昨晩、NHKのBSプレミアムで「魔改造の夜」という番組を放送していました。
前の時間帯に「英雄達の選択」という歴史上の人物を取り上げる番組のスペシャル版で徳川家康の話をやっていたのでその流れで見ました。
「魔改造の夜」は以前見たことがありました。
その時は食パンを焼くトースターを改造して食パンをいかに高く飛ばすかという競技をやっていました。
今回は電気ケトルの蒸気を使って綱引きをするというものでした。
参加者はT京アールアンドディー(東京アールアンドディー:自動車の開発を請け負っている会社)、AHI(IHI)、Sニー(ソニー)の3社の技術者たちでした。
社名を少し変えていましたが映像で明らかに会社がわかるようになっていました。
元日の日付が変わった直後にNHKで放送されていたさだまさしさんの番組で「NHKも東京ディズニーランドとか使うようになった」と柔軟になってきたことを紹介していました。
競技内容は電気ケトルを改造し800ccの水を沸かした蒸気で綱引きをするというものです。
蒸気を動力に変える方法として誰もが真っ先に思い浮かぶのが蒸気機関(蒸気機関車で使われている)です。
ピストンを水蒸気の圧力で動かして往復させ、これを回転運動に変換することで車輪を回すことができます。
IHIの技術者たちは蒸気機関を採用しました。
もう一つは火力発電や原子力発電で使用されている蒸気タービンです。
(現在の火力発電ではガスタービンが主流になっていますがその排熱を利用して蒸気タービンを回しエネルギー効率を高めたコンバインドサイクル発電に変わってきているので蒸気タービンも使っています。)
原子力発電の場合は核分裂で発生した熱でお湯を沸かし、その水蒸気で蒸気タービンを回して発電しています。
(日本では普通の圧力でお湯を沸かす沸騰水型軽水炉と高圧にして沸騰温度を高くする加圧水型軽水炉が使われています。:学生時代に勉強しました。)
東京アールアンドディーの技術者たちは蒸気タービンと同じ原理のエアドリルを採用しました。
普通の技術者なら蒸気機関と蒸気タービンを思いつくのですが、ソニーの技術者たちは違いました。
密閉した大きなシリンダーの中に水蒸気を徐々に充満させて急冷させることによって一気に体積を減らしてピストンを動かすというものでした。
車輪を回して本体が移動するのではなく綱を1回引っ張るだけというのも斬新でした。
(正確には同じやり方で本体の上部も移動させていましたので2回引っ張っていました。)
東京アールアンドディーやIHIは動力に関連する開発や設計を行っているので同じ技術を使っても勝ち目がないから別の方式を考えたとソニーの技術者が言っていました。
素晴らしい考え方だと思います。
原理説明でペットボトルに水蒸気を充満させて蓋をした後に冷えてゆくと水蒸気が水になるときに体積が減りペットボトルがつぶれて行く映像を見せていました。
以前、子供向けの番組で見たことがありました。
おそらくソニーの技術者の中に同様の番組を見たことがある人がいたのでしょう。
私は番組を見たことがあったのに思いつきませんでした。
さらに冷たい水を注入して一気に冷却するというアイディアは思いもしなかったので脱帽です。
結局、ソニーがIHI、東京アールアンドディーに勝って優勝となりました。
IHI、東京アールアンドディーが製作した装置がうまく動かなかったので問題にはならないのですが、ソニーの装置には車輪がなかったのでIHI、東京アールアンドディーの装置が動いていたとしたら摩擦の大きいソニーが有利になるのでルール的には少し疑問を感じました。
逆の見方をすればルールを決めた人たちに「車輪を使って移動するもの」という先入観があったため「車輪を使う」というルールが抜けていたのだと思います。
相手がソニーの装置を引っ張るところまで移動できなかったので車輪がついていても同じ結果になりました。
ソニーの技術者たちは常識にとらわれない発想ができる環境にあるのだと感じました。
技術者はどれだけ多くの雑学的な知識を持っているかと、その雑学的知識を引っ張り出していかに柔軟な発想ができるかでその人の能力が決まると思います。
もう一つ大事なのはすぐにあきらめないことですね。
私も先入観を捨てていろんな角度で考えるよう心掛けたいと思います。
まだまだ若い人には負けられません。