櫻井郁也ダンスブログ Dance and Art by Sakurai Ikuya/CROSS SECTION

◉新作ダンス公演2024年7/13〜14 ◉コンテンポラリーダンス、舞踏、オイリュトミー

ロバート・ウィルソン×アルヴォ・ペルト『Adam's passion』

2015-09-30 | アート・音楽・その他
泣きに泣いた。

演出家ロバート・ウィルソンと作曲家アルヴォ・ペルト、両氏が組んだ『Adam's passion』の初演をテレビでやっていた。

深夜の仕事帰り。油断して物食いながら最初を観てしまい悔やんだ、僅か数秒だが、何かを逃した筈。

しかしそのあと約2時間、垣間見てしまったという他ない光景と音と踊りがモニターから溢れて、酔った。

濛濛たる煙のなかに立つ人影を暖かなコーラスが包み、それは始まる。人影はアダム、最初の人。そのシルエットが霧に彷徨う。

彷徨うゆえ、歌い踊る、人。その影。

ミゼレーレと言うのかしら、深い嘆きの歌の海に包まれながら、男・女・大人・子ども、さまざまな人が様々な行為を、ゆっくりと確かめるように積み重ねてゆく。見つめながら、聴き入りながら、私の内部で、日々積み重なる背中の重さや胸の詰まりが、ほどけてゆく。

衝撃と安心が渾然一体したような感覚。グレゴリオ聖歌を初めて聴いた時の感じに似ていたかもしれない。

北からの、風。

欧州の人ならではの感性が紡ぐ世界。しかし、そこから溢れるエネルギーそれが、あまりにも確かに胸を打つのだった。

放送が終わったとき、すでに夜明け。曇り空が染まる色が、血の色に錯覚された。作品の残響のせいかしら。

音楽と踊りは人の境目を超えるという。しかしそれが確かだと思える体験は、滅多にない。それが、、、。

凄いものが、ある、生まれる。


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