明け方の空に尾を引いた姿を見せてくれている紫金山-アトラス彗星 C/2023 A3がマイナス等級になるかもしれないという予測の話がありました。
明るくなる理由は彗星が太陽と地球の間に入り込むため、彗星が放出した塵が太陽の光を前方散乱することによるとされています。
前方散乱とは粒子に光が当たって光の進行方向に散乱される(いろいろな方向に光が広がる)現象です。
これまでこのブログで紹介してきた中で太陽の光が前方散乱されて起こる現象は幻日、日暈、花粉光環です。
後方散乱は粒子で光の進行方向と逆方向に散乱される現象で、代表的な現象としては虹があります。
調べてみたところ、1年前に天文教育2023年9月号に鈴木文二さんという方がこの話を投稿されていました。
あちこち調べて、日本語のWikipediaにあった紫金山-アトラス彗星 C/2023 A3の項目にこの話が載っていて光度予測のリンクがありました。(今年の9月10日配信)
この光度予測とCOBSに掲載されていた実測データ、予測データをグラフにまとめてみました。
黒丸が報告されている眼視のMethod”M”の等級です。
白丸はCOBSの前方散乱を考慮していない通常の予測値です。
(下記リンク先の表の数値)
青丸がCBET 5445で配信された前方散乱を考慮した予測値です。
CBET 5445の予測値と実測値が合わなくなっているため、単純に2.5等級引いてプロットしたのがオレンジ色の丸です。
(一般的な光度予測式に前方散乱分の明るさを加えているはずなのでこれで良いと思われます。)
鈴木文二さんの解説にあるように前方散乱による明るさの増加は彗星が放出した塵の大きさや量に依存するため、実際にどうなるかは誰にもわかりません。
この先、数日の光度報告がオレンジの丸印に近いか上回れば-4等級以上になる可能性があると思われます。
ただ、マイナス等級になっている期間は太陽に近すぎて簡単には見ることができません。
-4等級になっていれば昼間、望遠鏡を使って見られる可能性があります。
ただし、太陽が近いので一歩間違えると失明する危険性があります。
建物の日陰など、絶対に太陽に望遠鏡が向かないことが保証されているところで見るべきです。
ここ数日に報告される光度変化に注目です。
(太陽に近づいていくため、観測精度が下がるのが気になります)