使ったりもする。
見つけた時に撃ち殺したらいいのにな、と ちょっと思う(笑)。

何だか無駄に暴れまくることが多くて
そのあたりで、ちょっと だれたりしたw

面倒くさそうなキャラで登場のブルースは、最後の方では
戦いに参加して、さっぱり感が。

この映画、あらすじとか 最早どうでもいいのでは(笑)。

1も観るだろうか?そんな気がしない。

ただ、こんなにストレートな映画を観るのも久々な気分。
何も考えなくとも話しに付いていけるし、
キャラクターが多くとも、敵はともかく、味方の方は
誰が誰だっけ?って事にも ならないですむ。
それに最初に殺される男以外、誰も死なない。
と言うより、弾が当たらない。誰にも殺せないって感じ。
それを納得する理由も分かりやすく、ありすぎる。色々と(笑)。
どんどん死ぬけど、残酷な描写は殆ど無いし、
お茶の間向けかもって感じがする。

2012年 アメリカ
監督 サイモン・ウェスト
出演 シルヴェスター・スタローン /Barney Ross
ジェイソン・ステイサム /Lee Christmas  ジェット・リー /Yin Yang
ドルフ・ラングレン/Gunner Jensen チャック・ノリス /Booker
ジャン=クロード・ヴァン・ダム /Villain ブルース・ウィリス/Church
アーノルド・シュワルツェネッガー/Trench 他


†ブリューゲルの動く絵†

2013年03月12日 | ■MOVIE

「THE MILL & THE CROSS」 ※ネタバレ

この映画、予告を観て わくわくしたので
前々から観たいと思っていたのに なかなか観れずにいた。

ブリューゲルの書く絵は、人がまんまるで
あたしは大好きだ。とは言え絵の詳細などは知らない。

キリスト教のことや、時代背景のことに
まったく疎いままで、無謀かと(笑)思いつつも鑑賞。

ところがやばかった。凄かった。退屈する暇も無かった。

今回、映画に登場するのは、ブリューゲルの
「十字架を担うキリスト」と言う作品。



この絵に限らずだが、好き嫌いは別にして、
何の背景も歴史も分からずに絵を見た時、
ただの絵であって、そこに描かれている人や物が
遠い昔のどこかのこと、でしか、なかったりする。

なのに、この映画を観ると、その中に描かれている
人達が、一人ひとり、生きていた、ことを目撃する。

日常から切り取られる窓の外の景色や、映画全体の景色、
それにワンシーン毎のアングルも何もかもが絵画みたいだ。
絵の中に入り込んで、その世界を、
姿無く観察しているようだ。
いやもう、絵の中に完璧に入ってしまっている。

ブリューゲル自ら絵を説明してくれる台詞がある。
「観る者の目を捉えるべく
蜘蛛の巣のように巣を張っている」
こんな感じのことを言ったり、描かれているそれぞれの
物について解説したり。
画家が、絵を描きながら、その絵を自分で解説しているのが
(観ているこちらは有難いが) 何だか可笑しかった。

まるいものが、印象に残る。
蜘蛛の巣や、風車、車輪みたいなものなど
(後で言う、鳥葬された男がくくりつけられた物)。 

作品は、BGMが殆どなく、台詞も殆どない。
日常の生活の音があって、進んでいく。
これが まず素敵と思ったひとつ。
観たくても、そうでなくても、いやに画面に
ひきつけられてしまい、展開が予測不可能。

特に、風車の中で、回転する軸の音であったり、
何か聞こえると思い、耳を澄ましていると、
馬の駆けてくる音が 荒い鼻息と混じって
近づいてくる音だったり、
これらが怖いほどの迫力があった。

その馬に乗ってやって来た赤い格好の兵士たちが
いきなり、道端から逃げ出す男を追って、馬で囲み、
ボコボコにする。

登場するアートコレクターの男(何だか物凄い金持ちのようだ)
ヨンゲリンクが、この土地の人達は、どんな宗派の人間とも
共存できるものと信じている、けれどスペインの王は
異端を許さずに処刑する、みたいなことを言っていた。

この赤い兵士は、あたしの頭でスペインの仕業と片付けた。
前に読んだ本(ここでも紹介した「名画の謎」)にある
「イカロス墜落のある風景」その解説の中では
ブリューゲルの生きた時代のフランドル地方では
スペイン・ハプスブルク家の圧政に喘いでいたらしく
反乱や処刑などは日常だったとある。

あたしの頭はハプスブルク家やスペイン、フランドル地方
等々、こう言う物の歴史が いまいちのみこめていないので
詳しくは分からないが、スペインの王は、どうかしているんでは。

ぼこぼこにされた男は、消え入りそうな うめき声を上げるのだが 
その声が、妙に生々しく、ぞっとする。
その後、鳥葬と言うのかな?車輪のような物に括り付けられ
高い木のてっぺんに置かれる男。後は鳥に食われるがままに。
この男の奥さんが、木の下で泣き崩れている。

このシーンと、タイトルの夢のあるような感じ
(勝手なイメージ)のギャップ。

こうした残酷な風景も、日常の中に当たり前のようにあり、
無常な時間が、犠牲となった人達だけを 異次元の穴に
落っことしたみたい。

他にも、生き埋めにされてしまう女性が出てきたりする。
淡々と事務的に進められていく作業に、何の躊躇も無いから
それが凄く悲しい。

スペインの王とやらが信じる神は
無秩序に、宗派の違う者をぶっ殺せ
と言いまくってる神なんだろうか?
宗派が違うと言うことは、派の問題だから
信じる神は同じなはずでは。

政治的な理由があるのかは分からないが、
自分が良いと思うもの以外は
許さないから殺す、って事と、あんまり変わりない。
救いようの無い犯罪人だ。
おまけに自分の信じる神の顔に泥を塗っているのだから哀れ。
そんなのが権力者だと、本当にロクな事が無いのだろうと思う。
今の世界にも、ろくでなしの権力者はいるが。

とにかく、この映画の中で、スペインの王や兵士
は人間の形をした悪そのもの。
王は出てこないけれど(そのように記憶している)。
こいつが処刑されたら良かったのに。

ところで印象的だったシーンの数々と言えば。

母親が、子供をあやしている風景は 本当に微笑ましい。
でも、この映画、油断できない緊張感があって
あたしが何も分かっていないせいか、ともかく誰が
いつ、いきなり殺されるか等 さっぱり分からないから、
無駄に安心できない。この辺が、展開が予測不可能なところ。

何がそこまで奇妙に感じるのか、よく分からないが
キリストが処刑された現場にいる、見張り役のような
男達がゲームに興じているシーンでは、一瞬
理解に苦しむ。ストーリーの中に、撮影クルーと監督
一同がいきなり登場するのにも近いほどの、違和感。
何を見ているか分からなくなる。
何だか、印象的なシーンだ。

景色の緑がとても美しいのに、空が曇っているみたいな
憂鬱な色をしているように見える。

映画の中では、ブリューゲルのいた時代に生きてた
その地方の人達の日常等にまじって、
マリアやキリストがと言ったキリスト教の人物が出てきたり、
彼の作品の中に登場する人物達の様子が展開されている。

あたしには謎も多かった。
パンを売る男、と言うのがいたが、彼は目が見えないのだろうか?
後、協会で金を数えている男がいるが、その男は
キリストの処刑のあとで、自分の金を教会の床に投げ捨てて
自ら首を吊っていた。この人はキリストが処刑されることに
関わっている裏切り者か何かなのだろうか?
そして、いちゃつきまくってる男女のオープンなこと(笑)。

物語すべてのそれぞれの事情については、
ついていけない点も多くあったが、分からなくても
気にならなかった。

何故ならもう感動したシーンが圧巻で。
この映画、最初にも言ったように、とにかく凄かった。
日常などの音で表される展開はもちろんのこと、
事情もよく分からないのに こんなに感動することが。

特に感動したのは、風車が止まった瞬間に、景色が
人がみんな、停止するシーン。
あれはいったい何?泣いてしまった。
ラストで、美術館にある、「十字架を担うキリスト」の絵が
登場するシーンも、同様に泣いてしまう。

胸に迫ってくるものの大きさに、驚く。
それは衝撃で、文字通りに息をのむ。
風車が止まった時なんて、呼吸も忘れてしまうくらい。

なんか、有得ないほど凄いものを観てしまった。

この先何度も観てしまうこと決定。
次は、もう少し この絵について色々知ってから
観たら、もう少し楽しめるかもしれない。
ああ、後、シモンも。今更になるけど、
ところでシモンって一体誰?(笑)
また、次回観た時に、色々と意味が分かったりした事があれば
その時は、そのときで感想を書くつもりでいる。

ちなみに、この映画の監督は、あたしの大好きな
「バスキア」の原案・脚本を手掛けている。

2011年 ポーランド・スウェーデン
監督 レヒ・マジュースキー

出演 
ルトガー・ハウアー /Pieter Bruegel
シャーロット・ランプリング/Mary
マイケル・ヨーク /Nicolaes Jonghelinck


†プロメテウス†

2013年03月11日 | ■MOVIE

Prometheus ※ネタバレ

これがエイリアンの話だと分かっていたら
絶対に観ていなかっただろうな。
何かも分からずに観てしまった。
エイリアンとか、謎の物体に襲われる系の話って
どちらかと言うと 得意ではない。
多分、主人公が逃げなくちゃならない展開が多くて
ドキドキハラハラさせられるからだと思う。

最初は、不幸な気配も無く、わくわくしてみていた。
だって、世界中の至る古代の遺跡の壁画から
謎のサインを発見した考古学者が、
人類を創造したものからのサインだと考えて、
多くのスタッフと共に宇宙船に乗り込む。
皆で宇宙へ行き、もしかしたら、その謎のサインの主と
出会って、驚くような人類誕生の話なんかを
聞かせてもらえるかもしれないし。

でもそういや、最初の方に不気味な感触のする男が
どこかで、とてつもなく気味の悪い死に方をしていた。
でも、それは病気かも?とか適当に片付ける。

折角、仲間と宇宙船に乗って、宇宙へやって来たのに
そこに待ち受けていたのは ホラーな展開ばかりで
挙句の果てには、次々と人が死んでしまう。

何せエイリアンの話と分からずに観ていたから、
あーあ。もう、皆どんどん死んでしまって。
折角皆で宇宙まで来たのに。と、とても残念な気持ちになる。

がっかりする あたしの言葉に ほくそえむ?タピw
こんな映画を観たのも、そもそもタピが観ていたから
一緒に観てしまった流れなのだ(笑)。

唯一の救いは、アンドロイドのデヴィッド。
むっちゃいい。たとえアンドロイドの説明が無くとも、
観れば彼が人間でないことは十分伝わってくる。
あのどこか奇妙な質感。
全く信用できない感じだが、中身はともかくとも
あの空気感は最高だった。
マイケル・ファスベンダー、うまいw
男前なのがまたいいw

ちなみに主人公の考古学者エリザベスは
ミレニアムの主人公のノオミ・ラバス。

この映画、主人公だけが生き残る。
アンドロイドも、故障するが復活する。
残りの仲間達は、全員死亡。
エリザベスの恋人は、変な虫が身体に入り込んで
彼女の目の前で焼かれて死ぬと言う残酷さ。
小さな虫が、彼の目玉の中で泳いでいるシーンも
また気持ち悪かった。こういうの凄く嫌だ。

そもそも、なんで この人たち、こんな目に?(笑)

一応エイリアンの話とはいえ、巨大な謎の物体は
謎の物体同士で戦い、果てる。

ええと、この話いったい何だった?w
あたしには何も分からなかった。

宇宙へ行った、皆個性的で人間関係も良くなさそうだった、
出迎えたのは変な物体ばかりで 彼らを襲いまくった、
そして皆次々死んだ、物体同士も闘って倒れた、
主人公一人が生き残り、自分の恋人を死に追いやった
犯人であるアンドロイドを仕方なく修理する、
そして地球に戻らずにどこかへ行った。
終わり、と言うわけ。

エイリアンとか好きな人には面白いのかもしれない。
あたしには無理だったようだ。
あのアンドロイドは本当に素敵だった。それだけ良かった。

ちなみに、プロメテウスは、ギリシア神話に登場する神w
こんなところでも(笑)。彼は人類に火を与えたので
ゼウスが怒ってしまって、拷問のような日々を過ごす羽目に。
後にヘラクレスが彼を助けてくれる。

プロメテウスは先(プロ)に考える(メテウス)
って意味らしい。この弟がエピメテウスで、後(エピ)で考える。
弟は兄に警告されていたのに、パンドラと言う女性と
くっついたwパンドラの箱が・・・と言う話があるw

2012年 アメリカ
監督 リドリー・スコット
出演 ノオミ・ラパス/Elizabeth Shaw
マイケル・ファスベンダー/David
ガイ・ピアース/Peter Weyland 他


†5デイズ† 

2013年03月11日 | ■MOVIE

「5 Days of War」  ※ネタバレ

この映画は、グルジアとロシアの5日間戦争を描いた
もの。映画ではグルジア側からの視点で
展開されているので、ロシア側は完全な悪。

ここで少し前置きしておきたいのは、
この映画だけを観ても 
この戦争がなんだったのか、分からない点。
ちょっと面倒だけど補足。

この、戦争のとき、あたしは、ニュースで
ロシアの戦車が画面に映し出されるのを見た。
ロシアが酷いことをし始めている、と言う雰囲気に見えた。
何故かと言うと、日本は、ロシアに勝手に
領土を侵略されているから。
他国の領土を勝手に奪う一面があると思っている。
ロシアのような大きな国に、グルジアと言う国が、
抵抗できるとも思えない。ロシアが勝手に、
グルジアを力でねじ伏せようとしている風に見える。
いっけんすると。

現実的に考えると、どちらかが一方的に悪だという事は
殆どないのが戦争だと思っている。
お互いに人を殺しているのだし。

どちらか一方だけの視点に立って、理解しようとしても
無理な話だ。だが両方を観てもわかることは知れているかも。

さて、これは映画なので、この作品で、
どちらかが一方的に悪だと描かれようと、
特に思うことは無い。

前置きは終わり。

グルジアの大統領を演じるのは、アンディ・ガルシアなのだが
画面に現れると、思わず何かが似ている、と思う。
何だか質感が、このキャスティング、はまっているって感じ。
大統領は、サアカシュヴィリと言う名前で(覚えにくいのです)、
彼を扱ったドキュメントをみた時は、
何だか変わった人。と言う感じ。
映画の中では、そこまで存在感も特に無い。

主人公はジャーナリストで、過去にイラクの取材で
同じジャーナリストだった恋人を失っている。
その時主人公を助けに来た兵士がグルジアの兵士なのだが、
もう彼が、本当に頼もしくて、最初から最後まで
主人公を助けてくれる。むちゃくちゃカッコいい。

あらすじを、ざっと言うと、主人公アンダースは、
取材に向かったグルジアで、5日間戦争に巻き込まれてしまう。
仕事仲間と、現地で出会った女性と、その家族と
共に、戦地を取材しながら、この場から脱出しようとする。
乗り込んできたロシア側の傭兵たちが、極悪非道で
彼らに見つからぬよう逃げようとしているものの、
結局捕ってしまう。
主人公たちは命懸けで、ここで収めた記録を守り抜こうとする。
最終的には、やっとのことで国の仲間に連絡をつけ、
真実の映像を、発信しようと思うのだが、
残念ながら北京オリンピックの真っ最中で、
取り扱ってくれる局は無い。
おまけに、一同はグルジアの兵士たちと合流するものの、
ついには敵の戦車に囲まれる。さて。と言う感じ。

主人公は、現地で出会った女性タティアに惚れている。
この彼女が、怖い傭兵に人質にとられてしまい、
命懸けで守りたいメモリーカードを持って、取引に向かうのだけど。
もう絶体絶命のピンチで、主人公、他の傭兵に助けられる。
だが、安心していると、今度はいよいよ敵の戦車に囲まれる。
この辺りが、ホッとする間もなくて、疲れる。

傭兵達は、土地に居た人達を意味も無く、
その場で殺したり物を破壊したり、やりたい放題。
また、悪そうに笑いながら、人の命を弄んでいるような場面も。
しかしここに味方の兵士がいるわけでもないので
いったい、どうやって、傭兵に見つからずに脱出できるのか
さっぱり分からない。主人公達が捕まって、何をされるか
と思うとハラハラした。

はっきり言って、大統領が何の役にたっていたのか分からない。
最初に言ったように、この映画で ひたすらカッコいいのが
グルジアの兵士で、傭兵に捕まった時も、この兵士たちが
助けに来てくれる。そこがもう最高。
しかも、最後には、撤退命令を無視し、
自分の国を守ると言って市民を助けたりしているのだ。
何だ、このカッコいい人達は。

グルジアの景色は、あまりにも美しくて
こんな場所が、あったんだなぁと、そこにまず驚いた。
昔の絵画から引っ張り出してきたみたいな景色。
どうして あんなに美しいのか。
そこを戦闘機が破壊していくシーンでは 本当にイライラする。
何ていうか、もう、墜落じゃなくて(落ちたら残骸で汚れるから)
神隠しのように異次元にでも消えてしまって欲しいと思った。
もちろん、そんな不可思議なことは起きたりしないので
やられるがまま。
戦闘機は、ランダムみたいに、そこにある家々も破壊する。

傭兵は無抵抗の市民らを集め、市長らは前に出ろと言うが
誰も前に出てこないのを見て、何の力も無い老女を、
みんなの前に引っ張ってきて、彼女の足を何発か撃つ。
そこで、市長らが前に出てくると、彼らの喉をかっ裂く。

自分達より明らかに弱い物に対して、
傭兵だったり戦闘機だったりが、一体何のために
こんなことをするのか、ちょっとよく分からないのだ。
傭兵の一人は、自分はコサックだ、と言っていたが。
何者でもいいから画面から消されて欲しいと思って観てた。
その人物は、最終的には主役を殺そうとして、自分が
殺される。しかしそこでスカッともしない。主人公が生き延びて
ほっとするだけ。戦争の原因が、この男ではないからかもしれない。

とても単純なことを思う。
戦争って、本当に無意味なことをやるのだなぁと。
兵士は命を懸けて、祖国を守ろうとしているのだろう。
過去の戦争に参加し、その後、あれは意味の無かった戦争、
間違った戦争だと言われて 苦しんでいる元兵士もいる。
だから、簡単に、あの戦争は間違いだったとか、
無駄だったとか、口にするには重たすぎる。
しかし、このような破壊は無駄にしか見えてこない。

銃弾や爆撃など結構、迫力がある映像で、
主役がジャーナリストで、その視点で見るからだろうか?
実際には戦場など見たこともないが臨場感を感じる。
そこにいるような迫力と言うか。

映画の最後には、おそらく本当に戦争で傷ついた当事者
なのだろうと思われる人達が出てきて、自分の失った家族や
人達について写真を見せたり、自分の名前を口にしたりして
説明されていく映像が続く。

ロシアがとかグルジアが、とかの問題じゃない。
この人達の傷跡は深く、結局これで犠牲になっているのは
市民であると思った。兵士たちも闘って亡くなってしまう。
傭兵が入り込んで来てパニックする時に
足の悪い老人や、早く走れない身体の人
たとえば妊婦さんとか、真っ先に 犠牲になる。

こんなことがあっても、世界中で茶番みたいな政治は続く。
権力を持つ側は、結局のところ、どうでもいいのだろう。
人の命なんて。

グルジアとロシアの間に大量の犠牲者が出る、兵士も死ぬ。
とにかく誰かが沢山死ぬ。
このとき当事国の政治家も、周りの国々の政治家も
考えているのは、人の命のことではないんだろう。
国にとって損か得か。選挙に影響しないかなどなど。
これは当たり前の姿なのかもしれないが、
それを当たり前と言う自分の感覚は一体何だろうか。
確かに外国で人が大勢死んでいると聞いても、
遠いどこかの事に思うものだ。
けれど、人の命より大事なものがあるのが、当たり前・・・
って感覚に陥ることが、気持ち悪い。

真剣に頑張る人もいるのだろうけど、申し訳ないが
政治家は、いつも茶番をやっているように見える。
皆そうでなくとも、平和的なまっとうな感じを装って、
いつだって大量殺人をやる。
殺人の規模が尋常ではない。

リストラした人間の数を自慢するようなアホな会社の
偉い奴みたいに、自分は正しいことをしたと思ってるのだろうか。

話を作品に戻す。
映画の中の悪は、どんどん殺されてしまっていい。
あたしが好きな兵士は最後まで生き延びているのが嬉しい。
あの迫力といい、この映画は疲れるけれど観て良かった。

最後にウィキの文を引用する。
まずはこれ。何だかこちら、可笑しかったので。
サァカシュビリ大統領は
「テレビカメラの前でネクタイを噛む
といった奇行を行っている。この行動に対して、ロシアの
ウラジーミル・プーチン首相に「夕食を食べるなら
ネクタイを外したほうが良いのでは」と皮肉られている。


それからこちらも。補足として。
これが真実かどうか?あたしには分からないけど。


「紛争後、ロシアとの武力衝突を招いたことで
多くの犠牲をもたらしたとして、サアカシュヴィリの責任を
問う声が強くなった。
サアカシュヴィリは2008年10月27日にラド・グルゲニゼ首相を
解任し、代わってグリゴル・ムガロブリシビリを首相に任命したが、
これは紛争に対する批判をかわすためだとする観測が出ている。
同年11月7日には1万人以上の野党支持者による反政府デモ
が行われ、サアカシュヴィリの辞任と大統領選の早期実施を求めた。
南オセチア紛争に関するサアカシュヴィリ自身の発言も変化し、
紛争時に行っていた「先に軍事行動を開始したのはロシア側だ」
という主張を翻し、同年11月28日にグルジア側の方が
先に軍事行動を開始していたことを認めた。
同年12月5日には、国防相、外相、国家安全保障会議書記を更迭し、
自らの責任回避に腐心している」


2011年 アメリカ
監督 レニー・ハーリン
出演 ルパート・フレンド /Thomas Anders
エマニュエル・シューキー /Tatia
リチャード・コイル /Sebastian Ganz


†裏切りのサーカス† 

2013年03月10日 | ■MOVIE

「TINKER TAILOR SOLDIER SPY」 ※ネタバレ

これには どうやら原作があるとのこと。
未見だが、先にそれを読んだ方が分かりやすいのかも。

ゲイリー・オールドマンがイギリス諜報員
スマイリーを演じる。

じわじわしていながら、淡々とした感じが
なんとなく グッドシェパードを思い出す。

ストーリー自体は単純で、呆気なく言うと、
イギリス諜報部「サーカス」の中に、
実はソ連のスパイが入り込んでいる。
この二重スパイを作品では「モグラ」と呼んでいる。
さて、そのモグラは一体誰なのか? と言うお話。

この時代(冷戦下)なら、わんさかとあるパターンの。

また、補足するならば、モグラは、東の大物スパイ、
「カーラ」の指示で動いている。
イギリス諜報部、大丈夫?早くとっ捕まえなくちゃ(笑)。


感想書くより先に、主要な人物を簡単に分類する。

まず<サーカス・イギリス諜報部の幹部4人>
(この4人の中に モグラがいる)


コントロールが付けたあだ名ティンカー 「アレリン」
(パーシー・アレリン)

コントロールの椅子を奪い、サーカスのリーダーになる。 
野心を顔に書いたような男。


同じくあだ名はテイラー 「ヘイドン」
(ビル・ヘイドン)
スマイリーの奥さんを寝取る。ジムと言う男とは
怪しい関係のよう。


同じくあだ名はソルジャー 「ブランド」
(ロイ・ブランド)

顔がいかついので 覚えやすい。

同じくあだ名はプアマン 「トビー」
(トビー・エスタヘイス)

コントロールに拾われて幹部にまでなっている男。
強い物について行き、生き残るタイプ。



続いて<もぐらを探るチーム>

「スマイリー」 (ジョージ・スマイリー)
このお話の主人公。冷静で、コントロールの右腕。
妻に惚れこんでいる。


「ギラム」 (ピーター・ギラム)
スカルプハンターの一人。
スマイリーの指示に従い、必要な情報を収集する。
男の彼氏がいる(別れることになる)。


最後は<やたらに出てきて重要な人達>

「コントロール」 
サーカスの元リーダー。謎の死を遂げる。

「リッキー」 (リッキー・ター)
スカルプハンターの一人。
仕事先のイスタンブールでKGB(ソ連)の女性と恋に落ちる。


「ジム」 (ジム・プリドー)
コントロールから密かに指示されハンガリーへ行き
その現場で銃弾に倒れる。
ヘイドンと親友・・・と言うよりヘイドンが好きだろう。
死んだと思われていたが生きており、教師をやって現在暮らす。
ラストでは モグラを射殺する。


この人たちのことは、いやでも出てくるので。さて。

時代は東西冷戦。東、対、西のスパイが情報戦を
展開している。イギリスMI6とソ連KGBも勿論そうで
舞台はイギリス諜報部<サーカス>。

サーカスのリーダー、コントロールと言う男は
モグラが入り込んでいる事に気づいていて、
その正体を突き止めようとしていた。そこで。

諜報部の中にあるスカルプハンターと言う部隊は
基本、実動部隊として、汚れ仕事など何でもやる。
その部隊の一人であるジムに、密かに仕事を指示。

ハンガリーの将軍が亡命を希望しているとのことで
彼はそれと引き換えに、諜報部のモグラの名前を
明かすらしい。その将軍との取引をうまくやり、
モグラの正体を暴く気だ。
早速ジムはハンガリーの首都ブダペストへと向かう。
ところが ジムはそこで撃たれて死に、結局作戦は失敗。
(死んでなかったと後で分かる)
失敗を問われて、コントロールはサーカスを去る事に。

この、コントロールの右腕であった、スマイリーは
彼の指示で、彼と共に、その時サーカスを去る。
しかし、コントロールはその後、謎の死を遂げる。

スマイリーは、レイコンと言う政治家(彼は諜報部を
監視する役目を与えられている政府の役人)から、
現在サーカスにいる4人の幹部の中に潜む
モグラの正体を突き止めろと依頼される。
サーカスを引退している身のスマイリーに、レイコンは
コントロールやスマイリーの時代の置き土産だから
この件は、お前が片付けろみたいな事を言うのだ。

とにかく、この映画、スマイリーが仕事をしなきゃ
話が進まないし。こうしてスマイリーは
モグラ探しを始めることに。

コントロールとスマイリーが去った後に、
サーカスで働く4人は、昔からコントロールらと
共に働いてきた仲間ではあるが
良き仲間、信頼関係と言ったような ものは
あってないようなもの。
スパイだし、例えこの4人の中にモグラが いようがいまいが、
無駄に人を信用することは有得ないのだろう。

ソ連の情報に詳しいコニーと言う女性の諜報員は、
昔を特に懐かしみ、あの時は良い時代だったと振り返るが。

コントロールは生前、モグラと疑いのある人物に、
密かに、あだ名を付けていた。
「ティンカー、テイラー、ソルジャー、プアマン」
この4人がコントロール達が去った後、
サーカスを動かす4人。
コントロールが疑っていたのは彼らだけではない。
彼の右腕として働いていたスマイリーのことも 怪しんでいた。

この事実は、スマイリー自身、知ることになるけど
彼としては疑いをもたれていた事がショックだったようだ。
この仕事の、辛い一面と言う感じ。
でも、コントロールが、「右腕だから怪しまない」
でいる感覚の人なら、そもそもリーダーにもなれてなかったと思う。
あくまでそれは仕事人として当たり前のことだったのでは。

さて、このあだ名をつけられた男達の誰かがモグラなワケだ。

映画の中では、過去を ふと振り返り、
昔にあったことを思い出すシーンが何度も出てくる。
過去の記憶に向かうとき、大抵は、その人物が
情景を頭に描き始めるような表情をしていたりするから、
その辺りは特に分かり難いものではない。

分かり難いのは、むしろ名前の方かな。
4人の男達のあだなも、普段の名前も、なんだっけ?ってなりやすい。
何故って、登場人物が多く、それぞれの名前が
どんどん出てくるので(笑) 
4人をおさえ、スマイリーと、スマイリーと仕事をする男達の
両陣営のw一同の名前と顔が、しっかりと把握できないと混乱しそう。

後、名前だけ出てくる人物もいる。カーラと言う男。
こちら、名前だけ聞いたとき、最初ソ連にある秘密の諜報部隊
の組織の名前かと思っていた(笑)。
カーラは、ソ連の大物スパイで、スマイリーも一度過去に
会った事が。このカーラは、モグラに指示を与えている人物だ。

つまり何だか凄い東の大物スパイが、イギリス諜報部を
操ろうとしている。おおいに困ったことになっている。

過去にスマイリーがカーラと会ったのは、なぜかと言うと。
当時ソ連では粛清の嵐で工作員が脱出しまくっていた時代だった。
そんならリクルートしようってことで多くの工作員を西側に
引っ張り込もうとしていた。カーラもリクルートしようとした。
だが出来なかった。

スマイリーは奥さんとうまくいっていない(それどころか妻は浮気している)
それが仕事にもろに出てしまったのが、カーラに会った時。
「妻が大事なのだったら味方に付いた方が良い」と、
まるで自分に言うかのような説得をしたスマイリー。
カーラは大物スパイなのだから、最早その時点で見抜かれたに違いない。
カーラがチェーンスモーカーであると聞いていたスマイリーは
彼にタバコを用意してきた。ところがカーラは一本も吸わない。
なのに何故かライターだけは借りたままにして 
結局、飛行機で祖国へと帰ってしまった。

ライターは奥さんからスマイリーにプレゼントされた大切な物だ。
それには、奥さんからの愛のメッセージが刻まれている。
スマイリーは それを返して欲しいのもあるだろうけど、
自分がやってしまったことの後悔もあるのではと思う。
自分の弱点を、自分でカーラなんかに教えてしまったのだから。

弱みなんか無い方が理想だけど、人間だから 何かある。
家族がいないほうが無難かもしれないけど、恋だってするし。
特にストレスの溜まる事も多そうだし。
そう言う意味では、スマイリーと共にモグラ探しをやる、
スカルプハンターの一人、ギラムと言う男は
途中で身の回りの整理をするのだが、して良かったのかも。
彼の恋人は男だから、結果的に何かに利用されたりすると
きついだろう。てか 本人は、もう、そう思うしかない。

あたしは最初、スマイリーも相当怪しいなと思っていた(笑)。
スマイリーは、冷静で、常にポーカーフェイスで
いったい何を考えているか全然分からないのだ。
それでこそ諜報員なのかもしれないけれど。

しかし、スマイリーは、その冷静さを武器に、じょじょに
モグラが誰かと言う真実に迫っていく。

コントロールが去った原因にもなっている、
ハンガリーでの仕事。それに失敗し、撃たれて死んだ男ジムは
実は生きており、帰国していた事も発見する。
彼が撃たれた後にどのような展開があったのかをスマイリーは知る。

同じスカルプハンターの一人でリッキーと言う男がいる。
こちらは、ギラム(例のゲイの彼)の部下で、イスタンブールで
仕事をしている時に、KGB(ソ連)の女性イリーナと恋に落ちる。
でも、結局イリーナは連れ去られてしまい、
リッキーは遅れながら帰国。帰ってこなかったせいで
敵に寝返ったと思われていた。どちら側からも命を狙われていると
思い、こっそりとスマイリーに会いに来る。

ジム(死んでたはずの彼)の回想に出てくるが、
イリーナはジムの前に連れてこられ、消されている。
また、ジムは撃たれた後で東側に拘束された時、
スマイリーがカーラに、ぱくられたライターを持っている男
すなわちカーラに拷問を受けている事もわかる。


この、ジムが何かと重要で、サーカスの4人組の一人
ヘイドン(コントロールが付けたあだ名はテイラー)と親友だ。
二人揃って笑顔の写真などもある。
でも、親友と言うだけではない。おそらく一線を越えた関係だろう。
ジムはヘイドンが好きだ。

ジムはハンガリーに発つ前、密かに依頼されたコントロールからの
仕事の内容を、ヘイドンにだけ喋っていたりする。

ヘイドンと言う男はと言うと、スマイリーの奥さんと浮気している。
朝から勝手にスマイリーの家に上がりこんでいて
今来たといわんばかりに、取り繕ったりしているが
二人が出来ていることを、ずっと前、パーティがあった時に
スマイリーは目撃してしまっているのだ。

さて、サーカスの4人組の残るメンバーと言うと。
コントロールにティンカーとあだ名された、アレリン。
現在、サーカスのリーダーを務めていて、
顔に野心が滲み出ている。
彼は「ウィッチクラフト作戦」なるものが魔法のようにうまくいくと
信じており、アメリカからの協力も、これで得られると思っている。
現在、イギリスではアメリカからの協力と言うものが 
とても必要なのだろう。

そして プアマンこと、トビーは、その時、その時の流れに
乗じて、自分が生き残れる方を選んで付いていく男。
それは彼の過去の経験からくるものかもしれないが。
元々コントロールに拾われて、現在サーカスの幹部になっているが
コントロールが引退させられる際には、堂々と彼を見捨てている。

最後はソルジャーことブランド。顔がいかついので覚えやすい。
最早説明も面倒。

ともかく この4人から犯人を探し出さなくてはならない。

終盤に近づいていく内に、4人の男たちが、
次々と失脚していく展開や、
そこに迫っていくところは、ドキドキする。
緊張感やわくわくするのが、同時にある。

前に言ったように、ジムは結構重要だと言うことだけども。
ジムは、ラストでモグラを射殺する。
殺すとき、泣いている。裏切られたせいもあるだろうし
報復したいこともあるだろうし、でも、好きだからと言うのもある。
好きな奴だったので 自分で殺すって感じだろうか?

結局期待を裏切らないのは、カーラ。
先程ジムの話で もぐらが判明した通りだが・・・
モグラのヘイドンに与える指示が、一枚上手って感じ。

スマイリーの弱点は奥さんなのだから、
奥さんを寝取ることをヘイドンに指示。
そうすることで、この妻を寝取った男に対する
スマイリーの見方は、冷静に人物像を分析するものとは
違ってくる。スマイリーの目を曇らせておく作戦とも言うのかな。
だから、わざわざ本人に分かるように、ヘイドンは、
スマイリーの妻と浮気をしていたのだ。
朝から帰宅したスマイリーの前で取り繕い、
こそこそ靴をはくシーンとか、あれは、わざとか(笑)。
ヘイドンめ(笑)。

カーラの指示を受けて仕事をするヘイドンは
サーカスの男達を巻き込み、まんまと うまくやっている。
長いこと、モグラとして潜んできて見つかっていない人だし
それなりには頑張っただろう。
イギリスとしては、何と残念な。

けれども、スマイリーに見つかってしまったw
カーラのやろうとしてること、ウィッチクラフト作戦の真相も。
また、ヘイドンは 最後の方で、自分は歴史に名を残す
人間だのと言っていた。
それだったらスパイやってる場合ではないのでは。

印象的なのは、やっぱり、パーティでのシーンか。
ジムが、ヘイドンを好きって分かる、ところ。

そう言えば、最後、長く家に帰っていなかった、スマイリーの妻が
戻ってくる。どうでもいいけど、スマイリーの心は
奥さんにぞっこんのよう。
でも、奥さん、信用していいのだろうか?(笑)
そもそも、スパイとかモグラとかの前に、
浮気する妻を疑わなくて大丈夫だろうかw
この奥さんが何かに利用されていても、分からないのでは。

何だかいつまでもスマイリーが心配に思ってしまうw

映画自体はとても好みだった。


2011年 イギリス、フランス、ドイツ
監督 トーマス・アルフレッドソン
出演
ゲイリー・オールドマン/George Smiley
コリン・ファース /Bill Haydon
トム・ハーディ /Ricki Tarr 他


†ものすごくうるさくて、ありえないほど近い†

2013年03月06日 | ■MOVIE

『EXTREMELY LOUD AND INCREDIBLY CLOSE』 ※ネタバレ

この映画を見終わった後で、涙腺が壊れた。
こんなに泣く映画も珍しい。

一緒に見ていたタピは、この映画は、
あたしと接しているから まだ分かるところもあるが、
分からない人には全然わからないと思うと言っていた。
普通に見ていて感動する映画なので 
そうと言い切らないかもしれないが、どちらにしても、
この映画は良すぎた。近年でも相当やばい映画に値する。

主人公のどうしようもなく不安になる心境が
とても自分と重なって見えた。
どう説明するか難しいような不安が、
うまく表現されていて 臨場感がある。

主人公の少年は、何の病気か分からないが精神的な
病を抱えている。過去に医者からアスペルガーと診断
されたこともあるらしいが、本人が言うには はっきりとはしていない。
その病気については よく知らないが
日常の当たり前の景色に足がすくむほど怖いと感じるのは
とても分かる。分かるだけに なまじリアル。
少年オスカーが、ブランコに乗れるようになったことが
どれほど凄いことかと思う。

あたしの場合、ふいに耳にする電車の音とか、
少し床から響いてくる ひきずる椅子の音とか、
人の話し声や 街の雑音、ほんの少しの音も、
体内に大きな音で急激に飛び込んできて
たまったものではなかった。
音だけではなく、今見ている世界が、いきなり
崩壊しそうな不安が、共存し、
安心することすらも怖いと思わせる。

この映画のタイトル「ものすごくうるさくて
ありえないほど近い」は、結局どういう意味だろう?
色んな解釈があるようだ(ネットで見たところ)。
あたしが解釈すると とても現実的な ある意味否定的な
ことも含まれるから、本来の意味があるなら
全くかけ離れているかも知れない。
だが、あたし個人的には、要するに、受けて側(観た本人)が
好きに解釈すれば良いのではないかと思っている。

そうすると 「ものすごくうるさい」のは本当に良く分かるところだ。
文字通り、音が飛び込んでくるのだし、
普通気にならない音が とても大きな音になって入ってくる。
あたしにとっては、現実そのものだ。
さて、「ありえないほど近い」とは何だろう。
こちらも、あたし視点からすると、ありえないほど時が経っていない
ことを意味してしまう。現実に時間は経過しているのに
症状は前に進んでいかない。
だが、ありえないほど近いところに、実は前に進める何かが
あるかもしれない。
ありえないほど近い、それは自分の心の中にあるかも。

そうだとしたら、「ものすごくうるさい」もの(音だけでなく恐怖そのもの)が
「ありえないほど近い」その心の中の何かと結びついているともいえる。
「ものすごくうるさいほどに複雑すぎるものなのだ、
この、ありえないほど近く心の中にあるものは」

このような、ある意味あからさまな状態を、
想像力無しに結論してしまっているけど、
本来の意味がどうであれ、個人的にはこうなる。

パパを9.11で亡くしたオスカーは、父の死から立ち直れない。
それは残された母も同じ。このトム・ハンクス演じるパパも
サンドラ・ブロック演じる母も、最高にいい。
大好きだったパパと、探検ゲームをやっていたオスカーは
ある日、父の遺品の中から鍵を発見する。さらには
謎のブラックと言う文字も。オスカーは、探検ゲームを始めるわけ。

勿論ゲームを再開しても、今度は一人だし、
でもパパとやっていたゲームの答えは
実は未だ発見できてないし・・・。
彼の探検では、途中仲間に加わる謎のおじいさんが登場。
普通は、探検する少年と聞いたら イメージは もっと明るいものだが
オスカーの探検は、常に自分の恐怖との闘いだから
ある意味派手なアクションやファンタジーよりも
命懸けの感はある。

パパが亡くなった日の、9.11のビルが倒壊する瞬間の
映像も、母親がビルから見ている様子で描かれている。
あの映像は、ただでさえ見ると いたたまれないのに
映画で出てきた時のショックさは言葉に出来ない。

オスカーは、パパからの最後の電話に
出られなかったことを 自分に責めている。

テロや戦争と言ったものを経験した子供は
急に気が短くなったり、急に失禁したりするような
深刻なトラウマを抱えているケースが多いようで
オスカーは、パパが居る時から、精神的に不安定ではあったが
恐怖が心を蝕んでしまうことは あって 当たり前のことだ。
彼の抱える不安の病名などに意味は無い。

その後遺症が どれほど深刻なものなのか。
確かに ビン・ラディンは死んだけれど、
9.11から十年が経ってからの映画だけど
それだからと言って 傷が癒えるのではない。
それでも、本人は前に進むもうと力を振り絞る。

オスカー以外にも、現実にこうした恐怖と闘う人達は
子供だけでなく沢山居ることだろう。
戦争やテロの後遺症に悩むのは市民だけでなく兵士だって。
そのようなものがもたらす恐怖は
何年経とうと 容易に癒えてくれはしないのだろう。

オスカーの母が、最後に驚くようなことを暴露するが
それがまた感動した。いつも泣いていて、頼りなさそうな
感じに見えるが、それはオスカー視点から、だから、かも。

それに、ラストも良かった。パパのメッセージ。

前へ一歩を踏み出したオスカー。
この先だって不安になる事や情緒が安定しないことはあるだろうけど
確実に彼は前に進んでいて、その精神的な成長は
今後のオスカーを決定的に助けてくれると思う。

2011年 アメリカ
監督 スティーヴン・ダルドリー
出演 トム・ハンクス サンドラ・ブロック トーマス・ホーン

 


†NAVY SEALS†

2013年03月05日 | ■MOVIE

『ACT OF VALOR』 ※ネタバレ

予告編を見て、絶対見たいなーと思ってた映画。
ネイビーシールズと言う軍のエリート部隊が主役。
国VS国の戦争物ではなく、テロとの戦いに命を懸ける物語。
何せ相手は麻薬や武器で資金に潤っている犯罪組織だし
精鋭をそろえているかもしれないし、
特殊な武器だって持っているかもしれない。
超一流の兵士とは言え、危険に変わりは無い。

変わりはないけれど、凄すぎる。

無敵に強い主人公が、一人でさくさく鮮やかに
敵をぶっ倒すような強さは痛快だけども映画だ。
こちらは映画でありながら、彼らは本当に存在するのだから。

映画のストーリーはフィクションでありながら
出てくる武器や潜水艦などは本物で、
まさか、キャストまで 本物の隊員である。
すっかり俳優だと思っていた。

前に、ビン・ラディンが発見されるまでを描いた
ドキュメンタリーを見た。そこで、パキスタンにある邸に
潜入していくネイビーシールズの様子は まるで
映画みたいだった。なっても おかしくないだろうなって
思うようなドキュメントで、ちゃっかりオバマ大統領まで
出てきたりする。
その、ドキュメントの中で、ネイビーシールズは本当に
凄い兵隊たちだと紹介されていたのだけど。

この映画を見るともう はっきりと分かる。
凄いなんてものではなかった。
なんと頼もしいことだろうか。

ストーリーは、隊員のプライベート等を盛り込んであり
オンとオフの、彼らの表情や緊張感や優しさや
色々な物に、どんどん引き込まれる。

隊員の凄さもだが、本当に素晴らしい映画だった。
そう思ったひとつがラスト。
作戦中に亡くなった隊員の残した手紙には
「人生を愛し、満たすべくつとめ、自らの周りを彩れ。
相手の宗教を貶めるな」、と言ったような事が書かれていた。
その手紙の中身が本当に胸に響く。

更に、作戦中。敵が投げた手榴弾がコロコロコロと
転がってきた時、最初に見つけた隊員が大声で叫んだかと思うと
自らその手榴弾の上に飛び込んで、
自分が盾になって周りの仲間を守った。
何の迷いも無く。
これはもう、忘れられない。
この映画の中で一番、特別凄いものを見たような感じだった。
こうした一人が犠牲になって、と言う瞬間は、これまでも
他の映画で見た事が無いわけじゃないが、
この映画で見ると、特別。

好きなシーンは沢山ある。
でも特にと言ったら、最初の方に、拉致されたエージェント(CIA職員)
の女性を救出しに向かう作戦で。
救出し いざ現場から脱出地点へ向かう中、
犯罪組織の車が続々追って来る。
やがて道は終わり川へと。敵の方が、追い詰めた、と思った瞬間、
そこへ現れた味方の隊員達が乗ったボートが登場し
敵に向かって撃ちまくる。むちゃくちゃいい。

それに、撃ち殺した相手が水に落ちないよう、
すっと水面から現れた手が、死んだ敵を支える場面も
また凄い。
こちら
公式サイトの予告でも見られる。

この映画、はじめから最後まで 凄いとしか最早
言いようが無い。

映画の中では正義と悪がハッキリとしていて
犯罪者が犯罪者になっている由縁などについては
ほぼスルー。この正義 対 悪の戦いを見ていると
正義の強いことの 何と頼もしく有難いことだろう。
こんな人達がいるおかげで、おそらく未遂で
終わった様な事件が沢山あるんだろう。
凄く大勢の人達を助けているんだろうな。

彼らは愛する人を守ろうと思っているし、
愛する国を守ろうと思っている。
それに比べて、誰でも彼でも巻き込んで、自分勝手に
自爆するテロリストの大儀の無さ。
勝てるわけがない。

この映画は本当に観て良かった。
むちゃくちゃ良かった。


2012年 アメリカ
監督 スコット・ウォー  マイク・マウス・マッコイ
出演 ロセリン・サンチェス他


†スラムドッグ ミリオネア†

2013年03月05日 | ■MOVIE

『Slumdog Millionaire』 ※ネタバレ


前回96時間の怖かったところの話でも
ちらと出てきたインドが舞台の映画。

インドの悲惨な一面についても
前、本で読んだ事があったので
いかにも優しそうな大人たちが現れて
主人公にコーラを差し出すのを見た時は
「ああこの子供達 連れて行かれて
目を潰される」と口にしてしまった。
その通りの運びとなった。
もっとも主人公たちは逃げおおせたけど。

インドでは、物乞いの数が多いらしく
普通にしていては いっこうに稼げないので
より悲惨な姿で物乞いをすることで
何とか稼ごうとすると、見るからにショックを与える姿に
なるしかないと言うことのよう。
けれど、自分で目を潰そうなんて思うはずは無い。
社会の底辺に生きる彼らを、利用して稼ごうとする連中が
そんな事をやるそうだ。目が見えなくなったら、
一人で生活も出来ないのだから、その連中らの
言いなりになるしかない。頼るのはそこしかないからだ。
彼らが物乞いした金を搾取する側である連中も、もともとは
孤児だったりと言うこともあるらしい。
だから、現在 搾取されている側の子供も、年がいけば
その連中たちと同じ事をする事もあるようだとか。

映画は クイズ ミリオネア、のインドバージョン。
クイズに挑戦する主人公ジャマールは、孤児としていろいろな
経験をしてきた。たまたまクイズ番組に出た彼は、
まるで運が味方するかのように、答えが分かる。
クイズが順調に進む中、怪しまれたジャマールは
警察に尋問される羽目に。
どう考えても お前なんかにクイズの答えが
分かるはずないだろう、と言う扱いだ。

何故 自分が答えを知っているのか、それは
自分の経験してきたことに深く関わっているからだ。
ジャマールは、その経験を、その答え毎に警察へ語る。

突然 自分たちの住んでいた村のような場所を
急襲されて 母親を殺されたジャマールは
兄とともに逃亡し、偶然出会ったラティカと三人で
過ごすようになる。この時からジャマールはラティカの虜で
結局、兄とも彼女ともバラバラになってしまっている今
クイズに答えている瞬間も、彼女のことを思っている。

ゴミ山の近くに居たときに、優しそうな大人たちが現れて
ジャマール達を連れて行く。ご飯を出してやったり
唄を教えてやったり、親切な大人たちに触れた子供らは
連中を聖者のようだと思っている。
それが最初に言ったような連中で、一人づつ呼び出しては
気絶させて目を潰していく。
ジャマール達は何とかギリギリで脱出成功するも、
ラティカだけは逃げ延びれなかった。

この映画は、ラストは、孤児で苦労してきたジャマールが
結局、警察からも解放され、見事にクイズで最後まで勝ち抜き
大金を手にする。その頃で、兄は、これまで弟に酷い仕打ちを
やってきた事等もあったからか、自分の命を犠牲にして
ラティカを弟のもとへ向かわせる。
ジャマールは、ラティカと再会。良かったね。と言う感じの話。

いやに すっきりとしない。
このジャマールが、まるで夢のようにクイズで賞金を手にし
大切な人とも再会して、とても良いお話なのだが。
そのような強運に預かれずに、彼がこうしてクイズをやっている間も
現実にはとても多くの、過酷以上を強いられた人たちが
犠牲になっているに違いないからだ。

ジャマールは良かったけど、現実の孤児たちは?
また一人、目を潰されたりしているのではないのだろうかと
嫌な緊張や不安感が後々までずっとする。
それはジャマール一人が幸せになったからと言って
ほっとできるものではない。

映画の中で、ジャマールは母親が殺された時
必死になって警察に助けてもらおうと駆けて行くけれど
彼らは 深刻な様子の子供たちが走ってきても
あっちへ行けと言わんばかりだった。

こんな奴が現実にそこにいるのだろうと、思わせるような
おかしな事件が この国からよく聞かれる。

産業が中心になっていく町では森林破壊は勿論で
政府が開発に力を注ぐ中で、住民らが強制的に
撤去させられたりしたとか。
前回言ったような異常なレイプ事件だとか。
中国の環境汚染の問題が深刻だけども、インドは
中国より更に大気汚染が酷いとか。
毛沢東主義の反政府勢力がいるとか。
それに加えて、この映画の所々で出てくる変なところ。

もっとあるに違いないけど、
ともかく、不思議としか言いようがない・・・
この国の政府はいったい何をやっているのだろう?
まったく意味が分からない。
異常なことが多すぎる。
何か少しでも改善されつつあるんだろうか???

個人的には非常に憂鬱になる映画だった。

2008年 イギリス
監督 ダニー・ボイル
出演 デーヴ・バテル他


†96時間/怖かったところ†

2013年03月05日 | ■MOVIE

「96時間」を見て怖かった点についても。
※ネタバレ

映画のなかでキムは売られてしまい
処女だからと傷一つ付けられずに助かってはいたが。
別にあれはキムだから起きたのではない、と言う
実はとても怖い事件でもあるだろう。

今回の映画に出てきたのはアルバニアの組織で、
それを伝えるパパの仲間も絶望的になっていたが、
観ている こちらもまた絶望的になってしまった。

ぼこぼこにされているだろうし、麻薬打たれてるだろうし
有得ない肉体労働に就かされて
病気にだってなっているかもしれない。
しかも、出来る限り、気持ちを挫く為に、売られた子達は
自分の国から とても遠い国へ連れて行かれると本で見た事がある。
遠くなればなるほど、国に帰る希望が失われるからだって。

また、旅行先で、何かの伝手から、街案内しよう
なんて言ってくれる女の人の誘いに
乗ったが最後、と言う事もあるらしい。
女性なら、相手も油断するし安心するだろうと、
女の人を使ったりする事もあるって。
密輸するのにだって、物はなかなか苦労する部分もある。
でも人間なら、脅されて何も言えなくなっていたりしたら
ある意味、物より簡単に国境だって越えてしまえる。
そう言うルートがあるというわけだろう。

映画の場合、男がナンパみたいな感じで声をかけたが
女にさえ油断できない世の中、しかも外国で、
あまりに警戒感が無かったとしか言いようが無い。

おまけに、逃げたとしても、その国の警察や国家権力が
腐っていたら、助かりそうも無い。

もちろんのこと何もヨーロッパだけに言える事では無い。

フェイスブックのような実名ありきのSNSが、
人身売買に悪用されたりしているとかも聞いたことが。

最早世の中が繋がっていて
何もかもグローバルだから、犯罪もまた同じのよう。
だから何処に居たって、あまりに危機感がゼロだと
どんな事になるかは分かったものではない。

見知らぬ男の車に乗って痛い目に遭うと言う話なら
何も海外でなくとも 身近に聞く話だし
人身売買に限らず、
男性に比べて力が弱い女性と言うのは
いつだって 悲惨な状況になると 真っ先に犠牲に
なっているケースが多い。

言っても仕方ないが、どうして女性は男性より力が弱いのか。
映画ハードキャンディの赤頭巾ちゃんが沢山集まった
ような世にも恐ろしい女の組織・・・
つまり女を標的にした犯罪者を狩りに行く女の死神たちだ、
そう言う物が 生まれてこなければ良いけどな(笑)。

最近インドでは、いよいよレイプ事件で、
犯人を去勢しろと言う騒ぎになっていた。
犯罪者の人権があるなら、犠牲になった人の人権は?
性犯罪の再犯率はとても高いのだって言うし。
騒ぎがあったにも関わらず、まだ十代にも満たない少女たちが
次々犠牲になってしまっている。
去勢?いや、したらいいではないですか。
公開してもいい。
ゆっくりと、麻酔無しでやってもらいたい。
残念ながら?そんなことにはならないだろうけども。

映画の中で、キムの友達は、声をかけてきた男が
まさか死神だったとは思いもしなかったのだろうが
簡単にパーティーの誘いに乗り、どの部屋に滞在しているかを
教えてやり、おまけに「あたし彼と寝る」とまで言っていた。
この恐ろしさと言ったら。


†96時間†

2013年03月05日 | ■MOVIE

『TAKEN』 ※ネタバレ

(※この度より邦題をタイトルに、記事に原題を書く形にします)

今回はリーアム・ニーソンが良き強きパパとなって登場。
ドキドキするようなアクション映画になっていて
パパのブライアンの大活躍が、かっこいい。
やっぱり職人仕事の出来る強い男って(前回に続き)
本当に 素晴らしすぎている!!(笑)

ブライアンはパパと言っても離婚している。
今は別の父と暮らす娘のいる街に住み、
そのためにか仕事も引退した。
元はスパイとして働いていて、現在も独り身の彼のもとに
元同僚の仲間が訪れては、一緒に酒を飲んだり。
同僚に誘われた仕事先では、有名な歌手のコンサートの護衛を
勤めて、スチャッと危険を回避。

映画を全体通して、パパの娘への愛情がふんだんに詰まってる。
必ず毎年娘の誕生日には駆けつけて
写真を撮ったそれを アルバムにしている。
現役の頃も、アラブでの仕事を放り出して娘の誕生日に
駆けつけたと言うエピソードがあるくらいだから凄い。

さて そんな可愛い娘に17歳の誕生日がやってきた。
歌手になりたい夢を持つ娘に、家庭用カラオケ機をプレゼント。
それを手渡した直後、新しい娘のパパが、なんとまあ。
馬を一頭プレゼントしたりして。そりゃ娘も興奮しきって
カラオケ機を置いたまま飛んでいってしまう。
自宅に帰ってきたパパは、新しい娘の写真をアルバムへ
しまいながら、優しい目をしている。

馬は確かに凄すぎるプレゼントだなぁ。
でも、いつも娘を思っているパパがアルバムを見ている
シーンから伝わる 思いと言うのは 馬よりずっと良いのだ。

前に歌手を危機から救った時も、娘が歌手になりたいのだが
何か助言をと言い出す始末だし(笑)。
で、命を救ってくれたお礼にと、歌手が娘さんを
マネージャーやレッスンしてくれる先生に紹介してあげると
言って名刺をゲット。

ところが娘にそのニュースを伝えたかったのだが、
彼女が友達とパリへ旅行へ行きたいと言う話で
親子喧嘩になってしまう。
パパとしては 「まだ」17歳の娘に パリへの旅行なんか?
危険すぎるからダメって感じ。
確かに この年頃の娘は、友達と外国へ旅行へいけるなんて
夢中になってしまう出来事だと思う。
パパの心配ぶりは、かなり堪えてしまうわけだ。
結局 パリ行きを条件付で許可することに。

到着した時と、毎晩必ずパパに電話をすることが条件だ。

飛び跳ねて友達と飛行機で旅立つ娘。
見送るパパ。
しかし、娘はパリで いきなり事件に巻き込まれてしまい・・・・・・。

さあ、パパの大事な娘はどうなってしまうだろう。

まずもって、この、娘キムと共に旅行へ出かけた女の子が
とにかく危機感ゼロ。確かに旅行は楽しいし、はしゃいで
しまうものかも。
でも半分自業自得と言っても おかしくない。
パリに着いた、空港から出て、タクシー順番待ちしてる中、
そこにいた男に声をかけられ、やすやすと彼にホテルまで
送ってもらう事を許す。滞在先を相手に知られる(と言うより
最早教えている)し、今夜パーティーがあるからおいでと誘う男に
簡単にYESと言う。そんなノリだったら、商売人もラクと言う話だ。
これについては 次回にでも掘り下げておこう。

男が妙な空気するから、これは事件に違いないと
見ている人はわかってしまう展開だ。
色々ありそうだが、咄嗟に思ったのは、金目当ての誘拐か、
もしくは人身売買だろうなと。
旅行者を狙ってる感じするし「この子達売られてしまうわ」と
言ったが、本当に売られてしまった。

パパは娘が到着しているはずなのに電話がないことを
不審に思い、携帯に何度もかける。
やっと電話に出るキム。そこで事件発生。
電話口から パパが、「今から言う事をよく聞くんだ」と
冷静に指示する。「お前は おそらく連れ去られる。
何でもいいから相手の特徴を電話に向かって伝えろ」
案の定、娘は隠れていたベッドから引きずり出されてさらわれる。
男達の特徴を叫びながら。

こうした展開はいやにハラハラするけど、もうパパの冷静さが
なんと頼もしいことか。さらわれていく娘の叫び声がショックを煽る。
だけど、あたしは、ここでの冷静なパパの仕事っぷり
(電話口から指示する) が たまらなく好きだ。

パパの追い詰め方が気持ち良いし、
悪党に情けはかけないところが また良い。
娘は処女と言うのもあって、すぐに売春宿へ行かされず
もっと怪しい人間に売られそうになっている。
パパの仲間が言うには、連れ戻すとしたら96時間の猶予しかない。
その上、パリで協力してくれそうな友達は、現在管理職に
なっているから等と言い出す始末。
この時点で、この管理職男からも十分匂う(笑)。
おそらく金で繋がってるんだろうと 予測させる。

だからと言って、パパにしたら 関係ない。
管理職男の目の前で、その妻の腕を銃で撃ち、
管理職男に黒幕を調べさせたり。
こうした容赦無いパパの行動が本当に気持ちよすぎる。
ちゃっかりと、妻の「傷は浅くない」と言う配慮も良い。

とにかく時間が無いのだし、無駄な事をやる暇も無いのだ。
だって娘を助けなきゃ!

娘は処女で本当に良かった。
あるパーティーの行われている場所の地下に 
暗闇で顔が見えないよう設置された
幾つものブースが、ステージを囲んでいる。
そのステージに登場する売られた子達の怯えた様子。
ただ売春宿と違って、もっともっと不気味な世界。
買うのは それなりの金持ちだろうからだ。
暗く静かな地下からは不気味と死の匂いがする。
こう言う変態共が大金払って、一体何をするんだろうか?
ただ寝るだけとは 思えない感じがして それが怖い。

処女と言うことで傷一つ無い商品となった娘を
もちろん、パパは助け出す。
おそらく助けるであろう強さなのだが、
最後までハラハラさせられる。

もう頼もしすぎるパパ。ラストもまた良い。
それにリーアム・ニーソンが やたらにカッコいいし。
元にしろ現役にしろ やっぱり工作員が活躍する話って好きだ。
冷静で 先を読んでいて 容赦の無いあの強さといったら。
時々展開が見えてしまう?気もするが(笑)
いっこうに構わない。観て良かった。また観そう。

2009年 フランス/アメリカ
監督 ピエール・モレル
出演 リーアム・ニーソン他


†The Bourne Legacy†

2013年03月04日 | ■MOVIE

「The Bourne Legacy」※ネタバレ

やっぱり職人は こうでなくてはならないだろう。
殆どと言っていいほど、今回の主役アーロンの動きには
無駄が無い。
さすがは暗殺者。その名に恥じない活躍ぶりで
最早 笑ってしまうほど凄い。

ボーン・シリーズのサイドストーリーである
この作品。ボーンが同じ時に別の場所で行動を起こしていて
それによる混乱等も同時進行でちらりちらりと登場する。
一度も画面にボーンが現れる事はないのに、
いる、と言う臨場感がある。

主役アーロンは、確かに気持ちよすぎるくらいの
手際良さで敵を圧倒するけど
ボーンとは また違った個性があって親しみやすい。
あまり感情を表に出す事の無いボーンより
アーロンは感情表現が豊か。
悲しそうだったり 寂しそうだったり 微笑んだり。
戦っているときも、ボーンは アーロンに比べると
無表情のようだ。アーロンは険しい顔つきになっている。
だから人間臭い感じがする。

しかも演じているのが『ハートロッカー』で主役を演じた
ジェレミー・レナーと言う男優。むっちゃいい。
『SWAT』では悪者っぷりもハマっていた。

人間臭いという部分で言うと、確かに凄腕なアーロンだけど
時々弱る。で、女の方が有得ない活躍をして見せたりする事も。
それがまたスカッともする。

ストーリーは、ボーンのお話と繋がっているので、
そちらを見てからのほうが楽しいとは思う。
泣くほど簡潔に言うと。
これまで働いてきた機関から急に命を狙われるアーロンは、
勿論(笑)生き延びて同時にまた 命を狙われている博士の女性を 
危機から救出し二人で逃亡していく展開。

残念な事を挙げておくと、だいたい、この二人は生き延びる
だろうって言うのが 途中で分かる感じ。

国家権力を盾にしてアーロン達を追い詰めようと必死な側よりも
大抵アーロンの方が一歩先にいる。

アーロン達暗殺者に、なにやら遺伝子に厄介な手をくわえたりしてる
科学者達。一緒に逃亡する女性マルタ博士が、アーロンの
服用している薬は服用中止となり、薬無しで生きられるウィルスが
出来ているなんて説明するのを聞いていると、
不気味さを感じる。普通にそんな話をしているのだから。
頭のおかしい科学者が何をしでかすか分からんぞ的な。

でもって、頭のおかしい科学者ってのが出てくるシーンが
いやに怖かった。
ある時マルタは人の神経を操作したりするような仕事に
関わっているとか敵の女に漏らしていたが・・・。
まるで誰かの意志で動かされてるロボットみたいな様子の科学者が、
マルタがいる部屋で急に銃を乱射し始めた。
怯える人達を、次々と撃ち殺していき、最後の一人の息の根を
止めるまで諦める様子は無い。
机の下に隠れて、どうにか身を潜めているマルタは、
ひとりづつ、淡々と殺されていく音を聞く。
動悸が激しくなった彼女の吐く息が 
あのロボットに永遠に止められるのではと言う不安な気持ちがする。
しかもすぐそこに、そいつは居る。

マルタは難を逃れる。次の危機が迫った時にはアーロンが救出し
しかも 最後には良い仕事をする。

アーロンがウィルスを注射し、その後、身体がぶっ倒れた時も、
彼は彼女に逃げろと言って聞かせたまま 意識を失うが
マルタは逃げたりしない。
いたら足手まといなのでは?と言う不安もあった。
だって 暗殺者が凄くても 女性連れになると、足を引っ張られる
可能性は大だもの。その心配は余計だったみたいだ。

警察が、二人の逃亡先の民宿みたいな場所を囲んだ時も、
外にいてそれを見つけた彼女は めいいっぱいの声で
アーロンに逃げてと叫ぶ。彼女の声でアーロンは そこから脱出し
警察に捕まっているマルタを助け出す。

ところどころで、互いに強力しているのが良い。
確かにアーロンのような凄腕では無いし 力も弱いかもしれないが
マルタだって戦うのだ。そしてそれは実際にとても役立っている。

でも この話でも もっとも素敵なのは、やはりアーロンの強さだ。
別格の強さを見せ付ける。その手腕は鮮やか過ぎて凄い。
こうであってこそ手練。これこそ職人。
こうだからボーンのシリーズは大好きだ。

今回更に魅力的だったのはアーロンの個性。
どこか孤独そうで、母性ある人は放っておかれない感じ。
訓練中も ほぼ人と会うことが無かった様子で、
訓練地にいる管理員みたいな男と会った時も やたらに話す。
色んなことを質問したりするし
相手を知ろうとする職業病かも知れない。
でも 人と触れ合う機会を もうずっと欲していたように見える。

過去の記憶の中では、昔孤児院に居た、と本人が言っている。
その時の表情が なんだか 無性に寂しげに見えて
とても胸に迫る。
はじめに小屋を爆撃された後で、墜落させた残骸を発見した時の
表情も、怒りよりも悲しみに歪んでいるよう。

しかも、たまに素直で子供みたいな笑顔を見せたりもするもんだから。

そりゃあもう観ていたら アーロンに不幸が起こることなんか
許せないと言う気持ちに。
しつこくアーロン達を狙い追っかけてくる暗殺者のイラつく事といったら。

最後はハッピーエンド、アーロンが幸せになったので
何もかも良しですっきり。

先に言ったように、話の展開が読めそうな感じもあり
映画の面白味で言えば、ボーン・シリーズの方が満足する人も
多いかもしれない。

でも、あたしはこのアーロンに魅了された一人なので
何の文句もなしに大好きな作品の一つになった。

2012年 アメリカ
監督 トニー・ギルロイ
出演 ジェレミー・レナー  レイチェル・ワイズ  エドワード・ノートン