櫻井郁也ダンスブログ Dance and Art by Sakurai Ikuya/CROSS SECTION

◉新作ダンス公演2024年7/13〜14 ◉コンテンポラリーダンス、舞踏、オイリュトミー

身を委ねる

2015-05-02 | レッスン・WSノート
クラスで踊りを見せていただいていると、いい顔で踊っているなと、素直に感動することがあり、今日5月2日の土曜日はそうだった。

午後1のレギュラークラスではヘンデルのト短調のメヌエットに合わせてつくったシンプルな振付を踊った。3拍子のステップ、全身の流動、そして軽やかな旋回。この三つを組み合わせて大地と大気に身体で親しんでゆく。漠然と大きく動くのでなく、各自の身体に相応しい確かな動作を見つけてもらいながら、丁寧にリズムや曲想を味わう。そんな練習を繰り返すうち現れた表情は、真摯に懸命に身体に向かいながらもどこか客観性をたたえた、オーケストラの楽器奏者にも似た表情、静かな熱をたたえた優美な大人の表情だった。

3時からの基礎クラスでも、いい表情がとてもきれいだった。

今シーズンは柔軟性をメインに全身にエネルギーの流れを注ぐ稽古を行う。呼吸と動作の結びつけを豊かにする。

無理ない開脚の誘導から、体幹部を和らげる稽古へ、さらに胸から背面をたっぷり使い、やがて腕や脚に、さらに空間にエネルギーを伝えてゆく。また、フォールアンドリカヴァリーの初歩を用いて身体のしなやかさを促してゆく。2時間のゆっくりした練習のなかで出てきた動きは、青竹がしなるような雰囲気があり、伴う表情はとても自然な開放感があった。音楽はかけないで、軽いグラップだけ。あとは自分の呼吸に耳を傾けてゆく。呼吸がメロディ、鼓動がリズム。稽古場は静かだけど、メンバーの動きがうまく出たときは音楽に見えた。身体の歌に聴こえた。

ダンスは身体を敏感にする。動きながら、大気や大地に触れるとき、身体は感情の波を静かに呼び起こし始める。それを感じた瞬間の表情からは無理がない柔らかさが宿る。踊る楽しみに触れた瞬間の表情なのかもしれない。静かな母の眼になっている。

踊りは何かに身を委ねるときに始まるのではと思う。身を委ねるときは変化の始まりなのでは、とも思う。

大地に、大気に、空間の広がりに、時の流れに、身と心を委ねる体験。

そんな体験が身体に染み込んでゆくとき、ダンスの天使は少しずつ近づいて来る気がする。


クラス参加案内
稽古場=杉並・荻窪駅からバス10分圏(善福寺公園教室、西荻ほびっと村教室ほか)くわしくは、お問い合わせ時にご案内。
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