「組織犯罪処罰法改正案」が衆議院で審議入りした。過去3度国会で廃案となった、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設しようとするものである。安倍晋三政権は、「安倍一強」と呼ばれる高い内閣支持率を背景に、これまで保守派が実現できなかった「特定秘密保護法」(本連載2013.12.6付)「安保法制」(2015.919付)など、いわゆる「首相のやりたい政策」(2015.3.5付)を着々と進めてきた。「組織犯罪処罰法改正案」(以後、「テロ等準備罪新設法案」と呼ぶ)も、この一連の流れの延長線上にあると考えられており、野党の激しい抵抗が予想される。
しかし、本稿は野党が「安保法制」の国会審議時のように、法案の廃案を狙って、国会内で徹底的に法案を批判し、国会外で反対のデモを煽るようなやり方をしても、必ず失敗すると論じる。
安保法制の徹底抗戦戦略の
失敗をまた繰り返すか
この連載では、日本の安全保障政策は、本来反対するはずの「リベラル派」が積極的に関与した際に前進してきたことを論じてきた。例えば、安保法制が立案されて、成立する過程を追った時には、連立与党の一角として公明党が大きな役割を果たした。安保法制の与党事前協議が始まった時、安倍首相と自民党は、自衛隊の活動範囲を際限なく拡大しようという思い入れを前面に出した原案を出してきた。しかし、公明党が自民党の思い入れを一つひとつ論破していくことで、原案はより現実的な法案に練り上がっていったのである(2015.4.16付)。
だが、与党事前協議の後、国会審議では、安保法制を巡って安倍政権と野党が激しく対立した。国政選挙で3連敗して勢力を縮小させた野党は、政権奪取の可能性を現実的に描くことができなくなっていた。野党は、政権に協力する意味を見いだせず、徹底的に反対することで存在感を示そうとした。安保法制を「戦争法案」と決めつけた野党の激しい反対は、国会外に飛び火し、安保法制反対のデモは全国に広がった(2015.7.25付)。
だが、安倍政権は野党と一切妥結せず、ほぼ原案通りの法案を強行採決した。国政選挙に3連勝した自信と、世論調査の動向から、野党に支持が集まっていない上に、国民の関心は安保よりも経済であると判断したのだ(2015.10.27付)。結局、その翌年7月の参院選で、野党は敗北した(2016.7.19付)。筆者は、「テロ等準備罪新設」を巡る与野党攻防も、同じように展開するのではないかと危惧している。
「中略」
国民の関心は経済に集中
五輪まで安部政権は盤石
だが、安倍政権は国政選挙で4連勝して、圧倒的多数派を形成していることを忘れてはならない。国会で野党がどんなに激しく批判を展開し、既に不安視されている金田法相の答弁が更に迷走しようとも、安倍政権は簡単に法案を可決させることができるのだ。
徹底的な「共謀罪反対」のアピールで、安倍政権の支持率を落とし、次の選挙での勝利を狙うのかもしれないが、残念ながらその戦略は安保法制の際に完全に失敗したではないか。2016年7月の参院選で、野党は「改憲勢力に衆参両院で3分の2の議席獲得を許す」という、戦後政治において野党が最低限死守すべきラインすら割ってしまう、最悪の惨敗を喫したのだ。この戦略が成功しないのは明らかである。
実際、「森友学園」の問題が長期化しても、安倍政権の支持率はほとんど低下していない。国民の関心は経済である。安倍政権による日本社会の「右傾化」を嫌だなと思っていても、日本がまた戦争をする国になるというリアリティはない。
安倍首相は、おそらく今年中に解散権を行使することはない。来年秋の自民党総裁選後になるという予測もある。現在、経済は停滞気味だが、東京五輪が次第に近づいてくると、派手派手しく景気対策が打ち出されるだろう。折しも、「将来の増税、歳出削減を国民が予想するので、結果的にデフレになる」「増税や歳出削減を一切予定せず、インフレによる財政赤字返済を前提とした追加財政を行うべき」という荒唐無稽としかいいようがない理論が米国からやってきて、安倍政権が都合よくそれに乗ろうとしている。
もちろん、まじめに財政危機や将来世代の負担の軽減を訴える人はいるだろう(例えば、山田厚史の「世界かわら版」2017.3.30付)。しかし、国を挙げて五輪を盛り上げようという「空気」が広がり、それに水を差す異論を許さなくなっていくはずだ。そんな時に、安倍首相は解散総選挙に打って出る。その結果がどうなるか、言うまでもないだろう。
野党は真に「テロ準備罪」のみに
有効な法律を練り上げるべきだ
要は、「共謀罪反対」と叫び続けて、安倍政権の支持率を短期的にほんの少しだけ傷つけたとしても、政局の大きな流れの中では、ほとんど無意味なのだ。それよりも、この連載がずっと主張し続けてきたように、民進党は共産党との共闘関係を絶つべきだ。共闘は選挙で多少、議席を増やすことにつながるだろうが、日本のマジョリティである中流の人々の信頼を失い、政権交代はむしろ遠のいてしまうのだ(2016.9.17付)。
民進党は安保法制の国会攻防時に、元々対案を準備していたはずなのに、感情的になって与野党協議ができず、共産党とともに廃案を狙った徹底的な反対路線を突き進んだ(2015.6.26付)。しかし、今回の国会審議では、考え方を変えるべきではないだろうか。
繰り返すが、「テロ等準備罪新設法案」を廃案にするのは絶対に無理だ。国際情勢の不安定化で、国民の多くが、テロ対策の必要性を強く認識しているというのが現実だ。今回の勝負は、どうあがこうとも成立してしまう法律を、いかに「歯止め」の効いた、国民が安心できるものにするかであるべきだ。それには、現在277まで減っている処罰対象となる犯罪を、いくつまで減らせるかに集中することである。
「中略」
前述の通り、現在でも、対象の罪のうち「テロに関する罪」の対象は110だけである。まだまだ削れる余地がたくさんある。与党と完全に対決して、無修正で強行採決されるのは、最悪である。与党と協議して、どれだけ削ったかを成果とすべきだ。
要するに、この法案を「共謀罪!共謀罪!」だと叫び続けて、国民の間にレッテルを貼りつけようとするような非生産的なことはやめるのだ。何度でも繰り返すが、大事なのは「テロ対策」に当てはまらない処罰対象を1つ1つ削って行って、共謀罪ではない本当の意味で「対テロ準備罪有」のみに有効に機能する法律に練り上げていくことである。
それは、政権交代の実現には直結しないが、長い目で見れば、「自民党に代わる政権交代可能な政党」としての信頼を少しずつ取り戻す、きっかけとなるはずだ。今、民進党に必要なのは、本当の意味での地道な取り組みと、国民に対する誠実さではないだろうか。
(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)
<time>2017.4.11</time>
「共謀罪」に反対一辺倒なら野党は無残に敗北する
http://diamond.jp/articles/-/124330?page=6
たしかにな、与党は不安定ながらもほぼ完ぺきに議席数を確保できてるからな。成立はほぼ100%免れない。「テロ対策」に当てはまらない処罰対象を少しでも削って、共謀罪ではない本当の意味で「対テロ準備罪有」のみに有効に機能する法律にすれば野党にとって何とかなるかもしれない。だがその考えが野党は持っているのか>?それが不安だ!維新の会ならあるかもしれんが。
ジョギングしてました。雨収まってたので。でも雨やむことないと思ってテレビ見ながらジョギングしてたのであまり長くはしれんかった。右足もだめ^時あったからね。距離3.8㎞、タイム18:50?
おやすあみんさい。